テト編 第一章 天使の国
天使たちは美しさを好む。
美に生きている。
美しくないものは廃除する。
それが天使。
たとえそれが家族であろうとなんであろうと廃除する。これが天使だ。
私も天使であるが、美しくないものは即廃除なんていうもっとーを掲げている天使たちにはうんざりしている。
かと言って「やめにしよう」なんていう気はさらさらない。なぜならここが天使の国だからだ。
私のような思考の持ち主は「今後美しくない思考を生むのでウンタラカンタラ」とよくわからない理由をつけて廃除しにくる。
だから、私がすることはたった一つ、みんなに合わせて楽しく美しい幸せな生活を送ること。世の大天使様は、「人と合わせず自分を作れ」とおっしゃいましたが、人と合わせることも時には必要なのだ。
そんなことより、私は今猛烈に頭が痛い。
今日は試験なので先週から朝も晩も勉強三昧だ。天使の国にも勉強がある。とても大変だ。大天使の名前を覚えなければならない。まぁ、数学や理科などもあるが。
(なんで天使の名前なんか覚えなきゃダメなんだよ、どうせ将来使わないだろ)
と散々頭の中で突っ込みを入れながら先週からずっと勉強しているわけで、もうくたくた。頭が痛い。非常に痛い。誰かに後ろから突き刺されているのではと思うほど痛い。
そう思いながらも、必死に試験に今臨んでいるのだが
(お腹の空きと頭痛と眠さに耐えながら)
試験中、周りはしんと静まり返っていた。
しかしながらその静寂を何者かが壊すのであった。
そいつは数回にわたり耳をつんざくような悲鳴を上げる。
お腹の空きとは恐るべし。
どうしてもお腹は鳴り止まず、悲鳴を上げている。
周りの天使らは私をじろじろと見つめてくる。全くモテすぎも困ったものだ。
なんて考えているとキーンキーンというチャイムが鳴った。
初めてチャイムに救われた。
全教科の試験も無事終わり、(二つの意味で)帰る前に、ナノと優雅にお茶を飲んで話している。が、意識が朦朧として話が入ってこない。
しんどい…
「だからもう、ちゃんと寝てる?最近くまひどいよ」
注意しているはずなのにどうしても出てきてしまう。試験勉強なんてなくなってしまえ。
「えっそんなに!?注意してるんだけどな」
美は天使にとってかけがえのない物だ。
女の美容もその一部。いや、大半と言っていいほど拘っている。
「あっそうだ!今度おすすめの化粧水教えてあげる!」
「わーい嬉しい!」
天使の言葉は一言一言が大切。どんな言葉にも美しさを忘れぬよう。
「で、本題ですが、テト。試験の方はいかがですか?」
いやみったらしく敬語で聞いてくるナノに
「万事順調でございます」
と嘘をつく。
「では、勝負にいたしますか?私今回勉強してきてないんですの」
なんて、
見え見えの嘘をついてくるとは、ナノめ、なかなかやりおるわ。
「いえ、遠慮しとくわ。結果はわかり切っているもの」
私が負けるわけがないと言う意気込みで言うと、ナノはすくっと立ち上がっておしりをはたき、
「あらそう、残念」
と絶対思ってないだろうことをいい、かえって行った。
「おい!待てナノ!」
ナノを追いかける。
(なんでアイツは足も速いし運動もできて、頭もいいんだよ!)
と心で叫んでみたものの、
現状は何も変わらない。
キーンキーン
チャイムが聞こえた。
学校とは離れているとは言い、ここまで聞こえてくるんだな。
もうそろそろ家に帰らなければ。
「バイバイ、試験の結果楽しみね」
追いついた私は息切れをしている。だがナノはそんなことそっちのけで笑顔。
「いいなーナノは頭良くて」
ふふっとナノが笑った。
ラメが散ったように綺麗に輝いた笑み。
手を振って私もナノも家に帰る。