1話 冒険者パーティー
更新が遅くなって申し訳ありません。
少し気分が落ち込んでまして小説を書けませんでした。
ポイント評価は本当に力になりますので、ポイント評価お願いします。
今話はいつもより二倍ほど長いです
僕にとってこの世界は、過酷すぎた。
いじめられて、殺されて、幸せが訪れたと思えば、また苦痛の日々。
幸せはあった。
でもそれはあまりにも小さすぎた。
絶望の中のほんの僅かな希望の光。
しかしその光はすぐに消える。
誰も僕を助けてくれない。
誰も僕を必要としない。
誰も僕を知らない。
僕は人の道具になるしか能のない、無価値な存在だ。
僕はきっと、最初からそういう運命なのだ。
抵抗しても何の意味もない。それならただ運命に従って生きていくしかない。
それでも少しの希望に縋り付いてしまう。
きっと新しいご主人様も今までと同じだろう。
◇◇◇
一人の男に買われ一般的な宿に連れてこられた。
とある一室には彼の仲間らしき人達がいた。
「紹介しよう。こいつらが俺の冒険者パーティーだ。俺はリーダーの剣士アルヴ・カートン。で、こっちが――」
彼は簡潔に自己紹介をする。
「戦士のトール・ヴァイネンだ。よろしくな」
戦士らしく筋骨隆々とした大男だ。
「魔法使いのルーシャ・フォードよ。よろしくね」
ローブを羽織り綺麗なお姉さんだ。
「神官のゼシア・イルネシア、です。よろしくお願いします」
彼女は僕と同じアルビノだろうか。白い髪に透き通るような肌だった。
「あの、えっと、カグラ・ナーヴァルです」
「ああ、よろしくなカグラ」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあこれからについて話したいが……まず先にお風呂に入ってもらおう。色々と汚れてるみたいだからな。使い方わかるか?」
「ごめんなさい、分かりません」
「なら私と一緒に入ろ」
ゼシア様が言う。
「じゃあゼシア、カグラと入ってきて。俺たちはここで待ってるから」
「うん」
部屋を移動して宿に併設されている女風呂に向かう。
◇◇◇
残された三人はひっそりと会話を始める。
「で、あいつはどう使うのよ」
「決まってるだろ?」
「道具……か?」
「ああ。それ以外に何がある?」
「だよな」
「なら。私の好きなように使っていいんでしょ」
「もちろんだ。まあ壊すなよ。それなりに高かったんだから」
「わかってるわよ」
カグラの人生はこれからも暗いようだ。
◇◇◇
「あ、あのゼシア様、僕男なんですけど」
「大丈夫大丈夫、今人いないから」
「そういう問題では……」
僕は女湯で服を脱がされていた。
手早く脱がされ体を洗われる。
「あれ、もしかしてカグラ君もアルビノ?」
「はい、そうですけど」
「自分以外のアルビノ初めて見たっ」
僕は汚れていたため気付かれていなかったが綺麗にしたことでアルビノだと気づいたのだろう、ゼシア様は嬉しそうにしている。
確かにアルビノの数は少ない。確か二万分の一、だったはずだ。ゼシア様と会ったことは運命的な出会いだろう。
髪と体を洗い、全身が綺麗になった。
「きれい」
ゼシア様は僕の白い尻尾と耳に釘付けだ。
しかも洗ったことによってふわふわだ。
先程の部屋に戻る。
「おお、大分綺麗になったな。じゃあ早速これからの活動について説明するぞ」
彼らは皆CランクでもうすぐでBランクに上がるらしい。
まず僕の冒険者登録をしてから、とある一つの依頼を受ける。それはCランク:レッサーウルフの討伐。
森にいるレッサーウルフの群れを討伐するのが依頼内容だ。野営もするのでその準備や仲間の補佐をするのが僕の仕事だそうだ。
「分からんことがあったら俺かゼシアに聞け、いいな」
「はい、分かりました」
「今日のところは解散だ。カグラはゼシアと街でも見てきたらどうだ? 金は渡すから夕飯も食べてこい」
「はい、ありがとうございます」
「じゃ、行こっか」
ご主人様からお金をもらいゼシア様と街に出る。
初めて見たこの町は綺麗だった。領都ということもあって多くの人が行き交い、賑やかだった。
