アリス編2
「セルター、様が……」
「はい。同じく全てを画策されたルノーウィル殿下含め、お二人はそういった刑に処されます」
このお城に来てから、ずっとわたしのお世話をしてくれる年配のメイドはそう淡々と説明してくれる。
「ローゼマリン様の弟君であるシリウス様は勅令に反そうとしましたが直接的に何かしらのことを行った訳ではないと慈悲を受け、ヴェスター公爵家から追放処分とのことです。
そしてセルター様、シリウス様と行動を共にし、カイン王太子や聖女アリスの評判を貶める噂を流していたとされるジルベルト王子に関しましてはこちらで対処出来るものではないので隣国へ強制送還し、処分を委ねると」
「そう、ですか……ありがとうございます」
もういい、と耳を塞ぎたくなるような報せを報告してくれた彼女を下げて、わたしはぼうっとそのまま窓際から空を見上げた。
何故だろうと、思う。
カイン様の心が欲しいからと、カイン様のお傍にいたいからとルノーウィル王子の誘いに乗ったわたしには免罪符があるのに、他の皆に存在しないのは。
「……わかってる。わたしが、聖女だからだよね」
そんな問い、子供でさえわかる程に明確な理由を既に自分は持っている。
胸に刻まれる聖痕は、|こんなは些細なことでは揺るがない。それくらいこの力は有用で、価値があるからこそわたはに免罪符を与えられただけで。
「……聖女、か」
そう吐き出した言葉は、どれくらいの利用価値があるだろう。
知ってる上ではルノーウィル王子と共謀した罪は隠せてしまうくらいだろうか。
「……」
隠せてしまう。
そう嘲笑った思考にふと引っ掛かりを覚える。
もし自分がこの聖女という立場を使ったら、どれくらいの罪を隠せるのだろうと。
「いけ……い……け……る?」
足りない頭で必死に考える。可能な限り、ローゼマリン様が悲しまない方法を。
「……すみません」
「はい、聖女様」
用があるときは呼び鈴を鳴らして欲しいと、そう初日に告げられたものの扉を開ければ人がいるんだからという思考でわたしは部屋の扉を開け、廊下に立つメイドさんに話し掛ける。
「カイン様に会えませんか?」
そうして、唯一の救いを求めて現在自室に軟禁中であるらしいカイン様と話せないか、そう尋ねるのだった。




