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英雄団……と田中さん  作者: ドル チイダ
勇者一行との出会い
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タンジョウの街 (4)

 深々とお辞儀をした田中に、リオンは恐れ多そうに両手を泳がせる。一般的には高嶺(たかね)の存在である勇者が下手(したて)に出てやり取りする相手、それへの興味が他の冒険者達の関心を集めていく。先程試験を終えた男女もまた、二人のやり取りを眺めていた。


「まさか勇者さんが来ているなんて」

「あの人、凄い見た目……何者なんだろ」


 (にぶ)く光を反射する頭を上げた田中は、セプタの方へと向き直す。動きに従って軽そうに揺れる前髪に、申し訳程度に押し殺した周りからの失笑が田中に向けられる。

 冷静さを取り戻したセプタは深呼吸を挟んだ後、田中へと簡単な説明を始める。


「田中長隆さん、ですね。では、この石を握ってください。これは鑑定石(かんていせき)と言って、その人が持つ魔法適性を見る事が出来ます」


 書類をしたためたセプタが渡してきたそれは、大きなビー玉によく似た代物(しろもの)だった。(にご)りひとつ無いその美しさに、田中は一瞬心を奪われるも、言われた通りにその石を握り込む。


 すると、指の隙間から(あふ)れんばかりの光が発せられ、さらにそれは赤、青、緑、黄、黒と色を変えた後、やがてゆっくりと収まっていった。


 その光景を見た周りの人々は、明らかに様子を変え、中には大きな声を上げる者も居た。リオンでさえも、組んでいた腕を思わず崩し、呆然と眺めている。


「魔法適性……ありです。ですが、信じられません。これは……まるで」

「ケンジャさんの再来みたいだな」


 リオンが半笑いで、そう呟いた。

 田中はこの鑑定石の反応からして、とんでもない結果なんだろうと実感していた。しかしこれは加護によるものだという事も知っていたので、彼自身は特に感動もしていなかった。


 その反応が周りには刺激が強すぎたみたいで、化け物を見るような視線が田中へと(そそ)がれる。そんな中、リオンだけは彼の肩を叩いて笑いかけた。


「凄いな田中さん! 魔法使い目指せるよ!」

「えっと……次の試験に移りますね」


 放心していたセプタが我を取り戻し、手元にあった衣類に付いているようなボタンを手に取り、それを口元に近づけて小さく何かを唱える。すると、受付の横にあった扉が開かれ、中から筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の色黒の男が現れた。


 髪は短く()られ、文字を表しているような剃りこみが入っており、右耳には魔力の込められた宝石型のピアスが赤、緑と外側に並び、それぞれの色で光を反射している。


 いかつい外見の男が現れた事により、田中は反射的に酒場の出来事を思い出す。


「ん? 何だこの空気は。セプタ、何かあったのか?」


 場の空気を感じ取った色黒の男、キョウカンは彼女に尋ねる。しかし、リオンが視界に入った時、何かを察したように本来の仕事に戻った。


「今から君……あなたの適正試験を行う。安心しろ、取って食ったりしない。冒険者として活動が可能な体力があるかどうか、それを測るだけだ」


 太い腕を組み、白い歯を覗かせてキョウカンは言う。田中はその言葉に安心はしたが、(うなが)される扉の先に進むのを少し躊躇(ちゅうちょ)する。その際にリオンの方へ振り向くが、彼は期待のこもった眼差しで見つめるだけであった。


 キョウカンが扉を閉めた後、場内は突然現れた田中の存在で持ち切りだった。それほど鑑定石の結果は、彼らの度肝(どぎも)を抜いたのである。

 その様子に何故か満足げのリオンは、田中の帰りを待つ為に適当な椅子に座ろうとする。


「リオンさん、彼は一体何者なのですか?」


 その場から動こうとしていたリオンはセプタに呼び止められ、彼について答えようとした。しかし、リオン自身も出会ったばかりという事で、結局言葉を飲み込む。


「勇者リオン! 探したぜ!」


 それはざわつく雰囲気に水を差したような大声だった。道場破りかのような登場に、リオンは見るのも嫌そうに振り向く。


 厚さは薄いが頑丈な素材の青紫の道着に、腰に巻いた魔力のこもった黒い帯。天に向かって跳ね上がる短く黒い髪の毛を纏めるように、紅蓮のハチマキを身につける男。問題児の熱血漢、ブシドウの姿がそこにあった。


「ブシドウか、何の用だ?」

「何の用だじゃねえよ! 勝負の続きだよ! 忘れたか!」

「お前と勝負なんてしていないだろ」


 このやり取りに飽き飽きしているかのように、リオンは首を振る。突然の闖入者(ちんにゅうしゃ)に、場内の話題も入れ替わる。彼は冒険者では無いが、リオンとは小さい頃からの(くさ)(えん)であり、リオンを探すためにこうしてたまにギルドへ現れたりする。

 その知名度は高く、また問題児としての行動も目立つため、人々は近すぎず遠すぎずの距離から見守るのが常となっていた。


「ところで、ゴカゴは?」

「え、ゴカゴ……? は、知らねえなぁ?」


 わざとらしく口笛を吹き、両手を頭の後ろで組むブシドウ。その視線は右上へと泳ぎ、分かりやすいくらいの動揺が見られる。


「また彼女を置いてきたのか」

「ひ、人聞きが悪い言い方をすんじゃねえ! あいつが勝手に付いてきてるだけだ!」

「やっぱり置いてきたんじゃないか」


 ぐうの音も出ないブシドウは、うっと黙り込む。教会を運営するゴカゴとは幼馴染(おさななじみ)であるが、祈りを捧げる行為が好きではない彼は教会の一室を借りながらもこうして脱走を繰り返している。


「そんな事より、面白い人と出会ったんだ。今にあの扉から出てくるよ」

「あーん?」


 眉を寄せてリオンの指差す扉を睨み、「けっ」とそっぽを向いた。


「興味無いね」

「ケンジャさんと同じくらいの魔力を持ってる、って言ったら?」


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