逃亡劇の背景2
「あっ……」
問い詰めて、漸くアリス様は自分の失言を認識したようだった。癒しの加護で戻っていた顔色はまた青ざめ、うっかり落とした言葉を取り返すように口に手を当てる。
「いつ、気付かれたのですか」
が、しかし、今代の聖女探しは全貴族にとって義務であり、保護すべき対象であり、その人を見つけた今、私はそれを見なかったことには出来ない。
「詰ったり罵倒したりするつもりは一切ありませんわ」
「それは……はい、わかっています」
こんなはずじゃなかった、と言いたげな目に変わったアリス様から事情を聞き出す為、私も対面の座席に腰掛ける。
ある程度事情を聞き出したというミヤの話も後で聞かなければならないけど、今はアリス様の聖女覚醒を知りたい私は話し出すのをじっと待った。
「……教会にいたんです、昔。半年くらい、ですけど」
ぽつぽつとアリス様は語る。身体が弱く、魔力持ちの故に家族から教会へ売られたこと。教会が優しく扱ってくれたのはただ自分の価値を高めるだけという策があったからということ。
「身体が弱くて、でも、それがずっと貯め続けてた魔力のせいだって知ってからは、教会が送ってくる白い石にずっと流し込んでそれを送り返していました」
学園に編入する際、大量に与えられたというその石に溢れそうになったら魔力を込め、黒くなったら限界。その特性に教会のみが扱う魔力徴収石だろう、とアタリを付ける。
「教会はアリス様が聖女だと把握していたのですか?」
「いいえ、多分、ただ魔力の多い平民だと思ってるはずです」
「そうですか……」
一番知りたいことは確認出来た。教会がもしアリス様を聖女だと知っていて国へ報告していないのなら、それは教会と国の対立を表す。その事態は可能性として存在するくらいのよう。
「このサインが聖痕と呼ばれているものだとわかったのは、ただ、前に教会で見た本にこんなマークがあるのだと見たから……」
じわじわと外堀を埋めつつ、着実にどう覚醒したのかへ迫っていく。それに連れて、アリス様の口も段々と重くなっていく。
「学園に上がってから、です。自分が聖女なんじゃないかと知ったのは」
曰く、ある日のように魔力徴収石に溢れてきた魔力を流し込んでいたら、今聖痕がある所に痛みが走った。赤く焼けるような痛みに耐えて、何事かと確認したら聖痕があった、と。
「何故覚醒したのか、そもそもこれが本当に聖痕なのかがわからなくて、魔力を感知しなければこの聖痕が浮かび上がらないのだとわかって、ずっと、ずっと隠していました」
聖女が覚醒した、けれども、その理由は一切わからない。そして、その存在を隠し通していた罪悪感からか、アリス様は顔を伏せ、そのまま黙す。
聖女マークは顔付きの雪だるま




