アリス編3
「アリス。……その、久し振りだな」
「ええ、カイン様。お久し振りです」
自室に軟禁されているカイン様に会いたいと要求した数日後。見張りは付いているものの、私は無事にカイン様と面会をすることが許された。
「すまなかった」
そして挨拶もそこそこに、何から話そうかと思考を整理していたとき、目の前を金色の髪が遮る。
「あの日、君の意見も聞かずに勝手にローゼと婚約を破棄するなどと言って君を困らせ、君がそんなことするはずもないのにローゼに毒を持ったと主張する君を助けることもなく自分の保身に走ったこと。本当に、申し訳なかった」
こちらを一切見上げることなく、ただ後悔の滲む声音で告げられる謝罪。
正直、それに関しては諦めていた。きっともうカイン様はわたしのことなんかどうでも良くって、今回こうして面会を許可してくださったのも陛下から一言あったからだろうと。
「……寂しかった、ですよ」
「すまない」
だから、心してなかった突然の謝罪に存外揺れて、わたしの口は彼を罵るよりも先に、そんな言葉を紡いでいた。
「わたしにローゼマリン様毒殺の罪を着せたのはルノーウィル様ですけど、それを一切カイン様は庇ってくれなかった。……わたしは、カイン様は関係ないって、言ったのに」
「すまなかった」
謝罪を続けるカイン様を見下ろして、何を言っているのだろうかと自分でも思う。
カイン様が関係ないのは事実。でも、自分がやったとは話していないのにそれをでっち上げられたとき、カイン様はわたしを庇ってはくれなかった。
わたしはカイン様を思って関係ないと言ったのに、などそんな一方的な感情を押し付けるなんて、カイン様がわたしを庇ってくれなかったことが寂しかったなんて、今言ったって仕方がないというのに。
「……知ってます。大方、ルノーウィル王子が自分に都合の良いようにカイン様にお伝えしたのでしょう。あのときもそう。魔術、魔法の使用が禁じられているこの城内でそれらの類を使えるように地下の祭壇で書き換えられたのは、そんなことをしてメリットがあったのはルノーウィル王子だけ。軟禁中のカイン様が新たな醜聞を得るように仕組んで、自分はそれを止めて株を上げるなんてこと、あのひとが考えそうなことだもの」
萎れた花のように項垂れるカイン様が見ていられなくて、推測の範囲でしかないそれを伝えれば彼の肩がぴくりと跳ねた。
「ルノーは……本当に、私が邪魔だったんだな」
噛み締めるようにそう呟かれる言葉。
今告げたことは推測の範囲でしかないけれど、カイン様が呟くそれは否定出来ないから、わたしも俯く。
「……すまない、もう過ぎたことだな。それでアリス、話があるとは?」
そんなわたしを察してか、また口にした謝罪の後にカイン様が顔を上げてこの話を流す。
「はい。正式にローゼマリン様と婚約を破棄し、わたしと婚約してください」
「……え?」
だからわたしも先程までのことは忘れ、本来の用件を口にした。




