従兄弟の告白
「ええと……」
ローゼマリン・フォン=ヴェスター。只今、混乱しています。
「せ、せるたー?」
私を抱き締めているのはまごうことなき従兄弟のセルター。
「ローゼ、好きだ」
聞き慣れているはずのセルターの声質は、今まで聞いたことのない甘さが含まれていた。
「あ、あの、」
「ローゼ」
なんとかしてとりあえず腕の中から逃れようともがくものの、動けば動く程それを阻止しようと腕が締まる。苦しい。
「ちょ、セルター、苦しいってば!」
私よりずっと高い身長を持つセルター。故に、私は彼の胸元に閉じ込められることになる。離してと空いている手で背中を叩くものの、抵抗虚しく何も変わらない。
「ローゼマリン」
自分の名前が遠くに感じるくらいに現実味がないこの状況。何故こうなったのか、ちょっと現実逃避の為に思い出したいと思う。
「ジルベルト王子は未だに返信ない、か……」
陛下との密会後、数日経てどもやはりジルベルト王子からの手紙は来ない。そこまでメリットのある付き合いだと思われなかったのか、忙しいからなのかは判断付かないけれども、何もしない時間というのはどうしても焦燥に駆られる。
「ううん、もしくは別口で取り次いでもらうとか……」
注意するミヤがいないのをいいことに、自室のソファで寛ぎ、ごろごろしながら考え事を始める。
真面目に考えているようで、その実、何も考えてはいないのだけれど。
「ローゼ、いるかい?」
「セルター?」
そんな時間を潰さしてくれたのは従兄弟のセルター。彼が私の部屋に来るのは、今となっては久しい。
「入っていい?」
「どうぞ」
ごろりとしていたが為に少し乱れた衣服を整え、扉を開けてセルターを迎え入れた。
「どうしたの?」
ミヤがいない今、お茶を用意する人間は存在しないので、ソファに案内してもテーブルに茶請けは置かれていないけどセルターは気にしていない。
「…………アリス・セントレナが、聖女だっていうのは本当?」
暫しの間。漸く沈黙を破ったセルターからの問い掛けに、戸惑う。
「シリウスが、母上から聞いたって」
お母様……!と叫びだしたくなったのを堪え、私は粛々と頷く。
「ええ。今代の聖女はアリス様で間違いないわ」
「そう……」
私の答えに満足したらしいセルターが、少し嘲笑うように口角を上げた。
「……セルター?」