贖罪と免罪
「ごめんなさい」
アリス様の肩が震えて声は湿り気を帯びる。私はそんなアリス様の肩を抱き、次を待つ。
「ローゼマリン様は悪くない。ローゼマリン様に罪なんてない。…………でも、わたしには、ある。あんなに偉そうにローゼマリン様に言った、くせに」
ぱたぱた大粒が染みになる。でもそんなことさえも気にしない程、アリス様は自分を責めていた。
「延命することしか、遅らせることしか、出来なかった。ミヤさんが一度受け入れてしまったその呪いの塊は、誰かを喰って壊して殺すための、ものだったから。……気付かなかった。わたしが呪いを解くだろうという行動に掛けていた殿下の保険に、気付けなかった。即死の効果を発揮したその呪いの効果を聖女の力で打ち消すことは出来ても、呪いそのものを解くことは出来なかった。ミヤさんが耐えうる限りの、延命、にしか、」
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
アリス様はただそうやって先程の私のように、免罪を乞う。
「アリス様」
一度身体を離し、やけに静かな声で名前を呼んだからか、アリス様の肩が跳ねた。
「ミヤは、後悔してましたか?」
「…………え、?」
予想とは違う方向性の質問だったのか、アリス様は潤んだ目でこちらを見上げる。
聞きたかった。もう息も絶え絶えな彼女の言葉ではない、誰かの声で。
「…………して、ました。とても」
その目はそっと伏せられた。そしてその光景を思い出してくれたのか、沈痛な面持ちでアリス様は彼女の最期を、語ってくれる。
「ごめんなさいと、何度も。こんなつもりではなかったのだと、何度も、何度も、何度も。ずっと。」
淡々と、私の知らないミヤの最期が語られていく。
息も霞み、声が消えても、ずっとただその言葉だけを紡いでいたと。
「後は……ローゼマリン様も、知る通り」
命消えるまで、後悔していた、と。アリス様は言い切った。
そんなアリス様の顔はやっぱり自責の念に駆られた暗い表情。私は先程やられたことを、そのままアリス様に返す。
「じゃあアリス様を庇ったことが彼女の贖罪だった」
むに、と頬を挟み、濡れる赤い目を見据え、私なりの免罪の言葉を吐き出す。
「後悔していたから。だから、それを贖おうとした。それだけ、ですよ。悪いのはルノーウィル王子。庇ったのはミヤの意思。アリス様は、悪くない」




