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フシン

閑話

8年前僧侶1人を加えた6人の祓魔師達と雇われた傭兵約50名が、都から南東に大人の足で最低限の休息しかとらなかったとしても100日かかる場所に派遣された。

隠れて住んでいる魔物の群れを駆除するためだけに。

合理的に考えれば、無駄でしかない行為だが、祓魔師達の理念

『魔物は須らく駆除すべし』

という執念により敢行されたことだった。

いくら、合理的でなくとも、祓魔師にも能力に見合った仕事が当てがわれる。

そして、人を極力殺さずに、息を潜めている魔物には最低限の弱体化能力しか持たないものにあてがわれる。

都やその周りの街や集落から離れたほどにいる魔物ほど脅威にならないどころか、普通の人間と大差ない。それどころか、僧侶さえいれば幼子、病人、老人を皆殺しにする容易さである。


そして、その様な事ができる僧侶も祓魔師達も勿論それに金で雇われる傭兵さえも、自らと同種以外に向ける慈悲の心などあるはずがなかった。




所詮は、害獣の分際で小賢しく隠れて安寧を得ていた者どもだ。群れをまるごと駆除するのは容易い。魔物の集落に入る前に抱いていた駆る側達の共通の認識であった。

少なくとも、ある魔物の親子を悪戯に5人の傭兵が殺そうとする迄は誰もがその様な認識であった。


「あアアァアああ!!助けてくれ!!喰われる!痛い痛い痛いィいイィ」

「な、何で、さっさっきまで仔犬だったのに」

1メートル程の狂犬が牙ジワリジワリと男の首に迫る。

「やだ、ごめんなさい、やだ、死にたくないィ!

ヒァ」

ゴグギャリ

骨が噛み砕かれる音がした後には、ヒューヒューと笛の様な音が響く。

「狼狽えるな!餌に夢中になってる間にやっちま」

言葉を発した男のはらわたが飛び出した。

「え?」

一拍して自分の状況を把握した男が転がる。狂犬は男によじ登ると腹の中をほじくり返しながら、かき混ぜながら食べる。

「アアァア!やめろ!やめろ!早くコイツを殺せ!!」

犬の身体が2倍に成長した。その様子とあまりの行為の悲惨さにその場にいた、誰もが凍りついた。そして次の犠牲者が、腹を半分食い切られたところで、我に返って。

「あ、あ、お、おおおれ……のの……」

無傷な2人は逃げ出した。

そして、他の魔物を殲滅し終えた者達を引き連れて戻った。

更なる犠牲者を増やすとも知らずに……


遂には、30名以上の者達が戦闘不能になった時点で、全員が逃げ出した。

僧侶含め6人の祓魔師は全員生き残り、その全員は魔物を一匹殺し損ねた事を隠蔽する事を決めた。

祓魔師達には幸いなことに都にたどり着くまでにたっぷり時間があった。

そのため、しくじりを行った祓魔師達に8年の猶予を与えた。

あくまで、祓魔師達は駆る側だからこそ、続けていられたのであって、無残な獲物になる事など2度と避けたかった。


閑話休題


「律師及びそれに連なる祓魔師計六名を背信の咎にて斬首」


粗末な身形の、既に拷問により身も心もボロボロになった『背信者』が担がれ連れてかれた。


8年前に南東の辺境で行われた討伐に不手際があった事がつい最近になって発覚した。

最近凶悪な魔物の一派の一人が捕らえた。そして、そいつを拷問したら、各地にいる力の持つ魔物を仲間に引き入れ、都やそれに繋がる主要な街を襲う計画が発覚した。

そして、目星い魔物の情報を小出しにしている最中に、露見した事だった。

重要でない、情報から小出しにしているようで、本当に8年前関わった者達以外はあまり利益のない情報であっただろう。それどころか、地獄からの便りになったことだろう。

しかも、辺境のそれこそ被害も月に一人か二人程度では魔物の被害などとは、本来気づかれまいに。魔物が、8年前の噂程度でしかない情報を漏らしたばかりに憐れな事だ。


しかし、8年前に祓魔師など辞めて、一般人として生きていれば、この様な末路はなかっただろうに。そして、魔物を殺し損ねた事を素直に報告していれば、身一つになっても、そこから少なくとも今日この日よりはいい、今日があったろうに。


「8年前はまだ子供だったとのことだが、一切弱体化の教が通じなかったそうだ。

逃げても、追っては来なかったとの話だか、『魔物』が生き存えて良いという理は存在しない」


実に心が傷む


「では、今回の討伐は僧正の位を持つ者を筆頭に討伐隊を組む」


何故に


「クラミツ僧正」

「諾」

「此度の化犬討伐貴様に任せる」


思い通りにならない様の多さに


「承りました。権大僧正」


心が腐る。



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