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獣人転生〜忌子の僕は奴隷になる〜  作者: 和泉秋水
2章1節 カグラの初めての奴隷生活
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1話 偽りの安堵

遅くなってすみません。

 村を出てから早十日。

 僕は商人に連れられラージュ樹海を抜け、シュワルゲン王国ドステルト領領都ボードに来ていた。

 商館はここにあるそうだ。


 初めてラージュ樹海を出てはしゃぐところなのだが僕はただ静かに馬車の中で待っていた。商人や護衛の冒険者から話しかけられることはあったが、僕は「はい」や「いいえ」と答えるだけ。

 それからは僕に話しかけず悲しみの目で見ていた。


 商館は多くの人で賑わっており、生活用品から冒険者用品まで幅広い商品を扱っていた。

 そして奴隷を扱っているのは、別館。ここは人は少ないものの、たまに見る人は裕福な生活をしていることが一目瞭然だった。


 僕はそのまま地下に行き、牢屋の前に立たされる。


「カグラ、本当にいいのか? 今ならまだ間に合う。私の助手にはならないのか?」


 ここに来るまでの道中、彼はずっとそんなことを言っていた。

 僕を心配してのことだろう。でも僕の答えは決まっている。


「僕は、奴隷として死にます。その方がみんなのためですから」

「カグラッ……」


 彼はまるで我が子を仕方なく手放すような顔で、牢の鍵を閉める。

 僕は檻越しに彼の辛そうな背中を見て、彼は消えていった。



 ◇◇◇



 牢屋に入れられてどれくらいの日が経っただろうか。日の光がないため全くわからない。


 突然、男に声をかけられる。


「出ろ。ドステルト様がいらっしゃった」


 どうやら、僕はもう売られるらしい。

 しかし、ドステルトが僕を買わなければまた牢屋に戻ってくる。


 男の跡を足枷をジャラジャラと音を立てながら追って、2階に上がりとある部屋に入る。

 中にいたのはあの商人と一人の貴族らしき男と男の従者らしき人。

 貴族らしき男は、優しそうな笑顔をしているが腹黒らしい。


「ほう、この子がですか」

「はい、お客様のご要望にぴったりかと」


 男は僕を隅から隅までくまなく見定める。


「ではこの子を買うことにしましょう」

「そうですか。ではこちらの契約書にサインを」


 僕はこの男に買われた。

 何をされるかは分からない。話を聞く限りでは屋敷の使用人にする、という話だが……まあ僕はどう使われようと構わない。


 サインが書き終わったようで男は立ち上がり、僕と向き合う。


「初めまして、カグラ君。私はアイザック・フォン・ドステルト。君の新しい主人だ。君は私の屋敷で使用人として働いてもらう。最初は大変だろうが頑張ってくれ」

「はい、ご主人様」

「では行こうか」


 僕はご主人様の跡をついていき、その後を従者がついてくる。

 部屋から出る前に僕は立ち止まり。商人に最後の挨拶をする。


「商人様、今までありがとうございました」


 一礼をしてご主人様の後をついていく。


 商人は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。



 ◇◇◇



 馬車に揺られること十数分。大きな屋敷に着く。

 整えられた庭を眺めつつ、屋敷の中に入っていく。


「「「「おかえりなさませ、ドステルト様」」」」

「ああ、ただいま。紹介しようこの子が新しい使用人カグラ君だ。仲良くしてやってくれ。今日は歓迎パーティーとしようか」

「「「「はい、かしこまりました」」」」


 ここは本当にやばいかもしれない。使用人たちの目が死んでいた。ここは何かがある。


「カグラ君は、数日は仕事はしなくていい。まずはここに慣れてくれ」

「はい、分かりました」


 僕はただ奴隷として主人に従うのみ。



 初日の歓迎パーティーは楽しかった。

 見たこともない異世界の料理に舌鼓を打った。特にスイーツが美味しかった。プロが作るスイーツはとても甘く、いろいろな食感も味わって舌が忙しかった。


 主人と一緒に食べることはどうかと思い、最初は遠慮していたのだがご主人様に言われ、みんなと一緒に楽しんだ。


 それからの数日間は、最初の日ほどではないが豪華な料理が続いた。これは貴族だからだろう。


