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英雄団……と田中さん  作者: ドル チイダ
勇者一行との出会い
21/35

ガルマからの呼び出し (2)

 ──ギルドに辿り着いた二人は空いてる席に座るが、隣の田中は様々な反応を周りから受けていた。

 声を潜める者、明らかに目を逸らす者、無視する者、好奇な目で見つめる者。無遠慮なそれらに対して、田中もまた干渉しなかった。

 ギルド内は相変わらずの喧騒(けんそう)で、人通りが絶えないにもかかわらず昨日の騒動で空いた穴などは修繕されていた。


「勇者リオンさんですね、お待ちしておりました」


 ギルド員の女性がリオンの正面に立ち、きびきびとお辞儀をした。

 彼女の胸元にはネームプレートが付けられており、そこには《セナ》という文字が刻まれている。


「ガルマ様から(うけたまわ)っております、こちらへ」


 セナが上体を起こしてからそう告げて、機敏にその場で踵を返す。彼女の赤みがかった短髪がふわりと舞い、しんなりと襟元に着地する。

 それと同時に歩き出し、ギルド員が着用する服の裾がヒラヒラと尾のように舞った。彼女には最低限の礼儀は備わっているが、例え客人相手でも待つ事はしない主義だった。

 それは彼女の流儀であり、信念を貫くために必要な行動理念であった。


 勿論それを知るリオンは慌てずに立ち上がり、田中の方を振り返る。田中も最初はぽかんとしていたが、すぐに立ち上がり二人はセナの後をついて行った。


 階段を登り、突き当たりを左に曲がると長い通路が続く。そして、田中にとっては見覚えのある部屋の前まで来たかと思うと、セナは再び振り返る。


「こちらでガルマ様がお待ちです。失礼のないようにご入室くださいませ」


 それだけ告げると、セナは足早に去っていった。その姿を田中は目で追ったが、すぐに前に向き直す。

 リオンは軽く扉を鳴らし、「入れ」の言葉と共に扉を開けた。


「昨日ぶりだな、二人とも」


 背を向けて座っているガルマが、重々しく声を発する。それはギルドマスターの名に相応しい姿であり、二人は気圧されたように喉を鳴らす。


「とりあえず、儂の前に座るといい」


 リオンと田中は短く目を合わせ、促されるままに対面のソファの前に立つ。その姿に、ガルマは俯いていた顔を少し上げる。


「座っていいぞ、生憎(あいにく)ユズスは用意しとらんでな」


 言われて座る二人だが、その身体はガルマに対して明らかな緊張を帯びていた。

 リオンが知るガルマとは、豪快で竹を割ったような性格である。しかし今、二人の前に座っているのは老獪(ろうかい)な気配を纏う別人のような存在だった。


「ケンジャの爺からの言伝(ことづて)じゃ、田中くん。君に外出許可証を渡す」


 そう言ってガルマは、自身の右隣に置いていた紙を丸めた物を机の上に置き、田中の前に差し出した。

 その紙には細い赤い布が蝶々結びで()われており、紙も布も上質な素材から作られているとわかる。

 微笑するガルマに対し、おずおずとそれを受け取る田中。


「ありがとうございます」

「なに、構わんよ。それと」


 今度はリオンに視線を移し、悠然と腕を組んだ。


「あの爺に言うとけい。新人の教育くらい人に任せるな、とな」


 いつもの調子を見せるガルマに、一瞬間が空いたのちに明らかに安堵の表情で返事をするリオン。


「爺はジオのやつを推薦か、よし、彼にはあとで伝えておこう」

「はい!」


 リオンが力強く返事したのでガルマは面を食らったが、何も言わずに微笑みを浮かべた。


「田中くん、了解したか?」

「はい」


 じろりと覗かれた田中も、背筋を更に伸ばして返事をした。


「よし、話は以上じゃ。退室してよし」


 そう言って、ソファに大きくもたれ掛かるガルマ。リオンは軽快に、田中は静かに立ち上がり、退室の挨拶の儀を交わして扉を閉めた。

 二人が去ったのち、ガルマは微笑んでいた顔を引き締め、厳しい視線で宙を眺める。


「呪われた加護、か」


 その呟きは誰にも聞かれずに、虚空に消えていった。

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