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英雄団……と田中さん  作者: ドル チイダ
勇者一行との出会い
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タンジョウの街 (3)


 ──タンジョウの中心部にあたる場所には、ギルドがある。街の中で一番大きい施設になり、訓練用の広場や受付カウンターなどがある為に巨大な敷地を要している。


 そこには近隣の村などからはるばる来た腕に自信のある若者が多く集い、国から請け負う様々な依頼をギルドを介して請ける事になっている。依頼の途中に起きた事件や事故などは、管轄(かんかつ)内のものはその街のギルド、対処しきれない事案の場合は他の街のギルドへと救援要請が送られる仕組みになっている。


 では、国は何もしないのか、と言うと少し違う。国は所謂(いわゆる)雇い主になるので、簡単に手出しをしてはいけない制度がある。国が手を出すという事は、兵を貸し出す事になる。つまり、他国に武力面で付け入る隙を与えてしまう事になる。

 なので、あくまで国を揺るがす有事の際以外は基本手出しをしない取り組みとなっている。閑話休題。


 懇切丁寧(こんせつていねい)にギルドの仕組みを説明するリオンに、田中は初めて聞いたような態度で相槌(あいづち)を打つ。そして酒場から歩き出して十分(じっぷん)ほど経った頃、田中の目にギルドの外観が映し出される。


 木造の集大成とも言える巨大な屋敷の見た目をしているそれは、この世界の文字でギルドと書かれた大きな横看板を中央に()え、賑やかな大通りを(いろど)っていた。


 大男でも通れそうな両開きの扉には剣に炎の揺らめきが巻き付くように灯っている彫刻が()され、この世界の力の象徴を表している。リオンはその扉を開けて、田中へと目をやる。


 屋内へ足を踏み入れた田中を迎える光景は壮観(そうかん)なもので、まるでそれが正装かのように兜や鎧を着込んだ者、田中の世界で言うコスプレ同然の格好を恥ずかしげも無くしている者、一部人間とは少し特徴の違う者などが一階と二階に所狭しと存在している。


 その他にも、開けた中央以外は等間隔(とうかんかく)で置かれたテーブルや椅子があり、太陽のごとき光が天井灯から降り注ぐ。


「ここです、ここから冒険者の登録が出来ますよ」


 リオンが指差す先は行列の最後尾(さいこうび)、中央にあたるそこはいつもは開けているが、今回は行列を成している。列の先頭にはたった一つの受付が設けられており、他に受付は無いかと辺りを見渡す田中。しかし、リオンはそんな彼の様子を見て、小さく首を振る。


「今だけです、これだけ賑わっているのは」


 その言葉には含みがあったが、田中はそれ以上詮索(せんさく)する事はなかった。


「緊張するなあ」


 田中の前に並ぶ紫色の円錐形(えんすいがた)の帽子を被った男がぼやき、見るからに緊張したなりでそわそわしている。魔法店で購入しただぼついた服装と、樫の木に似た素材を使用した在りきたりな杖を手に持ち、如何にも魔法に優れているような格好をしている。


「大丈夫よ、あなた才能あるじゃない」


 同じく列内の、男の前に立つ軽装の女はそう言って勇気づける。彼女が着る鎖帷子(くさりかたびら)のような鎧は軽く着回しが良いため、女性の前衛職からも人気が高い。二人の身なりはまさに、駆け出しの冒険者と言える。


 田中はその様子を眺めながら、前の世界で別れた妻の佳奈を思い出していた。毎回彼を(かば)うように立ち回っていた彼女は、今もこうして田中の心に在り続ける。


「ありがとう、頑張るよ」


 若い男は彼女からの言葉に応え、その目には自信が灯り出す。二人の初々しいやり取りを見終わり、少し(うつむ)く田中。その表情はどこか物憂(ものう)げで、哀愁(あいしゅう)漂う背中を見せていた。


「お待たせしました、身分を証明する物を出してください」


 前の男女が試験を受ける間、考えを(めぐ)らせていた田中は不意に声を掛けられ頭を上げる。

 しかし、彼は言われた物を持ち合わせておらず、慌てて何も入っていないポケットをまさぐる。


 あたふたしている田中を見て、受付の女性、セプタは少し苛立(いらだ)ちを(あらわ)にした。

 元々つり目である彼女は、少し(にら)むとそれだけで相手を威圧してしまう。その為に業務中は尻下がりの放物線を描いている眼鏡を掛け、少しでも和らげる努力をしている。


 しかし、眼鏡の下から覗く猛禽類(もうきんるい)のような目つきに気づいた田中は、彼女の努力も虚しく被捕食者(ひほしょくしゃ)のように萎縮するきっかけとなった。

 すると、その様子を遠くから見ていたリオンが駆け寄り、困っている田中へ助け舟を出す。


「ああ、彼は俺の友人でね。ちょっと事情があって市民証を無くしてしまったんだ」

「ひゃっ!?」


 突然現れた勇者の姿に、身体が跳ねるほど驚いたセプタは声が上ずらせる。彼女はズレてしまった眼鏡を慌てて直し、打って変わって笑顔混じりの表情となった。


「あ、ゆ、勇者様のご友人でしたか! 了解しました、ではギルドカードの発行の前に、適性試験(てきせいしけん)を行います」


 音量を間違えたかのようなセプタの大声に、周りに居た冒険者達はリオンの存在に気づき出す。困ったように笑いながら視線を把握(はあく)したリオンは、田中の背中を優しく押すように叩いて口を開く。


「田中さん、見ていたから分かるとは思いますけど、今から行う適性試験は田中さんの能力を分析する為のものです。係員の指示に従ってるだけで終わると思いますので、緊張なさらず伸び伸びとお願いしますね」

「何から何までありがとうございます」


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