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獣人転生〜忌子の僕は奴隷になる〜  作者: 和泉秋水
4章1節 カグラの希望
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第3話 公爵のルナ


「君は――暁神楽、か?」

「ッッ!?」


 僕は、僕の前世の名前を言ったことに目を見開いて驚く。椅子から立ち上がり領主を警戒する。


「そんなに警戒しないでくれ。私は君に害することはない。『真実之審判(ジャッジメント)』を君に使ったことがあるだろう? この魔法は聖属性の魔法でな、審判した相手のあらゆる情報が知れる。名前からスキル、出身、犯罪履歴などなど。犯罪者を調べる時に便利な魔法だ。それを君に使った時に君が転生者で、前世が暁神楽だと知った」

「……」

「驚いたよ。まさか目の前にいたのが、私の初恋の人だっただなんて」


 領主は頬をうっすらと赤くする。


「……?」

「よく分からないって顔だな。そうだなまずは私のことについて話そうか。まず私は公爵家当主だ。おかしいと思わないか? まだまだ若い私が貴族の、ましてや公爵家の当主だなんて」


 確かにおかしい。貴族は親から継ぐものだったはずだ。しかもそれは子供が大人として領地を治められることができるようになてからでないと、継がせることはない。


「私はここシュワルゲン王国国王の兄の孫だ。両親はもちろんここの領主だった。しかし諸々の事情で亡くなってしまってな。当時私はまだ十五歳。ちなみに今は十七だ」


 僕の一つ上だ。


「本来なら私しか産んでいなかった両親の跡を継ぐ者はいないはずだった。しかし、私は元々頭も良く魔術にも長け継ぐに相応しいと国王とお爺さまから言われ、正式に継ぐこととなったのだ」


 なるほどそういうこともあり得る、のかもしれない。


「まあ今の私はいい。大事なのはなぜ、私が君の前世が初恋の人だと言ったことか、だろう?」


 僕は首肯する。


「私は君と同じ転生者だ。前世は月城瑠奈」

「ッッ!?」


 月城瑠奈――その名は僕の高校の時の先輩でいつもいじめから助けてもらっていた人の名。そしてある日交通事故で急に亡くなった先輩だった。


「ひ、久しぶり、だな」

「本当に先輩、なのですか?」


 信じられない。


「ああ、本当だとも。いじめられていた君を助けただろう?」

「先輩……お久しぶりです」

「ああ、また会えて嬉しいよ」


 領主のルナ先輩は僕を優しく抱きしめる。温かい。先輩の穏やかな心音が聞こえる。


「私はな、君に恋をしていたんだ。まあその想いを伝える前に死んでしまったがな」


 僕も先輩を抱き返す。

 もう会えないと思っていた先輩が、僕にとってのヒーローが目の前にいる。そして僕にとってこの世界で初めての転生者。

 僕は安堵から涙を流す。先輩の顔を見れば、先輩も涙を流していた。


「カグラ君、好きだ。その気持ちは転生しても変わらない。今まで大変だったな、辛かったな。守ってやれなくてすまなかった。これからは私が守ってやる。だからずっと、ここにいろ」

