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こちらギルドの保険屋です!  作者: 村山真悟
第1章 強欲神父と保険員
16/20

その16


 四大精霊達(あいつら)から送られてきた文面に晴らす術のない怒りを胸に秘めて私は一つの決断をすることにしたわ。


 それはね…強欲神父様に怒りをぶつけるってこと。


 今なら使える精霊術、鬱憤を晴らすには過剰だと思うけれど関係ないわ!


 だって、この例えようのない怒りを発散するにはそれしかないんだものだもの!


 とりあえず、神父様は精霊術にものを言わせて徹底的に追い詰めて---うん?そうねぇ、そのままダンジョンに誘導して小金を稼ぎにいくのはどうかしら?


 良いアイディアじゃない?


 私の脳裏に浮かんだ突拍子もないアイディア、冷静に考えたら録な目に遭わない事は分かりきってるけど…そのときの私は四大精霊達のせいで感情だけで動いていたのよ。


 全く、私ってばバカよね…。


 でも仕方ないじゃない?


 だってダンジョンで精霊術を使えるなら魔物素材取り放題よ?何時、行くの?今しかないでしょ~よぉ。


 そんなアホな発想のお陰で私の足取りも軽くなり、ルンルン気分で神父様のいる執務室に向かったわ。


 教会の一番奥にある神父様の居る執務室の尊厳な扉が私を出迎えてくれて何だか神聖な雰囲気すら感じるわね。


 部屋の持ち主は聖職者としてはかなり俗世に毒されている気がするけど…まぁ、いいわ。


 私の優雅な未来のために犠牲になってもらうとしましょう。成功の暁には少しぐらいは今回の悪質な不当請求を多目にみてあげるわよ。


 とりあえず、扉をノックしてみる。


 部屋に居るか確認しないと。


 コンコン--。


 先ずはおしとやかに軽くね。


 うん?返事がないわね。確か執務室に居るっていっていたから居るはずなんだけどなぁ。


 コンコンコンコン…本当にいないのかしら?


 コンコンコンコンコンコンコンコンコン…うん?


 あぁ、そっか聞こえないんだ。あの神父様って耄碌してそうな雰囲気だったものね。う~ん、じゃあ--もうちょっと強く叩いて気づいてもらわなきゃ。


 ゴンゴンゴンゴンゴンゴン--バキッ…あっ!?


 嫌な音がしたわね……勢い余って扉を壊しちゃった。


 私の手が扉にめり込んじゃってる…てへっ。


 忘れてたわ…今の私はギルド権限で冒険者資格を与えられているんだった。


 つまり身体能力が向上しているから気を付けないと無意識に力加減を間違えちゃう。


 ……これ、請求されないわよね?


 とりあえず、そっと扉から手を抜いて空いた穴から室内を覗いてみる………うん?居ないわね。


 覗き込んだ私の瞳に写し出されたのは黒檀で出来た高そうな執務机と来客用のソファとテーブルで、あの神父様の姿は確認できなかった。


 おかしいわね…確か、執務室に居るって言っていた気がするんだけど…うん?あぁ…居たわ。


 私の瞳に黒檀の事務机の隅で丸まってガタガタと震える神父様のデップリとしたお尻が見えたのよ。


 頭隠して尻隠さずって言葉があるけど、うん…流石にないわぁ。威厳もへったくれもありゃしないもの。


「ねぇ、何してるの、神父様?」


 ジト目で扉の隙間から覗き込みながら欲情のない呆れた口調で、震えるお尻に声をかける。


 ビクッ!?


 私の声に反応するみたいに震えていたお尻がビクってなって震えが止まったの。


 まるで時間が止まったみたいにお尻は身動きすることなく無駄に過ぎていく時間を私は神父様のお尻を見る羽目になったわ。


 何だか気まずい雰囲気よね…。


「ねぇ、神父様?」


 無駄に過ぎていく時間に耐えきれなくなってきた私は室内を覗いた瞳を見開きながら少し低めの声で再度、声をかけたの。


 その声に神父様が怯えた表情で振り返り扉から覗いていた私の瞳と視線が重なった瞬間--。


「ひぃっ!?でででででででたぁ~!!」


 私の瞳に怯えた表情と恐怖をない交ぜにした悲痛な叫びと共にガクブルに震えながら事務机の下へと駆け込む神父様…って、なにが「でたぁ~よ!!」よ。まるで私が化け物みたいじゃない--失礼よね、全く。


「ちょっと話がしたい」


 覗き込んだ瞳を見開きながら声をかける。


「な、なんでしょう?」


 机の隙間からこちらを見つめる神父様の声がかなり震えている。どうしたのかしらね?


