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英雄団……と田中さん  作者: ドル チイダ
勇者一行との出会い
31/35

異変 (2)


「俺を責めねえのかよ、教会から逃げ出した俺を」

「それはまた後でやってやる。今は向かうのが先だ」


 遅れて、教会の事で騒ぎ出す冒険者達の声を背中に受けながら、リオン達は人の間を縫って出口へ急ぐ。鬼気迫る勇者の顔に、いつもは話しかける冒険者達もたじろいで道を空けていく。

 余裕の無いその姿に、田中は危うさを感じていた。


「どこへ行くつもりだ、リオン」


 出口まであと数歩の所でリオン達の前に立ち塞がったのは、息を乱したキョウカンだった。彼は室長室がある階段から走って、急ぐリオンを制止したのだ。その顔には、いつもの優しげな雰囲気は無い。


「っ! どいてくださいキョウカン!」

「駄目だ、勇者リオンよ。ガルマさんから君を行かすなと言われていてね」


 キョウカンは、勇者憎しでこのような事をしている訳では無い。しかし、このやり取りすら、今のリオンには時間が惜しかった。


「キョウカン、教会が襲撃されたのは知っていますか?」

「なに、教会が?」


 眉を上げ、キョウカンは声を上げた。その間も警戒を解かず、彼の目は三人の行動を見据えている。

 その姿に、歯痒い思いでブシドウは顔を歪ませる。


「キョウカン、今は通してくれ! ゴカゴがやべえんだ!」

「リオン、ロザリオは」


 キョウカンに言われはっとしたリオンは、いつも持ち歩いているロザリオを取り出す。彼はそれに向かって小さく唱えると、応えるように淡い光がロザリオを纏う。


「ブシドウ、ゴカゴは無事だ」

「なんだって!」


 リオンの言葉に、ブシドウは戸惑いつつも安心したように呼吸を落ち着かせる。


「なんだよ、あいつ無事かよ。さすが神の御加護ってやつだな」

「冗談はいいから、早く向かわないと」

「リオン! お前は勇者なんだぞ! 有事の際に勝手な行動をするな!」


 キョウカンの叱責が飛ぶも、リオンは反抗するようにキッと睨んだ。

 普段は聞き分けの良い彼がこうも(かたく)なな理由は、そのスキルに原因がある。彼が持つ勇者特有のスキル、勇気は己の意思に関係無く時に彼を突き動かす原動力を生む事がある。しかしそれは暴走では無く、本人が潜在的に強く願った時に発動するのだ。


 キョウカンの怒号で、再びリオンらに周りの注目が集まりだす。

 その時、ブシドウが素早く腰を落とし、赤い揺らめきを持った拳をキョウカンに向かって突き出した。

 咄嗟にキョウカンはそれを腕で防御するも、衝撃に堪えきれず大きく後ろに吹っ飛び、扉に激しく身体を打ち付ける。そのまま前のめりに倒れ込み、四つん這いの状態で激しく呼吸を繰り返す。


「行くぞリオン!」


 突然の事についていけてなかったリオンと田中だったが、一足先に扉に手をかけたブシドウが叫び、我に返った二人は駆け出した。


「ま、待て」


 未だ起き上がれないキョウカンが声を振り絞るも、三人は既にそこには居なかった。彼は苦虫を噛み潰したような表情のまま、拳を震わせる。


 慌ただしく街中を走る三人は、ブシドウが案内するように先頭に立ち、真っ直ぐ教会へと向かっていた。いつもは賑わっている道中はどこか人通りが少ない。ギルドに集まっているとも言えるが、まるで何かに怯えるように人々は家の中に(こも)っている、


「リオンさん、あんな事して、大丈夫なんですか??」


 走り出してから数分でもう息が切れている田中が、脇腹を押さえながらリオンに尋ねた。


「大丈夫、では無いですね」


 悪戯っぽく笑う顔には、少年のようなあどけなさが映る。


「それよりも田中さん、マトイを使ってみて。だいぶ楽になるはず」


 早速ジオ命名の技名を使うリオンに、はっとする田中。リオンの全身には僅かであるが、赤の揺らめきが見て取れる。


「というかよぉ、黙ってたけどなんでこのおっさんも一緒なんだ?」


 先頭を走るブシドウが振り返りながら、田中の事を睨む。

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