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捜索隊3

「先に行きますね」

「ええ」


 パルスが先行して中へ入る。思いの外深く、パルスの手を借りながらでないと下りられない。


 なんとか地下の床へと足を付け、ランタンを腰に下げていたパルスが先を歩く。


 人が普通に通れる程の高さと幅。こつこつと思いの外響く音。


 何処まで歩けばアリス様に会えるかと、思っていた頃。


「お嬢様」


 前を歩くパルスが止まる。彼が指差した先には、しょっぱい木の扉があった。


「外鍵で、内側からは開かない仕組みですね」


 鍵というには簡素な、スライドロック。けれど中からは開けられないから、鍵の役目は果たしている。


 かちゃりと、横にスライドすれば、扉は抵抗なく開いた。



「…………ありすさま?」


 意図せず問い掛けたその声は、少し震えただろうか。


「ローゼマリン様」

 

 けれど返ってきた声は確かで、アリス様の声で、私はパルスを押し退けて中へ入った。


 王城の地下牢に、似ていた。趣味の悪い部屋だと、思った。


 そして、視線をこちらに向けるアリス様の傍らには、彼女が寝そべっていた。


「ミヤ?」


 白い頬は血の気が失せ、青ざめている。いつも緩んでいるはずの口元も真っ青で、けれども、それとは対照的な赤が、目に焼き付く。


「…………お嬢、様?」


 理解はしていれど、それでも立ち竦んだ私を動かしたのは、聞き間違えるはずのない、侍女の声。


「ミヤ!!」


 駆け寄り、膝を付いて、手を取る。その余りにも冷たい手に、生気を感じることなど出来ないその手を握り締める。


「おじょう、さま……」


 掠れた声で私を呼ぶミヤへ聞きたいことが沢山あった。けれど、いざその姿を目にしたら、何を話せばいいのか、わからなくなった。


「ごめんなさい……」


 ぱたり、ぱたた、と、涙が溢れる。


「ごめん、なさい……」


 彼女へ、何を告げればいいのだろう。


 彼女へ、今更、なんの言葉を与えればいいのだろう。


「お嬢様…………ごめんなさい………………」


 何故、苦しんでいるのか。何故、ミヤだけが。そう尋ねたくても、何も吐き出しはしないこの喉から零れるのは、嗚咽だけ。



 そうして数分にも満たない時間が過ぎて、ミヤはずっと謝ったまま、遂には何も言わなくなった。



 呆然とミヤを見つめ、涙を流す私を、アリス様が拭ってくれる。そのハンカチはよくミヤが使っていた物だと気が付いて、また、溢れた。


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