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従兄弟の告白2

「ローゼ」

「なあに、セルター」


 セルターは立ち上がり、私の前に立つ。追って視線を上へ向ければ、セルターは先程とおんなじ顔で、私を見下ろしていた。


「僕…………僕達は、君に言わなければいけないことがある」


 僕と、シリウスと、ジルベルト王子は。と、セルターは続けた。


「………………なに?」


 声は、少し震えたかもしれない。


 それでも、ただ目を逸らさずに、じっと彼の視線を受け止めたまま、聞き返す。


「話すよ。話すから……少しだけ、僕の前話に付き合って欲しい」


 屈んで、私の手を取ったセルターは貴族らしく手の甲に口付けを落としていく。そんな扱いを冗談以外でされたことのない私は戸惑いつつも、言葉を待った。


「僕はね、君が好きなんだ」

「ええ、知ってる」


 ほぼ反射的に、そう口走っていた。そんな私にセルターは苦笑いを浮かべつつ、そうじゃないんだけどなぁと呟いている。


「よいしょっ」

「きゃっ!?」


 手を掴んだままのセルターが立ち上がれば、その先にいる私も強制的に立たされる。


「なんな……の、よ…………?」


 流石に扱いが雑であると文句を垂れる為に口を開こうとした時。


「ローゼ、好きなんだ」



 

 そうだ、それで今こんな状態になっているんだった、と私は遠い目でセルターの胸元に埋まる。


「待って」


 と、頭を整理してもこんな言葉しか出てこなかった私自身に対して、セルターには申し訳無いと思っている。


 でも、前の時だって恋人なんかいなかったし、こうやって好意を向けられる機会もなかった人間に少女漫画並の反応を期待するのは無理でしょう。


「待ってたよ。ずっと」


 私のツッコミで少しだけ緩んでいた腕がまた絡まる。けど、今度は力一杯抱き締めるような息苦しさだけじゃなくて、包み込むような気配も感じられて、尚一層恥ずかしさが増す。


「10年、ずっと」


 腰に回っていた手が離れ、私の髪を一房掬って一歩分下がったセルターとの間に蜂蜜色の髪が光る。


「ずっと、好きだった」


 それは、とてもいとおしそうで、悲しそうで、私の髪へそっと口付ける姿も相俟って、一瞬、言葉を失う。


「だから、君があんなバカ王子のモノになんてならように、画策したんだけどね」


 手を離す。


 セルターの指に絡んでいた髪が、張っていた糸を切ったかのように戻ってくる。


 そんな風に言葉が思い浮かんだのは、切れたのが私とセルターを繋いでいた何かだと、考えたからだろうか。


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