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カンショー!  作者: 安城要
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(番外編)過ちを犯す動物 其の3

そういえば、と賢人がお思い出したように言い、今日は二人だけだった美術準備室ぶしつで七海はオルセーの美術本から賢人を向いた。

「どうしました?」

実はと賢人は頷いた。

「パソコンを買い替えたんですよ」

なんでそんな報告を?

へえ、と早くも撤退気味に七海はあいまいに頷いた。

「賢人さんのをですか?何年くらい使っていたんですか?」

いえいえ、と賢人が手を振る。

「ほら、以前にお話ししたことがある、ネットで小説のようなものを書いている知り合いがです」

何故突然友人語り?

「彼はお金がないので、Windows7を無理やりWindows8にバージョンアップしたパソコンを使い古した人からもらった人から更にもらって使っていたのですが」

つまりスリーオーナー目ということですな?

「そのパソコンは気温が高くなると画面表示が目まぐるしく拡大したり縮小したりする故障があった上に、漢字変換は数秒待ち、いくつかのキーはすりきれて何のキーかわからない上に、電源を入れても2回か3回に1回しか起動しなくなっていたらしいのです」

沙織さんに言わせれば、コンピューターの大反乱じゃねえか、それ?

「それがついに起動しなくなり、彼は大急ぎでなけなしの金をかき集めて中古のパソコンを買いに行き、訳ありジャンク品のコーナーで一万円ちょっとで新しいパソコンを買ってきたのです」

「それって、大丈夫なんですか?」

はい、と賢人は頷いた。

「割れとか、画面傷多しとか、キーがとれそうとか、キー押しても押した感がない、とか小さな字でびっしりと問題点が書いてあったらしいのですが、それらをすべて見て、どれも今よりまし、として購入を即決したらしいのです」

「パチモン掴まされたんじゃないですか?」

いいえ、と賢人は重々しく首を振った。

「使ってみたら今までの100倍スゲェ、って喜んでいました」

「今まで使っていたの、パソコンに見える“何か違うもの”、だったんじゃないですかね、それ」

ただ、と賢人は首を振った。

「今まで書き溜めた小説“のようなもの”が古いパソコンに入ったままで、それが取り出せないらしいのです。週末を利用して“起動ガチャ”を繰り返しているらしいのですが、19回目でも「しばらくお待ちください」が出てぐるぐるが回っているだけらしいのです」

「いっそのことこれを機会に絶筆したらどうですか、って私が言っていたと伝えてください」

伝えておきましょう、って、本気にしないでよ、ただの皮肉なのに。

「という訳で、今週は投稿できないと残念がっていましたよ」

それだけ言って先程まで見ていたタブレットに視線を戻した賢人は、その画面を見つめながら、そうそう、と再び思い出したように言った。

「チイちゃんて、いつもチイちゃんて呼んでるせいで、名前の漢字が早希か早紀わからなくなって時々間違えることがありますよね。まあ、どうでもいいですけど」

待ていっ!!と言いながら七海は机を叩いて立ち上がった。

「何さらっと流そうとしてんだ?そこは、申し訳ありませんでした、お詫びの上順次訂正させていただきます、だろっ?」

は?と言いながら、賢人は不思議そうに七海を見た。

「誰が、誰に対してお詫びして、何を訂正するのですか?」

「貴様の知り合いのその糞っ垂れでしみったれたパチモン買い、が、皆様にだ!」

は?と再び言った賢人は首を傾ける。

「なんで彼がチイちゃんことを?それに、彼は間違っていても訂正しない主義ですよ?」

「いい加減、そのトボケと開き直り何とかしろよ!」



この度は誠に申し訳ありませんでした。お詫びの上、順次訂正させていただきます。





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