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英雄団……と田中さん  作者: ドル チイダ
勇者一行との出会い
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タンジョウの街 (6)

 悪びれもなくそっぽを向くブシドウに、リオンは今にも殴りかかりそうな勢いで怒鳴りつける。思わず仲裁(ちゅうさい)に入るキョウカンが間に入り、強引に彼らを腕で引き離す。


 困ったものだな、と声を漏らす冒険者達は、巻き込まれないように二人から距離を取っていた。その中で、人混みから現れた一人の女性がブシドウの元へと真っ直ぐ歩いていく。


「ここに居ましたか、ブシドウ」


 目鼻立ちの整った顔で柔らかい笑顔を見せる女性、ゴカゴはその声に(わず)かな怒気を帯びらせている。弾けるように顔を向けたブシドウは、幽霊でも見たかのような反応で仰天する。


「げぇ! ゴカゴ、何で此処に」

(わたくし)を置いていくなんて、酷すぎます。嗚呼、神の御加護……あ、私の事では無いですわ。それが無ければ今頃、貴方には恐ろしい天罰が下っていたでしょう」

「……相変わらず人前では偉ぶった喋り方するよな、お前」


 仰々(ぎょうぎょう)しい修道服に身を包んだ彼女は、タンジョウの街唯一の教会を代々運営している聖職者である。白の魔力によって傷を(いや)(すべ)を持ち合わせる彼女は、僧侶と呼称されることが多い。その能力は希少で、冒険者の中でも適正を持つ者は少ない。


 そんな彼女だが、ブシドウと同じく冒険者としては活動しておらず、代わりに教会を運営することで生計を立てている。

 亡き父の形見(かたみ)である教会にはタンジョウの街中から人が集まり、彼らの善意によるお布施(ふせ)額は時に店の売上をも(しの)ぐことがある。


「ゴカゴ、ちょうど良かった。ブシドウを連れて行ってくれ、さっきから問題ばかり起こしていてな」


 リオンの言葉にゴカゴは静かに頷いた。修道服のフードの下から覗く栗色の髪が、頭の動きに従って静かに揺れる。


「おいふざけるなよリオン、お前が逃げるのがいけないんだろ!」

「あらそうですか。ブシドウ、こちらへ。ちょうどこの後お祈りがあるの。一緒に行きましょう」


 そう言ったゴカゴはブシドウの耳を掴み、引っ張りながらギルドの出口まで歩き出す。「あがっ!」と()らしながらも無抵抗で引きずられていくブシドウを見て、ギルド内に居る全員は憐れみの表情で彼を見送っていった。


 嵐のように過ぎ去った二人を呆然(ぼうぜん)と見送った田中は、厄介払いが済んで清々しい顔をするリオンに導かれ、再びセプタの待つ受付の前に立った。

 彼女もはっとした表情で気を引き締め直し、慌てて書類を手に取り読み上げる。


「田中さん、次が最後の試験となります。とはいえ、試験と言うよりは確認ですね。ここに紙がありますから、あなたの血を垂らしてください」


 不可思議な幾何学(きかがく)紋様(もんよう)が刻まれている紙がセプタから差し出され、続けて鋭く研がれたナイフが田中に渡される。困った表情を浮かべる田中であったが、(そば)に居たキョウカンは彼の様子を察して助言した。


「このナイフは物凄く切れます。なので、先端を人差し指の腹に軽く触れさせてください。それで十分です」


 言われた通りに田中は、左手の人差し指の腹にナイフを軽く突き立てる。次にそれを離した途端、ぷくりと膨らんだ鮮血が重力に従い、あっという間に指を伝って用紙へと落ちていく。


「おっと、ちょっと強く刺しすぎましたね」


 キョウカンが笑ってナイフを受け取ろうとしたその時、血を受け止めた用紙の紋様が光を帯びて、様々な色へと変化を始めた。赤、青、緑、黄、黒、と光り輝いた後、やがて無地だった面に文字が浮かび上がる。

 見た事のない光の連鎖(れんさ)に驚いたキョウカンは、思わず飛び退く勢いで後ろに下がった。


「なんでしょう、このスキルは……見た事が無いです」


 浮かび上がった文字を見たセプタは、困惑したようにそう呟く。それは、この世界の言葉で翻訳(ほんやく)されていない文字を含んだ「■■の加護」というもので、戻ってきたキョウカンもまじまじとそれを覗き込む。


「加護、は読めますね。でも、加護付きの方なんて今まで見た事がありません」

「精霊の(たぐい)か?」

「いえ、そもそもこの文字が読めません」


 小声で展開される二人のやり取りに、気になったリオンは三人の元に駆け寄る。


「どうしました?」

「あ、リオンさん。実は……」


 彼女は文字が書かれた用紙をリオンに見せ、助けを求めた。

 その行動にぎょっとしたキョウカンは、慌てて用紙を取り上げる。


「セプタ! これは本人以外に見せたら駄目だと言われてるだろ!」

「あ、ごめんなさい!」


 あたふたする二人のやり取りを見ながら田中は、()()()加護なのかはとっくに見当が付いていた。彼は困ったように後頭部を撫でながら、二人のやり取りを眺める。


「まあまあ二人とも、落ち着いてください。当の本人である田中さんが困ってますよ」


 リオンの言葉に二人ともはっと気づいて、田中への謝罪が行われた。彼は勇者の計らいに感謝しつつ、愛想笑いを浮かべて謝罪に対応する。


「田中さん、一から説明しますと、これはスキル鑑定というものです。ただ、申し訳ない事に田中さんの持つスキルが詳細不明でして、とても希少性はあるには間違いないのですが、現時点ではどのような能力かもお伝えする事が出来ません。本当に申し訳ございません」


 セプタの参ってしまったかのような表情に、田中はどうすればいいか分からなかった。

 

「仕方ない、ガルマさんを呼ぼう」


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