2/31
002 プロローグ
男がいる。
黄金の髪をオールバックにした望月の瞳の大男だ。
山のように険しい体躯を、銀糸と金糸に装飾された荘厳な法衣が包んでいる。
彼は塔の上にいた。
とある街の中心部にある時計塔。
人類の作り上げたもっとも月に近い場所。
その頂点に立つ男は月光を見上げ―――呟く。
「また、か」
それは単なる独り言。
されど男にとってそれは神託であり、宣告である。
「またひとつ、……この世に悪が増える」
男はどんな悪も見逃さない。
「許されぬことだ」
男はどんな悪も許さない。
「滅せねばならぬ」
男は故にこう名乗る。
「『絶対正義』の名において―――あらゆる悪は、認めない」