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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

七福姫 ~大黒姫になったのじゃ~

作者: ツテ猫


「ぼくと契約して、魔法少女になってよ。」


「え? いやだよ。」




僕はクラスで一番 背が低い。


だって仕方しかたがないじゃないか、遅生おそうまれだもの。


そのせいではないかもだけど、クラスで一番 足が遅い。


おまけに勉強もできない。


あ、違うよ、ビリではないよ。


え?  背と関係ない?  バレた。


容姿も普通だと思う。


これといって、特技もない。


普通、ここまで揃うとイジメられると思うんだけど、なぜか女子にかわいがられて、守られている。


この時期の女子は、男子よりも強い。


男子にとっては恐怖の対象である。  誰も逆らえない。


逆らったら最後、全女子から攻撃の的となる。  恐ろしい。  特に言葉攻撃。


たぶん女子は口から生まれてきたに違いない。  ハウ アバウト スーパーマウス。


そんな女子から僕はマスコットにされている。


男子からはかわいそうなものを見る目で見られる。  人柱なのだ。 いけにえなのだ。


当然自分も不本意である。


ゴリラにかわいがられる人間の赤ちゃんのようだ。


うわ、なにをする、やめろ。


そんな日常を送っていた僕に、非日常が訪れた。




とある日曜日の朝 起きると、目の前に船がいた。


船?  船だよな。  船以外に呼び方を知らない。


木でできた舟形?  上には布で出来た帆?


帆?には、なにか漢字が書いてあるが、まだ習っていないので読めない。


全長30cmくらいの、誰も乗れないような、小さな船が、宙に浮いていた。


すげえ。  浮いてる。  イリュージョン。


思わず手を伸ばすと、逃げられた。  え、さわりたい。


『ねえ、ねえ。』


しゃべった!?


『ねえ、ぼくと契約して、魔法少女になってよ。』


「えっ!? いやだよ。」


ここで最初のシーンに戻る。




「そもそも 少女 じゃないよ。 男の子だよ、僕。」


『いいから。』


「よくないよ。」


『はい、☆変身☆~。』


「軽っ!」


キラキラした星に囲まれて、不思議な和服のような洋服を着た魔法少女に ☆変身☆ した。


右手にトンカチのようなものを持っている。


左手は、パペット?  かわいい白ヘビが、パクパクしてる。


『君は今日から 大黒姫 ね。』


だいこくひめ?


『じゃ、そういうことで。』


待って待って。 このまま行かれたら困る。 戻して、元に戻して。


『大丈夫。 元に戻りたいと強く願えば、元に戻れる。(かもしれない)』


(かもしれない)って、なんだ?


『じゃあと 六姫 あるんで、バハハ~イ。』


こら~!


船は窓から飛んでどこかへ行ってしまった。  どうしよう、これ?


このままじゃ学校へ行けない。  日曜日で良かったよ。


そんなことよりも さっきから 気になっていることがある。


せっかく ☆変身☆ したのに、どうして背が伸びていないのか。


小さいままやん!  意味ないやん!


くそーっ。  


怒っていても腹は減る。


諦めて 降りて朝ごはんを食べよう。


「おはようなのじゃ。」


なんだ、いまの。


僕の口から出たような。


「おはよう。」  「おはよう。」


あれ?  スルーですか?  知らない子が降りてきて、変なことを言ったのに、スルーですか?


子供に無関心?  精神的 育児放棄ネグレクト


いやいや、これはあまりにも不自然だ。  きっとあれだ。  魔法的な なにかだ。


パンを食べれないので手を離すと、トンカチは空中で留まった。  動くと勝手についてくる。


左手はパペットだけど、ないときと同じように使える。  不思議だ。


「ごちそうさまなのじゃ。」


さあ、外に出て確認しよう。


しばらく町を歩くが、やっぱり誰にも注目されない。


世界は改変した。


とまでは言わないけど、なにか変わった(はずだ)。


なにせ魔法少女が現れたくらいだ。


きっと巨大な敵に世界は侵略されているんだ。


・・・スーパー戦隊のほうが良かったな。


なんだよ、魔法少女って。


今の時代、それはプリ〇ュアって呼ぶんだよ?


「もし、そこのあなた。」


おおっ?


「もしかしたら、あなたも 姫 にされてしまったのですか?」


そこには天使がいた。


きれいなお姉さん。 目は大きく切れ長で、顔が小さく、長い黒髪。


自分と同じ、和服のような洋服を着ている。 ミニスカートの下に長い足がすらりと伸びている。


なぜか赤いお魚が右に飛んでいて、背中に釣り竿が浮かんでいるけど、そんなことは気にならない。


ドキドキが止まらない。  ひと目で、恋に落ちた。  初恋だ。


「はいなのじゃ。」


「ねえ、あなた、どうしたらもとに戻るのか、なにか聞いていませんか?」


鈴を転がしたような声。  思わず聞きほれてしまう。


「えっと、元に戻りたいと、強く願えば戻れるかも、と言ってたのじゃ。」


「そうですか。 どうもありがとう。 それではやってみます。」


にっこり微笑まれた僕は、天にも昇る気持ちになった。


お姉さんは 目を閉じ 手を胸に組んで、祈るようにつぶやいた。


「元に戻して。 元に戻して。 元に戻して・・・」


かわいくて見ほれてしまう。


何度かつぶやいたお姉さんは、光に包まれた。


と、その光は星の形になって辺りに飛び散った。


そこには、髪が限りなく薄い、めっちゃ太ったオジサンがいた。


「じ、じまった。 動画撮っておくんだった。 ぐししし。」


あ、ああ・・・


声にならない悲鳴をあげる僕。


かくして僕の初恋は無残にも踏みにじられ、心に深い傷を負ったのだった。




終わり


大黒姫

挿絵(By みてみん)


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