 この数日間は、ご主人様は優しく接してくれた。分からないことがあれば使用人たちが優しく教えてくれるし、1日に一回は僕に話しかけている。


 この人は噂と違いいい人なのかもしれない。


 僕は人の優しさというものを久しぶりに感じた。前世、よくいじめられていたせいで人の優しさに触れる機会が少なかった。

 だから、僕はこの状況に甘えるようになった。とても幸せで楽しい日々。


 塞ぎ込んでいた僕は、徐々に心を許していった。


 ◇◇◇


 気がつけば僕は、手足と首を鎖に繋がれて薄暗い部屋の中にいた。


 何をしていたか思い出す。

 確か、いつも通り朝ごはんを食べていた時だ。僕は急に眠くなり今に至る。

 意味が分からなかった。


 ガチャという音がして音がした方を見るとそこには、


「おや起きたようだね。今までの生活は楽しかったかい? 心を許すようにするのは意外と時間がかかったよ」


 ご主人様は何を言っているのだろう。


「今日から君は働いてもらう。まあ働くと言っても何もしなくていい。君の仕事は――」


 ご主人様は壁に立てかけてあった剣を手に取り僕に近づく。


「――痛みにもがいていればいいだけの簡単な仕事、さっ」

「えっ?」


 鎖に繋がれていたはずの左腕の感覚がない。左腕の方を見てみれば、左腕が半分切られていた。


「ぐっ、あああぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁああっっっっっ!!!???」


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 焼けるような痛みが僕を襲う。


「あぁ、その声その顔だっ。素晴らしいっ」


 左足を切断される。

 僕はまた痛みで叫ぶ。もがくも鎖が動きを制限する。


 数分の間、痛みでもがき苦しみ、まだ痛みは残っているが息を落ちつかせる。

 顔を上げご主人様を見る。


「あぁ、その顔いいねぇ。その絶望して恐怖に塗り染められた顔。実に美しい!」

「ふっー、ふっー、ふっー」

「前に使っていた道具が壊れてなぁ、君を初めて見たときはビビッときたよ。その可愛い顔を恐怖で染めたいって。それに商人から聞いたが、どうやら『自動再生』とかいうスキルがあるらしいじゃないか。それならいくら傷つけてもやり過ぎなければ、いくらでも使えるじゃないかって思ったのだよ」


 ご主人様は剣を振り上げる。


「君ほどの適任は中々いないよっ!」


 右腕を切られる。


「がああぁぁっぁぁっぁぁっぁあぁあっぁぁっぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁああぁぁぁぁぁ!!!」


 また焼けるような痛み。


「よしついでに右足も切ってしまおう」

「あぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁっぁぁっぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああぁぁ!!!」


 また剣が振り下ろされる。


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


 四肢が切断され首に繋がれた鎖が、体を吊す。鎖が首を圧迫して苦しい。首吊りのような状況だ。


 ご主人様は剣を側に置き、僕のお腹を殴る。

 数回ほどサンドバックのように扱われ、僕がピクとも動かなくなると首の鎖を外され地面に落ちる。


「じゃあ、また明後日以降に来るよ」


 牢屋の前にいたらしい使用人に後片付けを任せご主人様は消える。

 使用人は何も言わずに後片付けを始める。何の感情もない機械のように淡々と。


 僕が幸せと感じていた日々は、どうやら偽りの日々だったらしい。

 僕は痛みの中、意識を失う。

読んでいただきありがとうございます。

ぜひ、ポイン――

「しなくてもいいよ。どうせポイントとかブックマークがついたって僕は死ぬんだから。あったところで僕の人生は変わらないよ」

 カグラがこんなこと言ってますがポイント評価、ブックマークお願いします。


 次話は明日投稿予定です。

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