「じゃあまずはあそこに行こっか」
ゼシア様に連れられ様々な店や屋台を回った。
雑貨屋、武器屋、防具屋、魔道具屋、カフェなどなど。
今までの生活からは考えられないことばっかりだった。
一通り楽しんだあと僕はゼシア様に連れられ教会に来ていた。ゼシア様はここの教会で育ったという。
大きな扉を開ける。
領都の教会ということもあり十分に広く豪華だった。
祭壇まで歩く。
「せっかくだからお祈りしてこっか」
中央には女神のような大きな石像が立っていた。上に目を向けるとこれまた大きなステンドグラスが光を透過して石像が神々しく見える。
さぞ多くの人々から崇められているのだろう。
だけれど僕にとっては違う。前世も今世も理不尽な目に遭い、苦しんで苦しんで救済などない。この世界の人々を助けれるなら僕も助けてくれてもいいのではないか。
やっぱりこいつは邪神だ。
とりあえずゼシア様を真似て祈る。
(どうか僕を殺してください)
「カグラ君、もう夜ご飯食べに行こっか。オススメのお店知ってるよ」
「はい……ん?」
他の神官らしき女性がこちらをみてヒソヒソ話をしていた。
「ゼシアったら、子供たぶらかしてるよ」
「てか子供も白くない?」
「ゼシアの呪いがうつちゃったんじゃない?」
「可哀想ぉー」
僕にはしっかりと聞き取れていた。
「ゼシア様、あれって」
「あぁ、いつものことだから気にしなくていいよ」
教会を出る。
「アルビノってね珍しいから、一部の人は呪いだっていってるの。転生者が呪いじゃないって否定してるのにね」
「そうだったんですか」
「あっ、着いたよここで食べよっ」
夕食を食べるために訪れたのは『食事処 白石の庭』というお店だった。人気店なのか店内は多くの客で賑わっていた。
空いている席につきメニューを開く。
「カグラ君、せっかくだから好きなの選んでいいよ」
「僕はいいです」
「そんなこと言わずにさ、ほらいっぱいあるよ」
席につきゼシア様がメニューを見せてくる。
肉系のガッツリしたものから野菜系のもの、魚系のものと数多くの料理があった。
僕はシーザーサラダの小さいものを頼む。
「カグラ君、他には何食べる?」
「これだけでいいです」
「せっかく食べれるんだから……」
「これだけしか食べれないので」
前のご主人様の時のせいかほんの少ししか食べれないから仕方ないのだ。
ゼシア様はカツ丼を頼んでいた。
食事を終え僕たちは宿に戻る。
どうやら僕はゼシア様と同じ部屋で寝るらしい。
僕はいつものように床で眠りにつく。
翌日。
さっそく僕の冒険者登録を終えたご主人様達は昨日言っていた依頼を受ける。
僕は荷物――といっても魔法鞄があるのでその鞄と鞄に入らないものだけ――をもって僕にとっては初めての冒険に出発する。
数十分ほど歩いてレッサー・ウルフのいる森に着いた。
森は鬱蒼と生い茂っており薄暗い。獣道もあることだろう。
そんな森を進み少し広けた場所に着く。
「ッッ!?」
僕はバッと後ろを振り向く。
「カグラ君? どうしたの?」
「敵です。数は九匹、百メートル先です」
「本当に?」
「はい、鼻と耳はいいので」
「ほぉ、そりゃ便利だな」
「来ます」
僕がそう言ったと同時に九匹の狼が姿を現す。
「じゃあ行くぞっ!」
リーダーのオルヴ様は声をかけて狼に向けて掛けていく。
無事レッサーウルフの群れを討伐し終える。
長いことこのパーティーでやってきたのだろう、彼らの連携はさすがだった。
僕はここに来るまでの道中にゼシア様から魔法を教えてもらった。最初はもし暴走したらどうしよう、またあんなのが起こったらどうしよう、と不安になっていたがゼシア様が丁寧にゆっくりと教えてくれたおかげで、初歩を覚えることができた。
今使えるのは初級がやっと。だから今回の戦いは見学させてもらった。彼らも奴隷の僕に戦力として考えていなかっただろう。
とりあえず依頼は達成した。
だがついでに他の依頼も受けていたようでその目的地に向かう。
着いたのは洞穴だった。
どうやらゴブリンの群れが潜んでいるらしくその確認だ。もしいたら可能であれば討伐するというのも依頼に含まれている。
