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獣人転生〜忌子の僕は奴隷になる〜  作者: 和泉秋水
1章2節 紫苑の転生と成長
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なろう限定閑話 魔物の蹂躙

 これは学校生活を送っていたある日のこと。


 ここ最近天気も良く、授業中に居眠りをする人が自然と多く、先生の怒声が聞こえる。

 シオンもまたその一 人だった。が、叱られはしない。なぜなら毎回テストで満点をとるからだ。それなら放っておいてもいいだろう、ということで適度に当てつつ放置という形になった。


 シオンは窓際の席で気持ちの良い日を浴び、睡魔を快く受け入れようとした、その時――


『災害警報! 災害警報! ただ今、魔物の大群がこの街に押し寄せています。領民の方は直ちに避難してください。冒険者の方は、北門に集まってください。繰り返します、――』


 ――サイレンが鳴り響いた。


 魔物の大群が押し寄せることはそれほど珍しいことではなく、数年に一度はある。なので冒険者たちも「また来たか」と余裕を持っている。


 押し寄せるのはせいぜいC級、高くてもB級の魔物ばかりでほとんどはD級だ。つまり、それほど危険を犯さずに大量に稼げるのだ。冒険者にとっては祭りとなっている。


 いきなりの警報に生徒たちは騒がしくなる。


「みんな、一度落ち着け! 放送の指示があるまで待機だ!」


 教師がその場を静める。

 私は睡魔を受け入れる。


「おい、シオン!? お前この状況でも寝れるのか!? さすがと言いたいところだが、今は起きてような!?」


 教師がツッコミをいれる。さすがにこの状況で寝てはダメか。


『生徒の皆さんは訓練通り、第七避難所へ避難してください。またシオン・ヴァーゲルさんは理事長室に来てください』


 おそらく冒険者と一緒に魔物を倒してこいとでも言いそうだ。

 そう思いつつ理事長室に向かう。


「どうか、冒険者たちと魔物を討伐してくれないか?」


 入って早々言われた。

 理事長には常日頃世話になっているのもあるが、実戦訓練に最適なので了承する。


「おお! 本当か!? ありがとう。さすがに生徒一人を行かせるのは問題だからな、私がついていこう」


 おっさんがいても邪魔だと思うが……


「何心配はない。若い頃はA級冒険者をしていたからな、まだ力は衰えちゃいないさ」

「まあそれなら問題ないですが。では早速行きましょうか」

「ちょっと待った俺たち三人もついて――」

「いりません」

「即答!? ひどくないか!?」

「あたしたちも十分戦えるわよ!」


 理事長に判断を仰ぐ。


「まあいいんじゃないか」


 理事長がそんなに軽くて良いのだろうか。



 北門についた。

 そこは既に多くの冒険者が集まり、武器の確認などして待機していた。


『あとおよそ三十分です!』


 門の上から見張っている兵がスピーカーで伝える。


 こう見てみると、避難の早さも対応も早いのは転生者のおかげだと改めて実感する。


 私たちは、理事長と共にその場の指揮をする本部に向かった。


「おお、そいつがいろいろとヤバい生徒か。初めましてだな。俺はレオ・グランド、A級冒険者で転生者だ、よろしくな」

「シオン・ヴァーゲルです、こちらこそよろしくお願いします」


 軽く自己紹介をすませ説明を受ける。説明と言っても、油断はするなだとか出来るだけ援護に回れだとか、注意のようなものだった。


 そうこうしているうちに、魔物がやってきた。


『魔物の大群が見えてきました! 数はおよそ八千!』


 その声を聞いた冒険者たちはそれぞれの武器を持ち、身構える。


「俺たちもいくぞ」


 理事長と三人衆と後方で待機する。

 討ち漏らした魔物を討伐するという

簡単なものだった。


 しかし、運命とはいつでも裏切ってくる。



 ◇◇◇



 魔物の群れが地上から肉眼で視認できるようになった距離に来て、冒険者たちに緊張が走る。


「なんでいんだよ、『嵐狼(テンペストウルフ)』!」

「おいあんな化け物がいるなんて聞いてねえぞ!」


 『嵐狼(テンペストウルフ)

