従兄弟の告白6
「でもね、ローゼ」
セルターは表情を崩した。
「僕、アリス・セントレナ、ジルベルト王子、シリウス。多分、他にもいるはずなんだ」
「……え?」
セルターは眉間に皺を寄せ、険しい顔でそう告白する。
「僕が流したのはあくまでも彼女に足りない部分を知らせるための噂。アリス・セントレナが平民だとか、教会上がりだとか、そういうのには一切触れてない」
「……アリス様が平民で、教会上がりなのは、周知の事実ではないの?」
アリス様の情報が一切入ってこなかった中、どんな噂が流れていたのかを私は精細には知らない。
ただ、彼女が平民で、教会上がりの少女だということを、私は知っていた。だからてっきり、それはプロフィールに書いてあるようなものだと思っていた。
「いいや、知らないはずだよ。当初は貴族の養子として編入させてたからね、教会が」
顔をしかめる。それなら、私は何処でそんな話を聞いたというのだろう。
「ローゼ、君はその話をどうやって知ったの?」
考えた瞬間に、セルターの言葉が被る。どうして、と、言われても一切思い出せない。
ただ、アリス様が編入してきた頃。彼女は教会上がりの平民なんですよ、と、誰かが言っていた気がした。
「うーん」
いくら記憶を漁っても出てこない。それほどまでに自然な会話の流れだったのだろうか。
「シリウスも、ジルベルト王子も最初は知らなかったはずなんだ」
セルターの声を頼りに、周りにいた人間を思い出して、消してみる。
「そうなると、もう誰もいないわ。貴族の人間なんて」
セルターが頭を抱えた。私も抱えた。
基本的にセルター、シリウス、ジルベルト王子、私。この四人で行動してきた。他の誰かが混ざった時は注意を払っているから覚えているだろうし。
誰一人として、当てはまらない。
「かと言って、側仕えが出来ることなんてたかがしれてるしなあ」
……側仕え、と、その言葉を聞いたとき。脳裏で、誰かと重なる。
『なんだ?あの一年には側仕えがいないのか?』
『失礼ながら私が。あの少女は教会から編入してきたそうです、カイン王子』
『平民か?珍しいな』
『そうですね、平民の方で魔力持ちは珍しいですね』
二年前、だろうか。傍に人が控えていないのを見たカイン王子が興味を持った。その時、私はアリス様の存在を知り、彼女が平民なのだと知った。
そうだ。編入生のことなんてよく知っているな、流石だなあと感心したその時を、私は覚えている。
「ローゼ?」
「セルター……」
私は、間違えたかもしれない。そう呟いて、部屋を飛び出した。