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カンショー!  作者: 安城要
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(番外編)画商

「イギリス人に売る時は『紳士はこの絵を買うものだ』と言う」

「アメリカ人に売る時は『この絵を買えばあなたはヒーローです』と言う」

何やってるんですか、と美術準備室に現れた途端七海と早紀を見ながら半眼になった賢人に、二人は、うい~す、ちぃ~す、と軽い挨拶をした。

「いや、もし私らが画商だったら、生前のゴッホの絵を世界各国の人にどのように売り込むかな、とか話してたんですよ。例えばドイツ人に売る時は『この絵を買うのがルールです』と言う、とか」

「イタリア人に売る時は『この絵を買えば女にモテますよ』とか」

「絵の売り方っていうよりもエスニックジョークですね」

ため息をつきながら言った賢人に、えっ、エスニック?と顔を見合わせ後、二人は驚いたように彼を見た。

「そんな辛口のジョークでしたか?」

「わかって言ってますよね、それ?」

ともかく、と二人は再び頷き合った。

「やりだすとこれが面白くって」

例えば、とその顔が再び賢人を向く。

「ロシア人に売る時には『この絵を買えばウォッカがおまけについてきます』とか」

「ユダヤ人に売る時には『この絵を買っておけば後で高く売れますよ』とか」

「日本人に売る時には『みんな買ってるんですからあなたも買いなさいよ』とか」

「ギリシア人に売る時には『この絵を買ってはいけません』とか」

「北朝鮮人に売る時には『この絵を買えば、漏れなく食糧配給券の300連無料ガチャがついてきます』とか」

なんかだんだん怪しくなってきましたね、と賢人が嘆息する。

「中国人に売る時には『この絵を買いなさいって習さんが演説で言ってましたよ』と言う」

「ロシア人に売る時には『プーさんがこの絵を買いなさいってテレビで言ってましたよ』と言う」

え?と七海が早紀を見た。

「なんでロシア人なんだよ。プーさんは習さんだろ?」

「プーチンさんはロシアだろ?」

プーさん言うなよ、熊さんだと思ったわ、と七海が口を尖らせる。

「ブラジル人に売る時には『この絵を部屋に飾っておけば次のワールドカップ、ブラジルの優勝間違いなしです』と言う」

「メキシコ人に売る時は『この絵を買えば、上手くアメリカに密入国できますよ』と言う」

「イエメン人に売る時には『この絵を買ってよ、と絵を掲げて叫びながら近づけば、怪しまれずにタンカーに近づけますよ』と言う」

「犯罪ほう助は感心しませんね」

嘆息した後、賢人は二人を順に見た。

「では、ぼくも一つやらせていただきましょう」

「よっ、いいぞっ、賢人さん」

「いや、ノリいいっすね、今日は」

この絵を、と賢人は無表情になると言った。

「この絵を、サキちゃんとチイちゃんに売る時には」

は?

「『この絵を買わないと、アンリちゃんの絵を無理やり売りつけますよ』と言う」

うっと唸った二人は同時に見上げるような目で賢人を見た。

「ゴッホ画伯の絵の方を買わせていただきます」

「でしょうね」






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