 五メートルほどの体長の巨体で、風魔法を操るため実に素早い。しかも数秒だが飛ぶこともできる。


 A級の魔物だがS級に格上げされるのも時間の問題、といわれるほどの絶対強者。S級に対抗できるのはS級冒険者か二十人のA級冒険者だ。


 しかし、S級冒険者なぞ世界を見ても指で数えれるほど。この場にいるはずがない。

 そしてA級冒険者は八人はいるものの二十人もいない。勝利は絶望的だ。


 しかしそれはこの場に私がいなかったらの話。


「シオン様、出番だぜ!」

「シオン様がいるから勝てるわよね」


 二人は私をみる。


「えっ、シオン、様?」


 私は震えてた。


「ま、まさか強者にしかわからない何かが……」

「あなたたちには分からないの?」

「やっぱり何かが……」

「あれ、獣よ!」

「「「「…………え?」」」」


 理事長と三人衆は非常に間抜けな顔をしていた。


「私この世で一番嫌いなのは獣なの。見ただけで吐き気が……うっ」

「まさかの弱点……」

「あなたたち早く倒してきて」

「俺たちに死ねと!?」

「死になさい!」

「嘘だろ!?」

「この場で倒せるのシオン様しかいないの!」


 この会話を聞いていたらしい冒険者たちは、化け物を倒せるかもしれない私を見つめる。


「グランドさん、報酬は十倍以上でお願いします」

「おう、十倍でも二十倍でも構わん。最後の希望はお前だけだ、頼む」


 私は一歩を踏み出す。

 冒険者たちは歩いてくる私を避けるように二つに分かれる。


「運命とは非常に残酷なものだ。獣嫌いの私に獣と戦わせるとは」


 『嵐狼(テンペストウルフ)』は、前に出てきた私を獲物と定め、戦闘準備に入る。


「でもこれが兄さんと再会するための試験ならば、私は超えて見せよう」


 刹那、シオンと『嵐狼(テンペストウルフ)』の姿が消える。否、目に映らないほどの速さで走りだした。

 シオンは身体強化スキルや雷魔法を使って、『嵐狼(テンペストウルフ)』は風魔法を使って。


 冒険者たちはただ見ていた。見ていることしかできなかった。

 あっちに現れたと思えば、そっちに現れ、また消えたと思えばあっちに。

 あっち、そっち、あっち、あっち、そっちじゃなくてあっち、あっち、そっち、あっち、どっち?


 シオンは日課としてスキルや魔法を使って領都を囲む壁の上を一周、ランニングをしている。そのおかげで速いスピードに目も慣れ、今では超高速での戦闘が可能となっていた。


 その速さはA級冒険者をも驚愕させるものだった。


(前に一度『嵐狼(テンペストウルフ)』と戦ったことはあるが、あれは俺で遊んでいたのかっ)


 『嵐狼(テンペストウルフ)』に遊ばれていたことに歯噛みし、理事長はシオンに少し嫉妬していた。


 そこまでに素晴らしい戦いだ。


 『嵐狼(テンペストウルフ)』は鋭い爪で斬りかかるもシオンはそれを身を翻してかわし、シオンは風魔法を付与した剣で斬りかかるも『嵐狼(テンペストウルフ)』はそれをジャンプしてかわす。


 これはチャンスとばかりに、雷魔法を放つ。しかしこれは『嵐狼(テンペストウルフ)』が口から放った風魔法によって相殺される。


 シオンは授業中ただ寝ていたわけではない。魔力操作の反復練習をして高速で魔法が放てるように密かに特訓していたのだ。


 そんなシオンでも一歩間違えたら死ぬかもしれない戦闘では真面目に集中していた。


「ワンッッ!」


 他の魔物に気を割かれる。その一瞬が命取り。


(しまっ――ッッ!?)


 硬く太い尾でなぎ飛ばされる。

 十数メートルほど飛ばされ、雑魚の群れに落ちる。


 雑魚とは言っても今の状態からすれば厄介極まりない。

 喰いかかってきた雑魚に対して、


「『氷牢(アイス・ジエイル)』」


 周囲五メートルほどが氷の牢獄に閉ざされる。続けて『嵐狼(テンペストウルフ)』に向けて、


「『雷砲(サンダー・キャノン)』」


 上級魔法は『嵐狼(テンペストウルフ)』に向けて一直線に進んでいき、油断していたからか直撃する。それなりのダメージが入ったはずだが倒れぬように踏ん張っている。

 私は痛みを我慢しつつポーションをかけてからゆっくり立ち上がる。


 また高速で接近し蹴りをいれると同時に尾でまた吹き飛ばされるも、うまく受け身をとる。すぐ後ろには冒険者たちがいた。このままだと魔法に巻き込まれない。

 『嵐狼(テンペストウルフ)』も蹴り飛ばされており距離が離れていた。


 『嵐狼(テンペストウルフ)』が口に魔力を溜める。おそらくこの一撃で終わるだろう。

 私も今だせる最高の威力の魔法をもって終わらせる。


 私は四つ――雷、氷、水、風魔法のそれぞれ――の基礎魔法陣と八つの補足魔法陣を宙に描く。


「我守るべきものは故郷と友――」


 私は守るべき人たちのために――


「災いをもたらす者来たる時――」


 どんな敵が立ち向かっても――


「我は力と愛で敵に強者を示唆し――」


 圧倒的な力と兄さんの愛で敵に強者とはなんたるかを教え――


「我が魔法は我が敵を全て殲滅す」


 私の攻撃は一切合切を蹂躙する


 詠唱が終わり、相手が魔法を放つと同時に――


「ワオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッッ!!」

「『(グレイテスト・)(テンペスト)』!!」


 力と力の奔流が激突する。

 大地にヒビが入り、次第に大地がめくれる。爆音ととてつもない衝撃波が走り雑魚を吹き飛ばし領都を守る壁も崩れる。


 最初は均衡していたものの徐々に私の魔法が押していき、『嵐狼(テンペストウルフ)』だけでなく残りの雑魚も巻き込んで、消しとばした。


 扇状に削れた大地は魔法の壮絶さを図っていた。


 残るは雑魚が数十匹だったが冒険者たちに任せるとしよう。


「後は、頼みますよ」


 私は魔力切れと獣の吐き気で意識を失う。


 『嵐狼(テンペストウルフ)』が死に際、『見事だ』と言っていたのは気のせいだろうか。



 ◇◇◇



 後日、私は街を救った英雄として一躍有名になった。


 そして、戦闘での魔法や体術、剣術の改善の余地があったため、今まで以上に訓練時間を増やした。


 全ては、兄さんのために。

読んでいただきありがとうございます。

ぜひポイント評価やブックマークよろしくお願いします。


次はキャラ紹介や世界紹介をして、1章を終わろうかと思います。2章からは本格的にやっていきますよぉ。

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