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  伝承




ことの発端は神々と眷属の諍いから起きた。


ある二人の神が夫婦が蛇の化身に唆され、違う神の眷属に借り腹を頼み込んだ。

借り腹を頼まれた眷属はそのことについてよく考えもせずに承諾し、神二人の可愛い女神子を産み落とした。

産み落とした時に、借り腹をさせられたことがわかり、周囲は大慌て。

借り腹をした眷属は親である神達に幽閉されてしまった。そのことで納得いかなかった同じ神の眷属は、蛇の化身の言うことを聞いた神夫婦に子供を殺すように進言した。

だが、幽閉された眷属の番が、怒り狂った眷属や神々を諌めたため、女神子は殺されずに済んだ。

かのようにみえたが

「我が番の腹を借りてまで、つくった神子様です。何を犠牲にしようとも生かす覚悟が御座いましょうな」

番の口から、思いもよらぬ言葉が紡がれた。

「神子様には呪いがかかっている。このままではもって7日でしょう」

親の女神は生かす方法はと問い質した。すると

「今すぐ神子様を下界へお捨てになるか、夫婦のどちらかが違う世へお渡りになることです。お渡りになったとしても孰れは下界へ降らねばなりません。しかし今降ろせば、捨てることと同じこと。今後の生永えるかは、わかりませぬ。」

女神は直ぐに渡ることを決意し、すぐに自らの子と

片割れとの再会は叶わぬだろうと嘆き悲しんだ。それでも、愛情を残そうと数々の祝福を子と片割れに残してこの世を去った。

片割れの男神は怒り狂い、番の腹から生まれた子らの数と同じだけ引き裂き、子らに食わせ下界に全て落とした。

男神は知らなかったが番の身体には呪いがかかっていたのである。食べた者に力を与える、されど、対価に意思ある者を食い漁るようになる呪いが。


子らは呪いに最初は抵抗したが、やがて為す術なく、人や同胞を貪り続けた。


空腹を満たし、理性を取り戻した子らは呪いに抗うものと、受け入れるものの2つに別れたれた。しかし、呪いは今も子々孫々受け継がれている。


いつかは、この伝承も途切れるであろう。

呪いに抗い続ける子らが次の代へ語り継ぐことを祈る。



討伐


毎日、毎日魔物退治。自分の役目はただその場にいて、魔物の気を鎮めればいい。さらに、教でも唱えて無力化すればいいときた。

魔物を鎮めることができるのは生来の体質で、無力化する力は10年の修行の賜物だ。

欲して手に入れた力だ。その筈なのに


「何故このような事をしているのだろう」


何も忘れていない筈なのに、答えに至る思考まで到達できない。憤りも焦りも感じない。寧ろ心は凪いでいる。

なのに何故こんな事を考えているのか


修行が過ぎておかしくなられてはいまいか

今回の遠征大丈夫か

あの方が居るだけで、どれだけ仲間が救われたろうか

そこに在るだけで、調伏出来るとは何と有り難い

早く、化犬を殺して帰りてー

今回の獲物狩るだけに雇われた筈なのに余分な仕事迄やらされて

後でたんまり弾んで貰わねーと

僧正が居るだけ楽できる


馬車(くるま)の外からそんな言葉が聞こえてくる。全て全て耳に入る


間も無く化犬の縄張りに入ります。

従者が鈴を鳴らす。心に響く弱い音が耳に入ったら、教が口から滑り出す。

教の意味のみが頭を駆け巡る。どうして唱えて居るのか訳を置き去りにして。



獣の唸りが聞こえる。

犬というより、あれは獅子だとそう思った。


出たぞ殺せ喰われそんな馬鹿なあぅああぅああ

坊主ど貴様たすあこりなわなたいああああああ

そう


赤い毛並みの

赤い舌


暗い




「坊さん《おっさん》?生きてる?」

瞼を開けてみれば、八歳ぐらいの子どもが私の顔を覗き込んでいた。



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