持ってきていた松明に火をつける。
「『火炎』」
覚えたばかりの魔法で松明に火がつく。
松明を持って暗い洞窟の中を進んでいく。
少しばかり歩くと一際広い空間で火を灯しているゴブリンたちがいた。
これでゴブリンがいることが確認されたので一応は依頼達成ということだが、せっかくだから討伐していくことになった。
ルーシャ様とゼシア様が魔法の詠唱を始める。
「『――聖なる光を今ここに』『聖なる槍』!」
「『――敵を吹き飛ばせ』『炎爆』!」
二つの魔法がゴブリンたちに命中する。
その魔法ですでに半数は死んだ。残りのゴブリンはアルヴ様とトール様が危なげなく討伐する。
「一応、奥まで行っか」
まだ洞窟は続いていたので先を進む。
暗く長い道を歩くこと二十分弱。
いきなり明るく開けた場所に出る。
そこは小さな村一つが入りそうな空間で植物も生い茂っている木すらも生えている。さらに四方は岩壁に囲われており天井にある大穴だけが外を覗くことができる。
神秘的な光景だった、ある一点を除けば。
それはそこはゴブリンの村が形成されており人間の死体が多く捨てられていた。中にはまだかすかに息をしている人もいるが生存は絶望的だ。
「なっ、なんでこんなにゴブリンが……」
「俺たちだけじゃ勝てねぇぞ」
「早く逃げて報告しましょっ。私たちだけじゃ手に負えないわっ」
百匹は優に超えているだろうゴブリン。しかもゴブリンジェネラルにゴブリンロードまでいる始末。
これは国軍を動かすべき緊急事態だ。
僕たちは踵を返し足早に逃げようとする。
しかし――
「――きゃっ。……ひっ」
ルーシャ様が足元に転がっていた人間の血に足を滑らせてしまう。
その音に気づきゴブリンたちが一斉にこちらを向く。
「ルーシャ様っ」
「ヤバいっ、お前ら、走るぞっ!」
「ルーシャがっ」
「置いてけっ。ちょっとは囮にできるだろっ!」
アルヴ様が仲間を見捨てるように支持する。
そしてアルヴ様は走って逃げようとするが時すでに遅く、背後にはすでにゴブリン達が回り込んでいた。
つまり僕たちはゴブリンに囲まれて絶体絶命の状態だ。
「グギャァッ!」
「『聖なる盾』! 『聖なる領域』!」
ゼシア様が即席の結界を二つ張る。
なんとかゴブリンの攻撃は防げているももって数分だろう。
「私たちはここで死ぬの? ごめんなさいっ、私のせいでっ……」
「くそっ、お前のせいだぞっ! どうしてくれんだっ!」
「きゃっ」
アルヴ様がルーシャ様を殴り飛ばす。
アルヴ様が怒るのも分かる……だがなにも殴る必要はないだろう。他の人も少し引いている。
「くそっ、どうすれば……」
「……ご主人様、僕がやります」
「なに?」
「僕には『獣化』も『守護』も『自動再生』も魔法もあります。半分は殺せるでしょうから、その間に逃げてください」
「カグラ君っ、それって君がっ……」
「僕は奴隷です。ご主人様を守るのが奴隷の務めです」
「できるんだな?」
僕はコクッと頷く。
「そうか、ならさっさとやれ」
僕はゴブリン達と向き合いスキルを発動する。初めてだがどうすればいいのか頭に流れ込んでくる。
「『それは盾 悪しきものから守るものなり それは剣 悪しきものを振り払うものなり 我は守るべき者をもって悪しき者より守護する』 『守護』発動」
スキル『守護』を発動する。
守る人がいなければ発動しないが今はご主人様達がいる。
「『本能を解き放て 牙を出せ 爪を出せ 獣のままに暴れまわれ』 『獣化』」
スキル『獣化』を発動する。
その名の通り人間に近かった容姿から獣のような容姿になる。白い毛は逆立ち、爪も伸び野生の猫のような感じだ。
さらに本能のままに活動するため、今まで以上に魔力が高まり、炎が薄っすらとこの身を纏う。
赤白い毛が逆立ち、身を低くして相手を威嚇する。
そして僕は、消えた。いや消えたかと思うぐらい速く走っただけだ。その勢いで炎の爪でゴブリン達を切り捨てていく。
蹂躙――そう呼ぶのが正しいだろう。それほどまでに僕は圧倒的だった。
