従兄弟の告白5
「…………そう、なの」
聞けば、事実は至極簡単なことでしかない。
「僕等……というか、僕だね。ジルベルト王子とシリウスは悪評を流したりとか、そういうことは一切関知してないから」
するすると私の毛先で円を描くセルターの手が止まった。
「僕とアリス・セントレナに呪いを掛けた人物を僕とアリス・セントレナは言えない。そういう契約だからね」
知ってるかな?って、軽い口調でおどけるセルターの指は少し震えていて、私はその手を握る。
「アリス様は、何を望んだの?」
セルターの望みは私をカイン王子の元で飼い殺しにさせないこと。たったそれだけの願いに、彼は自分の人生を捨てた。
それならばアリス様は、聖女であることをひた隠しにしてまで、何を手に入れたかったのか。
おおよその察しは付いているけれど、それでも、確認したかった。
「君の立場だよ」
冷水に付けたセルターの手は冷たい。ぎゅっと握って、そう、と、ただその一言だけ返した。
「王妃になりたい訳じゃない。ただずっと傍にいられるように。それが、僕が知ってる限りの彼女の望み」
王妃になりたい訳じゃない。
ただ、傍にいたいだけ。
それなら、その、対価は……。
「…………そう。そういうこと、なのね?」
王妃の立場じゃなく、と。ただずっと傍にいれるような環境を、アリス様は望んだのだ。
それならば、私に婚約破棄をさせて信頼を底に失墜させて継承者から外す。そうすれば、ただのアリス・セントレナでも、傍にいることが許されるだろう。
アリス様がそこまで錯綜させた設計図を描いたとは思わない。それこそ喉から手が出る程欲しがるモノを目先に垂らして釣るようなこんな、手段は。
そうしてふと、地下牢で出会ったときの、赤い眼差しを思い出す。
「ああ、なるほど、」
一つ引っ掛かりを解いてしまえば、後は結んだ蝶々を崩すよりも容易く、全貌が見える。
小さな違和感をかき集めて、均せば、そこには見知ったあなたが、穏やかな顔で笑っていた。
「伯父様の善意、無駄にするわね」
徴収石も、叔父様の隠していた真意も、それは私の推察を裏付ける決定的な証拠になるだろう。
「ごめんね、ローゼ」
私の体温とぬるく溶け合う程度にまでは温かくなったセルターの手を離して、私は目元のタオルを退かす。
「…………セルターは、意地悪だわ」
大分すっきりした瞼を開け、翠緑の双眸とかち合う。
「ごめん」
全く悪びれないいつもの優男風な顔でセルターは笑った。




