EP.7,5異空 主神オレガノ目線
EP.7のオレガノ様目線です
此処は神の御許と呼ばれる場所。
普段は他の世界と比べ時間の経つのが引き伸ばされた地だが、今は儂の創った“ヴェルダンディ”と同じように時間が流れるように設定した。
普段なら決してしないことだが、1人の娘を送り込んでからというものその娘の動向が気になって仕方がない。
何故ならばアイツが持っていた〈異世界最適性者〉の称号を獲得してしまったからだ。
いや、それだけが理由というわけでもないのだが、時を同じにして楽しみたいという気持ちもないわけではなかったからだ。
前のその称号の持ち主はとうの昔にこの世を去ったが、娘と同じく独特であり尚且つ面白い性格の男だった。
男も儂の世界に生まれ変わり、その痕跡は今も世界各地に散らばっている。
娘にも男の遺産を無限収納庫の中に紛れ込ませておいた。
男について調べているところを見るのも面白そうだ。
後に男について教えるのもまた一興か。
そう考えていると急に異空の中の娘の駄々漏れだった魔力が急に変質していることに気がついた。
それは、異常な程の変化だった。
魔力は急に制御しようとすると爆発することがある。
他の神たちもこの事態に気がついているようだ。
儂は異空門を開き中に進んでいった。
儂らが中に入るとそこは何もない、虚無の筈の空間には地面が、空気が、空が、建物が存在していた。
ーーーーーーありえない。
ただその一言に尽きていた。
儂は昔、この空間に世界を創造しようと試みた事があった。
しかしそれは失敗に終わった。
何故ならば、この空間が虚無だと知っていたからだ。
虚無には何もつくれない。
この世界は何事にもイメージが大切となる。
しかし、先にその世界、虚無を見てしまったことによりーー固定概念といえばいいのだろうか、ーーが形成されてしまった。
儂は何事にも創るときは何から何に変化させるとイメージする。
例えば、目の前の空間から世界を創るというように。
儂は、虚無から世界を創るという固定概念に囚われてしまった。
それ程に異空には虚無しかなかった。
だから異空には何も創れなくなってしまった。
だがどうだろう。
目の前には虚無からもはや街と言えるものまでもが存在していた。
歓喜や、驚きを通り越し、儂は悪寒を感じた。
目の前にいる、儂らの愛し子は神すらも超越するのだと。
しかし、そうだとしてもまだ娘はまだ途上だろう。
また、それだけで態度も変える気はない。
何故なら娘は、いや、彼女は儂らの友達なのだから。
「急な魔力の動きがあるから心配して見に来てみれば、どうしてこうなったのかのぉ。」
勿論、友達なのだから心配もするさ。
ネロやネルたちも同じ気持ちのようだ。
彼女、今は朱里ではなくルーヴィルと名乗っているようだ。
ヴェルディでは真名によって呪いをかけ、行動を制限するというものも存在する。
賢明な判断だろう。
ルーはこの広大な街などは儂らや眷属たちのために創ったようだった。
儂らのためというのは純粋に嬉しかった。
それとともに彼女の眷属達は普通ではありえない程の強さとなっていたのには驚いた。
しかし、ヴェルダンディにも彼女の眷属達よりも強いもの達はたくさんいる。
急に世界のバランスを崩すこともない。
崩したとしても、眷属達は精霊王などだ。
やっと精霊にも王が生まれたとなると嬉しさの方が勝る。
精霊達は弱いが、数や階級が高ければ世界の意思として国などだろうが、すぐに滅ぼせる。
しかしながら、自我が弱いこともあり王が生まれなかった。
王がいないと世界の精霊や妖精が統率されないので、他の生物達に利用されやすくなってしまう。
これはいい状況なのだろう。
今後にも期待と言ったところか。
話が逸れてしまったが、ルーはこの街を案内してくれるとの事だ。
中には宿泊施設と称し娯楽の施設も設けたようだ。
とても、楽しみである。
ルーは、最初に鍛治施設を案内してくれた。
「此処が鍛治施設。今後此処で柘榴や瑠璃達の武具を作ろうかなって思ってるんだ。」
「おぉ!武具についてだったら俺が教えてやってもいいぞ。俺も昔は自分でよく作っていたし、久しぶりに鍛冶もしたいと思っていたしな。」
武神コリアンはこの施設を気に入ったようだ。
コリアンの武具は質もいいが、機能性もいい。
知識も多いし、適しているのだろう。
玉に瑕なのは、真性の武具マニアという所だろう。
ルーも気づいたようだが、触れないようにしている。
…流石だとしか言いようがない。
次に訪れたは薬草園だ。
因みにコリアンは鍛治施設に残った。
鉱石も持っているので打ってみたいようだ。
まだ薬草は植っていない。
当たり前だ。
なんたって創ったばかりなのだから。
「此処は薬草園にする予定。外で拾ってきたやつとかを此処に埋めて育てようかなって思ってる。植物を育てるのは翡翠が詳しいみたいだったし、大量に取ったらなくなっちゃうし。今後ポーションとかも作ってみようかと思ってるしね。」