ゴブリンを焼いて切り裂いて、瞬く間にその数を減らしていく。
半分ほど数が減ったところでゴブリンジェネラルと対峙する。
「シャアァァァァァァッッ!」
「グアアァァァッッ!」
僕は火力にものを言わせゴブリンジェネラルを灰に変える。ついでにその余波で近くにいたゴブリンも消し炭になる。
高火力の魔法を使ったためか足元がふらつく。
「ガッ――――ッッ!?」
油断した隙にゴブリンロードに横から強い衝撃を受ける。
僕は壁際まで吹き飛ぶ。
なんとか立ち上がろうとするもかなり苦しい。肋骨が折れているかもしれない。でも『自動再生』ですぐさま治っていく。
僕はまた走り出しロードに攻撃を加えていく。
ロードは僕の倍以上の体格だ。それでも僕は体の小ささを生かして俊敏に動き回り、ロードに小さな傷をつけていく。次第に出血多量で倒れるだろう。
ロードが腕を振る。
「カグラ君っ」
ああ、腕が切れたのか。
左腕をロードに持っていかれた。でも大して痛くはなくロードが油断している隙を狙う。
「グギャァァァァァァァァァッッッァァアアアッッッ!!」
ロードの腕を奪う。
そしてそのまま、ロードの首を掻き切る。
ゴブリン達にとって僕は死神に見えたのだろう。
ロードを失ったゴブリン達は我先にと出口へと逃げ込む。
だが僕が一匹残らず殺し尽くす。
僕はそのままフラフラな足取りで虫の息の生き残りの女性達の元へ向かう。
そして僕は女性に手をかざし、炎で包んだ。
燃えているわけではない。
これは炎属性魔法の『炎癒』。炎で体を包み傷を癒す魔法だ。スキル『守護』を発動した時に頭に流れ込んできた魔法だ。
炎が収まるとそこには無傷の女性が規則的に呼吸をして眠っていた。
その調子で残りの女性も癒していく。
治癒が終わるとスキルが消え、僕はその場に倒れ込む。
かなり無理をしたため体が悲鳴を上げている。それでも『自動再生』で治るのだから恐ろしいものである。
僕は静かに闇に意識を落としていく。
◇◇◇
目を覚ます。
「あっ、カグラ君っ」
ゼシア様が抱きついてくる。よほど心配していたらしい。
ゼシア様から聞いたが僕が倒れた後、捕らえられていた女性たちを連れてギルドに戻った。そして多くの冒険者たちでその場に向かい、死体の片付けをしたそうだ。
ゴブリン百二十一匹、ゴブリンジェネラル二匹、ゴブリンロード一匹。
それほどの数が絶命しており、一部灰になり判別の難しいものがあったそうなので、これよりももう少し多いらしい。
たった一人でこの数を倒せるのはAランク冒険者でもかなり難しいらしい。だから最初のうちは信じられていなかったが、残留魔力の検証や死体の検証により僕一人による討伐と認められとりあえずCランクにまでランクが上げられた。
そして討伐報酬はたくさんもらったが全部ご主人様に渡した。奴隷のものは主人のものなのだから当たり前だ。
「カグラ君、痛むところとかない?」
「大丈夫です。もうほとんど治ってますので」
「そう……これからはあんな無茶しないでね?」
「……はい、ごめんなさい」
「分かったならよし。あと、ありがと助けてくれて」
こうして僕は無事にご主人様を守り切り僕にとっては最初の依頼を終えたのだった。
◇◇◇(アルヴ視点)
「くそっ!」
俺は酒場で一人焼け酒をしていた。
というのも原因はあいつだ。奴隷のくせに調子に乗りやがって。
あの一件以降、カグラの評判はうなぎ上りだが一方俺の評価は落ちてきている。
俺が仲間を囮にするよう指示したことがバレ、周りから悪い評判が立つようになった。
やれ仲間を見捨てようとした最低なやつだの、やれすぐに怒鳴り散らすやつだの、事実から根の葉もないことまで噂されている。
今だって近くからヒソヒソと僅かに声がする。
内緒話が全部、俺への悪口だと思うようになってきた。
俺はカグラへの怒りを募らせ酒を飲み荒らすのだった。
読んでいただきありがとうございます。
次話はおそらく今週中に投稿できるかと思います。
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