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始まりと契約

 ガタン、ガタンと不規則に揺れる車輪。暗く、いかにも妖怪が出そうなトンネルを一台の車が走る。車と言ってもただの車ではない。その歪な車は、今から戦争に行こうというのだろうか、国の最新の武装がされており、例え大砲で撃たれたとしてもびくともしない作りになっている。何故そのような作りになっているのか、それはひとえに極悪人をこれから牢獄へと移送する車なのだ。そして、移送する牢獄もただの牢獄ではない。世界最悪、一度入ったものは日の目を見るものはいないとされるタルタロス牢獄だ。タルタロス牢獄、その名を聞くだけで民間人は震えて上がるという。そして、この牢獄はこの国 アガム の一大ビジネスだ。世界中から手に負えない極悪人を一手に引き受けてここに収容する。その見返りとして毎年、多額の報酬が入る。今、この世界では極悪人は死すら生ぬるいとされており、殺す寸前まで拷問が続けられている。では、殺さずに拷問を続けて生かしておくのならば脱獄をする者を出てくるのではないのか。だか、それは無い。アガムの威信にかけて世界最高の警備がされているからだ。では、そんな絶望しかない監獄に行くものの様子を見てみよう。       

 「や、やめなさい、私は シトロン の第三王女クリス・マクロスよ。このような外道どもと同じ扱いを、しないで。」

金髪で美しい顔立ちのいかにも王女といった女が叫んでいる。

 「お前がはアガムの国民を大量に殺してきただろうか今さら何を言っている。」

こちらはベル帽を被り腕に鷲の腕章を付け、赤の軍服に身を包んでいる、三十後半くらいの堀の深い顔をした男が話している。

 「戦争で犠牲はつきものじゃない。現に私だって多くの国民を殺されたわ。」

 「知るか。お前のせいで何人もの兵士が死んできた。その数は軽く数万は超える。お前はこの国にとっては悪魔だ。ゴミクズ以下だ。」

そう言って腹部に激しく蹴りを入れる。女は吐血したが、すでに全身に傷を負い血だらけだ。ここにいるものは両手両足をくさりで縛られており、自由に動かせるのはまさしく口だけだろう。しかも、その縛っている鎖は軍の特殊な素材で作られており得意の魔法も使えない。

 「悪魔よ、これから延々と地獄を味わうといい。」

そう言い残し、監視の男は次の車両へと行った。この車は6両編成で一つの部屋に十人前後が乗っている。あの男は先程のように、反抗の意思のあるものに持論をぶつけて気がすむままに暴力を振るうのだろう。まぁ、そんなことはどうでもいいと思いながら俺は鎖を外す。今まで女が抵抗し続けたせいで監視の男が居座り、はやくどこかに行かないものかとずっと思っていた。手足が拘束を受けていたせいで痺れていたので軽く伸びやストレッチをする。すると、同じ車両に拘束されている一同が唖然とした顔でこちらを見てきた。まあ、そうだろう。この拘束は魔法では絶対にとくことは出来ず、またどんなに素の力があっても解けないからだ。すると、先程の女が話しかけた。

 「あなた、どうやって拘束を解いたの?」

唖然としており、口をあんぐりと大きくあけている。

 「それは、秘密だ。赤の他人に教えてやる義務もない。」

そして、俺は自分で言うのもなんだがバカではない。拘束はいつでも解けるのに、監獄のなかに入ってではなく なぜ この人目につく今拘束を解いたのか。誰かが、監視に密告するリスクをかかえてまでもだ。それにはもちろんそれなりのリターンがあってのことだ。 

 「お前、拘束を解いて欲しそうな顔をしてるな。それには条件がある。お前、三日間俺の奴隷になれ。」

「は!!」

そのあんぐりとあいた口は先程よりも大きかった。

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