「はいっ、先輩っ……」


 僕は先輩を強く抱きしめ泣きじゃくる。そんな僕を先輩は慰めてくれた。

 頭を撫でてくれる。


「ひゃうっ」


 先輩は僕の猫耳に触る。お風呂で綺麗に洗われたのでふさふさに戻っている。もちろん尻尾も。


モミモミ

「ひうんっ」

サワサワ

「ひあっ」

「可愛いな。まさかカグラ君が猫人になるなんてな。実は私、猫派なんだ」


 猫派だった先輩は加減なしに触る。

 程よい気持ちよさを感じる。


「私な、前世の時に猫に好かれてたんだ。そしたら撫でるのが上手くなってな。ほれここか? ここがいんだろ?」

「ひわっ……あっ……ひっ」


 頭や顎、耳、尻尾の付け根を弄ばれる。


「〜〜〜〜〜ッッ!!」

「おっと」


 僕はあまりの気持ちよさに昇天する。

 こんなに気持ちいいの、初めて。猫に好かれるのも理解した。


「さて、カグラ君はこれからここで仕事するわけだが、慣れたら私の秘書にならないか? もちろん幼馴染みのミーツェと一緒で、だ」

「でも、僕はこの世界のことよく知らないし」

「それはこれから教育しよう。どうだ?」

「分かりました、やります」


 僕に秘書なんてできるどうか怪しいが先輩の声に答えたい。その思いで先輩の秘書になることを決める。


「これからよろしくお願いします、先輩」

「あー、その先輩はやめてくれるか? できればルナと名前で呼んでくれれば……」

「はい分かりました、ルナ様」

「……まいっか」


 呼び方に少し不服があったようだがこれでいいようだ。


「なあカグラ君、できたら私の夫にならないか?」

「へっ!?」

「何度も言うが私はお前のことが大好きなんだ。愛している。だからいずれはお前と……いやそれは無理だな」

「どうして、ですか?」

「えっ、あー、その……そう紫苑だ」

「紫苑……」


 僕は妹のことを思い出す。

 僕のせいで死んでしまったかもしれないことを。


「どうした? 大丈夫か?」

「は、はい」

「もしかして何かあったのか? 話してくれないか?」


 僕はルナ様に前世の僕が死ぬときのことを話す。今まで誰にも話さなかったがルナ様は信頼できる。


「そんなことが……」


 話を聞いてルナ様は絶句していた。ルナ様もまさか自分が死んだ後にいじめがひどくなって結果的に殺されるとまでは考えていなかったのだろう。

 「呪い殺せたら……っ」などと言っているが普段のルナ様とは違う様子は気のせいだろう。気のせいに違いない。


「すまない、私のせいで……」


 ルナ様は自分が死んだことで僕が殺されたと思っているのか僕をだきしめ謝る。


「ルナ様は悪くないですよ」

「すまないっ……」


 ルナ様は本当に優しい。


「それで紫苑は殺されたかもしれないんだな?」

「はい……」

「んー、多分大丈夫だろ」

「え?」

「紫苑は重度のブラコンだし。お前が殺されたら復讐するだろ」

「あー」


 確かに僕のことが好きだった紫苑ならあり得るかもしれない。


「もし復讐していなかったとしてもお前を追って自殺するだろうな。で、この世界に来ているかもしれない」

「ありえるんですか?」

「私とお前の他にも転生者はいる。だから可能性はある」

「そうですか」

「で、話は戻すが紫苑がいるなら、もし私がお前と結婚したことを知ったら私が殺されるかもしれん」


 ルナ様は紫苑に殺されることを危惧して無理だと判断したらしい。


「その、もし僕と結婚するなら僕が紫苑を説得しますよ」

「そ、そうかっ」


 ルナ様は頬を赤らめてそっぽを向いてしまう。


「ごほんっ。さてもう遅い時間だ。お前は部屋に戻って寝てくれ。わざわざ呼んで悪かったな」

「いえ、僕もルナ様と話せて楽しかったです」

「ああ、また話したくなったら呼ぶかもしれんがいいか?」

「ええ、いつでも」


 ルナ様とミーツェの部屋に戻る。


「あ、おかえりカグラ」

「まだ起きてたんだ」

「うん、カグラを待ってたの」

「じゃ、おやすみ」

「あ、はいおやすみなさいルナ様」


 ルナ様は自分の寝室に戻っていった。

 ミーツェと共にベッドに横たわる。


「カグラ……」


 ミーツェは僕に抱きつく。


「寂しかった」

「うん」

「だから今日はこのまま」

「うん」


 僕もミーツェを抱き返す。ミーツェの体が一瞬ビクッとなった。

 僕はミーツェの体温を感じながら眠りにつく。


読んでいただきありがとうございます。

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次話はもうしばらくお待ちください。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっと救われ…た?
2020/05/19 13:21 退会済み
管理
[良い点] 修羅場の予感! [一言] カグラ君には幸福になって欲しいですね
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