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お叱り部屋

「ミヤ!どうして起こしてくれなかったのよ?」

「二、三度お声は掛けましたがぐっすり眠られていましたので」


 桶に汲まれた水で顔を清め、私が特に力を入れて商品化した化粧品関係で肌を整え、衣装の支度をし終えたミヤの元へ寄りながら文句を垂れる。


 当然ミヤに非などある訳もなく、約束をすっぽかしてしまったお母様へのフォローもしてきたというのだから、私は何も言えない。


「お嬢様が起きられるであろう時間を予測してお伝えしておきましたので、そろそろ奥様のご支度も終わっている頃かと」

「ミヤ……」


 更に主人の眠りまで把握しているミヤ、有能すぎてつらい。


 ぎゅうぎゅうに締められたコルセット、ドレスを支えるためのパニエ、全てがこの時代の美しく装う為の装備。こんなんで行かなければならない社交界はもう行う一週間前から憂鬱になる。


「お嬢様、出来ましたよ」


 そんな関係ないことを考えていれば、着飾り終えたミヤが正面に立ち、最後に軽く髪を梳いてくれる。ふわふわと緩くウェーブを巻くこの金髪はミヤとお母様付きの侍女長にしか手入れが出来ない。下手に手を入れると何故かくるんくるんのただの癖毛にしか見えなくなってしまうのだ。


 この素晴らしい加減だと自画自賛するウェーブを作るにはミヤと侍女長しか知らないコツが必要らしい。


「参りましょう」

「ええ」


 扉を開け、造りとしては珍しい二階の、同階にあるサロンへ向かう。


 一階のサロンは主に賓客を、二階のお母様が管理するサロンは家族会議に使われるものとして分けられている。お母様が二階にもサロンが欲しいとお父様にねだって造ってもらったの、と微笑んでいたのを思い出す。


「奥様、お嬢様が参りました」

「通して、アーセナル」


 サロンの扉前に佇んでいる侍女長がこちらに気付き、中で待っているお母様へ声をかけ、私を通す。


 ミヤと侍女長が中に入ってこないのを見、私は背筋を直してお母様の対面の席へと腰掛けた。



 サロンと言ってもここは賓客を招き談話する為の部屋ではない。故に一階のサロンよりも少し小さく、お母様好みの装飾で纏められ、棚にはお母様好みの茶葉とティーセットが並ぶ。


 名目上は家族会議の為の部屋、となっているけれど、ここはお父様がお母様に内緒で何かしたり、私が小さいときにカイン王子を置き去りにした時だったり、シリウスとセルターがお母様の大事にしてた花瓶を割ったとき等に使われてきた。



 ここはそう、主に、お叱り部屋なのだ。


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