テト編 第五章 眠り姫にはキスが有効
今日という特別な一日(休日)がキャロの睡眠付き添いにより潰れかけている午後六時やっとレミー達が帰ってきた。
「たっだいま!」
レミーが勢いよくドアを開ける。
それに気づいた私は一目散に階段を降りて玄関。レミーの元へとかける。
「レミー!」
「あっテト!ただいま!」
レミーが私を抱きしめる。私もレミーを抱きしめる。
「何買ってきたの?」
「ん?らんねちゃんとキャロちゃんの服とか生活用品一式、、ってそういえばキャロちゃんは?うまくやってる?」
レミーが袋を漁りながら聞いてきた。
「それが、眠ったっきり起きなくて」
私は正直少し不安だった。だがレミーの言葉を聞いて、驚いた。
「ああー言うの忘れてたね。あの子寝る体質なの。食べ物で栄養補給する代わりに寝ることで栄養補給するのよ」
おかしいよ。あの子。やっぱり変だと思ってた。栄養補給(天使が食事しないとでも思ってた?てか人間が食べてるご飯って基本天使が落としちゃった種とかだったんだよ?)が寝るって。どう言うこと?
「そっか。なるほど」
全く持って何も納得できていない私はわからないままうなづいて、キャロのいる部屋に向かった。
「あ、はよっす。姉さん」
ぎくりとしているキャロに私はそっと。
「キャロ。私のことだました?」
笑顔で肩に手を置いた。
「えっや、あの、言うつもりはあったんですけどタイミングがなくって、」
キャロの目がすごい泳ぐ。
「ふふ、まあいいや」
ありがとう。キャロ。私あなたのおかげで救われた。相手のことを知りたいって思った。
「ねえキャロ。ちょっと頼み事があるんだけど、、」
私が恐る恐る聴くと、キャロは笑顔で、
「へいへい、なんすか?なんでもしますよ?」
私はニヤリと笑って、
「よし!言ったよ?ちょっとついてきて」
キャロはビビった。
階段を上がって、左側の二個めの部屋。そこが私の部屋。二階の部屋は201号室、202号室、203号室 204号室の四つ大部屋が廊下を挟んだ左右にあり、その奥に個室がある。その個室は基本、新しく入ってきた馴染めない子やシャルなどのように介護が必要な子、そして打ち解けられない子がいる。203号室の大部屋(私の部屋)では、シャティ、シャロン、リリー、ロジー、ロム、の六人が過ごしている。そして中でもリリーとは、ずっと犬猿の中である。なぜならリリーには欠点がないからだ。そんなリリーを受け入れられずに私はずっとリリーを嫌ってきた。
「あのね。私とリリーって子は昔っから、喧嘩ばかりしてて、打ち解けられなかったの」
私は少し俯きながら話した。
「ねえさ」
「大丈夫!」
キャロがあまりにも心配そうに言ったので、私はキャロの言葉を遮って、前を向いた。
「でもやっぱちょっと怖いから、手握っててくれる?」
キャロは何も言わずに私の手を握っててくれた。
「ねえリリー。話があるんだけど」
私が勢いよくドアを開けると、リリーは、読んでいる本から視線を離し、少しこちらの様子を伺った。そしてまた視線を本に戻した。
「あのさ!話したいことがあるんだ」
私が必死にそういうと、リリーは本を閉じた。
「うるさいな。わかったわ」
リリーはこちらに歩いてきた。
部屋の外に出てきたリリーは、むすっとしていて、少し怖かったが、キャロがずっと手を繋いでくれてたから、あんまり怖くなかった。
「あのね。リリー」
私は全てを話した。今まで思ってたことを。本当は、最初からリリーのこと知ろうと思ってなくて、ずっと避けていたこと。リリーが羨ましかったこと。自分から傷ついて、知ってしまうのが怖かったこと。
「ごめんね。リリー」
リリーは終始無言でただただうなづいていた。そして私が話し終わるとリリーも謝ってくれた。
私のことが羨ましかったこと。みんなに愛されて、レミーに愛されて、たくさん友達がいたこと。この施設で唯一容姿に欠点がないこと。
リリーの話を聞いて驚いた。私が欠点だと思っていた容姿の特徴は、この施設では、もはや才能のような存在になっていることに。そんな中一人リリーはきっととてつもなく辛い思いをしていたのだろう。なんだか色んな感情が溢れてきて、私は涙を流してしまった。リリーはそんな私をそっと抱きしめてくれた。私はリリーを抱きしめようと、キャロの手を離そうとしたのに、なかなかキャロは離してくれなくって、結局片手でリリーを抱きしめた。暖かかった。
「今日はありがとう。キャロ。おやすみ」
私たちは食事を終えて、就寝時間になったのでお互いの部屋に戻ることになった。
「あの!姉さん!」
戻ろうとした私の服の裾をキャロが掴んだ。
「じ、実は、お話ししたいことがありまして。。」
「ん?わかった。どしたの?」
キャロはもじもじしながら話しはじめた。
「実は私、超能力者でして」
ふむふむ。超能力者か。
「ふーんなるほどね〜で、?えっ!えー!」
超能力者!?
「なんですか?そのお笑いみたいなノリは。まあいいや。それで、相手の心の声が聞こえるんです。これはいつもで、耳栓しても聞こえてて頑張れば透視もできますし念動力も、、」
「えっまじ?」
「はい。まじ」
思考停止。全く持って理解ができなかったけど、とりあえず私はうなづいた。
「で、どんなことがわかるの?」
「んー例えば、意味もわかってないのにうなづく姉さんとか?」
ニヤニヤしながらキャロがいう。全く持ってけしからん。なんてやつだ。
「全く持ってけしからん。なんてやつだ」
「えっ合ってる!すごい」
でもなんか恥ずかしい
「でもなんか恥ずかしい」
「もういい!やめて!終了!わかったから!」
キャロはまたケラケラ笑う。なんてやつだ。姉を困らせて楽しいのかよ。
「はぁー、まぁ良いや。実際キャロのおかげで救われたし。でももう隠し事はなしね」
「は、はい」
私は小指を出した。
「えっなんすか」
「いいから小指出して!昔のしきたりではこうするって学校で習ったの!」
恐る恐るキャロが小指を出した。
「はい!ゆびきりげんまん!」
キャロは目を丸くして驚いた。私はそれが面白くて少し笑ってしまった。
「くすくす、まぁーその力を恐れて、レミーはあなたをここに入れたのかな。まあなんだっていいけど。もう寝なさい。おやすみ」
私はそっと、キャロのおでこに手を当てて、前髪を上げておでこにキスした。
「ふふ、おやすみ」
キャロの顔が真っ赤に燃えて、目を丸くして驚いてるのは可愛かったなと。