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英雄団……と田中さん  作者: ドル チイダ
勇者一行との出会い
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タンジョウの街 (7)

 解決の糸口を(ゆだ)ねるように、キョウカンが呟く。そこからの行動は早く、ギルドの両脇にある二階へと続く階段へと彼は歩き出す。


 キョウカンを通した冒険者達であったが、その目は田中を捉えたまま妖しく光る。五色の光を放ったスキルとはどれ程のものかと、彼らの好奇心は次第に田中達への距離を詰めていくきっかけとなっていく。


 明らかに周囲の様子がおかしい事に気づいたリオンは、田中と受付を背にギャラリー達を見渡す。彼らは少しずつ近づいてきており、それに混じって怪しげな存在も見え隠れしていた。


 ──優秀なスキルは経験を凌駕(りょうが)する。世はスキル一強時代に突入しており、ランクの高い冒険者は強力なそれを(よう)しているのが当たり前であり、たとえ戦闘経験が無い者でもそれ次第によって魔物でさえ簡単に討伐出来てしまう。


 逆に言えば、持たざる者も一定数存在しており、彼らの扱いは悲惨を極める。ギルドはそのような者を増やさない為にも、スキルの付与を鑑定と共に行うことがある。


 それらは微々たる効果の物しかないが、それでも無いよりはマシだ。それ程までに、この世界でのスキルとは人生を左右する大きな要素である──


 田中もリオンの行動を見て、異常な事態が発生している事に気づく。目の色を変えた冒険者達はまるで亡者のように彼を見つめ、目が合った田中は言いようのない悪寒(おかん)に震え上がる。


「なぁんだこの人だかりは! おめぇら邪魔だ! どけどけ!」


 ギルドの入口から聞こえる怒号、それは扉を蹴破るように入ってきたブシドウの仕業だった。彼はそのまま人混みの方へ大股で歩いていき、立ちはだかる者を()めつける。


「うっ」


 睨まれた男は気圧(けお)されて道を譲ると、その後ろに居た人々も同じような動きで次々と道を開けていく。

 ふんっと鼻を鳴らしたブシドウは、堂々とした出で立ちで開けた道を大手を振って歩き出す。

 そしてリオンの前まで来ると、出方を待つように無言で腕を組んだ。

 その姿に顔を(ほころ)ばせたリオンは、緊張させていた肩を下げる。


「ブシドウ、ゴカゴは?」


 ゴカゴに引っ張られたブシドウの左耳は今も赤くなっており、それをさすりながら彼は面倒臭そうに答える。


「逃げてきた。で、なんだこの騒ぎは。またあのおっさんの仕業か?」

「……まあ、そんな所だな。でも今回ばかりはお前が来てくれて助かった」

「なんだよ気持ちわりいな!」


 いがみ合うほど仲が良いのか、言われたブシドウは腕を組んで顔を背ける。


「おい! お前ら散った散った! 依頼を受けるために此処に来てるお前らが、いつまで(たむろ)してんだ! さっさと仕事しろ!」


 お前が言うな、という言葉を皆は飲み込んで、言われた通りに散っていく。しかし、まだ諦め切れないのか、数人の視線が田中に刺さり続ける。


「で、何してんだお前らは。おっさんの試験終わったんだろ?」

「それが、ちょっと色々あってね。今にギルドマスターが来るはず」

「え、まじかよ」


 明らかにたじろいだブシドウは、分かりやすく顔色を変える。


「わりぃ、ちょっと用事が出来たから帰るわ」


 手を挙げてそう言い残し、そそくさと踵を返そうとした彼はすぐ後ろに立っていた人物とぶつかった。


「いってぇ! おい誰だ俺の前にい、るのは」


 叫んでいる途中でぶつかった相手の顔を見て、見る見る顔を青ざめていくブシドウ。


「小僧、相変わらず貴様は五月蝿(うるさ)いのう。もう少し落ち着いたらどうだ、ん?」


 そう言った男はブシドウの胸ぐらを掴み、そのまま腕の力だけで持ち上げて、後ろに振りかぶって地面へと叩きつける。

 受け身も取れずに頭から落ちたブシドウは、無言で後頭部を押さえて寝転がる。周りに残っていた冒険者は、それを見て()けるように離れていった。


 一連の出来事に、田中はあんぐりと口を開け、セプタは両手で顔を覆い、リオンは目を(つむ)って顔を背ける。ガルマの後ろに居たキョウカンはというと、砕けた木片が散乱する地面を見て愕然(がくぜん)としていた。


 ブシドウを片手で投げた大男は服を手で払い、白くなった短い顎髭(あごひげ)を触りながら、(しわ)のある顔をにやりと歪ませる。


「おお、君が田中くんか! (わし)はギルドマスターをやっとるガルマじゃ!」


 割れんばかりの大声で言い放った彼はどすどすと田中へ歩み寄り、未だ開いた口が塞がらない彼の手を握り、力強く握手をする。


「ギルドマスター、彼のスキルですが」

「キョウカンから大体聞いておる、彼を儂の部屋へと案内しよう」


 セプタを一瞥(いちべつ)したガルマはそう言い終えて、田中の事を見据える。見下ろされた田中は足が震えたが、ガルマが踵を返したのを見て慌てて追いかけた。


「それと、この小僧をよろしく頼むぞ」


 去り際にリオンへ告げ、二人は二階へ続く階段を登っていく。

 ガルマが見えなくなったのを確認したブシドウは、あれだけの事があったにもかかわらず流血すらしてない姿でゆっくりと上体を起こす。


「おい、大丈夫か?」

「……あのじじい、手加減を知らねえんだ」


 流石に気遣(きづか)って声をかけるリオンだが、無傷を演出するかのように手をヒラヒラと泳がせるブシドウ。

 彼の周りに飛び散っている木片を無言で拾い上げたキョウカンは、木片を眺めながら小さくぼやく。彼の気苦労を知るセプタは、それを見て気の毒そうに眉を下げた。

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