何やら色々試そうとしているみたいだ。
きちんと、残すことも視野に入れているのでいいだろう。
「薬草ね。種類によっては育て方とかも違うけど大丈夫なの?」
ネロは生命神だ。
薬草にも詳しく研究者肌なので、気になっているようだ。
「そこは大丈夫。他の育て方もあるかなって思って、ビニールハウスも作ったし、研究できるようにすぐ近くに建物も作った。あれだよ。」
ルーが指差す方には、白塗りの研究施設が建っていた。
「気になるなら、此処で研究とかやってみる?そうしたらいつでも此処で会えるようになるし、どう?」
「え!?いいの?研究したい。今外に何生えてるかとか調べたいなって思ってたの!ありがとう、ルー!」
ネロは此処にとどまるようだ。
召集に答えてくれればか問題ないので許可も出す。
「早速色々育ててみるね。種とか持ってるけどやる機会と場所がなかったから楽しみ!」
そういうと、早速作業に入ったのだった。
次に訪れたは娯楽施設。
そう、カジノだった。
これは…ヤバイ。
「おぉ、おおお!!これはこれはカジノではありませんか!?なんと、こんなものまで作ったのですか。流石ですね、此処の管理はどなたが!?」
「え、えっと、まだ誰もいない…かな?」
商業神リックは大のカジノ好きだ。
それこそ、ギャンブルのこととなると目の色が変わる。
彼自身運も高く、強いので負けることはない。
因みに何故ここまで彼がカジノが好きなのかというと、彼が負けない限りお金が舞い込むからだ。
そう、彼はお金儲けが好きなのである。
神なのだが、性格なのでしょうがない。
それ故に、商業神なのかもしれない。
「なら!なら私がここの管理をしても!?まだ客も入らないようですが、ここの異空は私達以外の神にも存在が知られているでしょう。時期に客も入ります。ああ楽しみですね!」
「あ、えっとならお願いしますね。」
「はい!是非!」
思わず口調が戻るのは仕方が無いと思う。
確かに他の神達ももう気がついているようなのでこれまた面白くなりそうである。
次に訪れたのは神殿だ。
「此処は最初に異空に入った時からあったんだ。多分此処がこの異空の中心っぽいから此処が街の中心。それでこの神殿を囲むように此処に漂ってた魔力と私の余剰回復する魔力を湖みたいにして使えるようにしてみたんだ。そうしたら私の眷属だったらHPと魔力回復できるかなって。後、薬草栽培とか?」
最初からあった?
詳しく聴いてみると、此処に入ってくると神殿とただ広がる草原しかなかったそうだ。
何かある時点でありえない。
さらに詳しく聴いてみると門を開く際にそのように広がる土地を想像しながら開いたそうだ。
おそらく、それが創造となったのだろう。
ーーーーーー面白い。
「此処の管理は誰がやっているの?話を聞いていると多分、他の神は此処が入り口になると思う。誰かいないと色々大変よ?」
生産神ネルも、同じことを思っていたようだ。
「えっといないかな?」
「なら私がやるわ。他の神にもある程度面識もあるし、選別もできるしね?いいかしら?」
多分、この魔力水に興味も惹かれたのだろう。
しかしながら仕事もするのなら大丈夫だろう。
「じゃあ、お願いしようかな。ありがとうネル。」
「いいえ。楽しみだわ。」
最近はネルもつまらなそうにしていたが楽しそうだ。
いい機会だろう。
最後に訪れたのは宿泊施設。
何かを嗅ぎつけたのか、リックも戻ってきた。
「此処は宿泊施設。旅館風のとホテル風のを作ってみた。どっちにも温泉があるからちょっと入ってみて?」
そういうと、儂らは温泉に案内された。
「おぉ、いい湯じゃのぉ。」
「えぇ、とても。気持ちいいですね。」
「でしょう?此処でゆっくりしてみて欲しくて作ってみたんだけど、喜んでもらえたみたいでよかった。」
あぁ、癒される。
これは、みたことはあったが、最高じゃ。
「…此処の管理も私がやってもいいですか?」
「え、いいの?やってもらえるなら助かるけど、大丈夫?」
勿論心配は管理し切れるかだ。
ルーも馬鹿では無い。
「えぇ、大丈夫ですよ。私の子飼いの眷属達にもやらせますしね。えぇ、安心してください。儲けて見せますよ。勿論多少はこちらにも分けてもらいますが。」
「ありがとう。助かる。」
此処も商売の為となるらしい。
…儂も金払わんと入れないのかの。
顔に出ていたのか、ルーはもう少し街の内側に豪華なのを建ててくれるらしい。しかも其処の管理はルーの眷属で、儂らの専用らしい。
嬉しい。
そして此処にとどまれない儂が、ネルと共に一度御許に戻ったのは、いうまでも無いだろう。
コリアンは異空に留まります。
鍛治に没頭しすぎていつの間にかとどまるようになったみたいです。
異空の中の時間経過は外と同じです!
そろそろ、リアルの時間も進めないとですね。