 何か疚しいことでも?たとえば--。


「請求書の件…」


 その言葉にビクッ!?って過剰に反応した神父様はみるみると表情が青ざめていく。


 その姿に私はニヤリと口許を歪ませる。ちょっと、楽しくなってきたわね。


「せ、請求書ですか?彼女の請求書に何かご不明な点でもありましたでしょうか?」


 私から視線を逸らしながらダラダラと変な汗を流してる神父様はマジで言ってるのかしら?その姿みて疑わない人いないでしょう。


「不明点ありあり…ってか、あれは強欲すぎる。誤魔化しようがない…まぁ、気持ちはわからないけど」


 だってね、やっぱりお金は大事よ。私が神父様の立場でも全力で誤魔化すわね。まぁ、もっと上手くやれる自信はあるけどね。


 バレたら殺されるだけじゃすまないけどね…。


 神父様、今回の回収者が私でよかったのよ?アリス大先生だったら今ごろ……想像するのも恐ろしいわ。


「とりあえず、埒が明かないから入るわよ?」


 ガチャリ。


 静かに手を抜いて扉のノブを回す。


 バタンッ----。


 扉が壊れて落ちたわ…まぁ、いっか。


 寿命よ、寿命。うん、そう思おう。とりあえず…。


「失礼します」


 一礼してから室内に足を踏み入れる。


 礼儀は大事よ、大切にしなきゃね。


「で、で、では、そちらのソファにお座りください」


 目線を逸らしながら物凄くオドオドとしながら来客用のソファを進める神父様の姿とは裏腹にふてぶてしく私はドカッとソファに座り込んだのだけど……。


 何よ、このソファ!?凄っ~く、フワフワじゃない!お尻が沈んでいくのよ!?驚きだわ!


 …………ほしいわね、このソファ。


 手触りもすっごく柔らかいし最高よね。


「すごい柔らかいし、フカフカだし…ほしい」


 思わず心の声が漏れちゃった。


 うん?あれ?さっきまでオドオドしていた神父様の瞳がキラリと光ったわね。


 胸元で両手を揉みだしたわね。しかも、満面の笑みを浮かべて私にズズッと近付いてきたわよ。


「これは、これは、お気に召しましたか?宜しければご都合しますが?」


 賄賂ね…いいわね。その根性、嫌いじゃないわよ。


 ニヤリと笑みを浮かべると神父様も口許に笑みが浮かぶ。互い目が合って、ぴきぃーんと意思疎通完了。


「「ふふふふっ」」


 二人して不気味に笑みを浮かべながら意気投合。


「では早速、手配いたします。このソファよりも上等な品物をご用意させてもらいますよ」


 さっきまでの青ざめた表情か嘘のような晴れやかな笑顔が若干ムカつくけれど--まぁ、いいわ。


「お願いね」


 取りあえず貰えるものは貰っておかないとね。このソファよりも上等な代物って言っていたけど想像が全くつかないわね。


 しかも神父様ったら早速、側近の人を呼び出して品物を私の部屋に届けるように伝達してくれている。行動が早いっていいわよね。あとは届いてからのお楽しみっ…てことで、早いとこ仕事を終わらせて帰りましょう。


「じゃあ、話の続きをする」


 にこやかさに不敵さを込めた笑みを浮かべながら依頼者から預かった法外な請求書の束を取り出してテーブルにドンッと並べる私の姿にさっきまで満面の笑みを浮かべていた神父様の表情が強張っていく。


「はいっ?」


 目の前の現実が理解できないのか、間の抜けた声で私を呆然と見つめてる。


「これが、仕事…」


 書類の束を指差す私に神父様は瞳を何度も瞬かせながら現実を直視できないでいるわね。


 まぁ、私は書類の束をペラペラと捲りながら不当な請求部分に印をつけて彼の前に並べていく作業を黙々とこなしていく。


 改めて請求書を見直してみると結構えぐいわね。


 聖職者が聞いてあきれるわ……。


 見直した書類から順に選り分けていき、あまりに酷い代物(請求書)はグシャリと握り潰してポイって投げ捨てる。


 まともな請求と不当請求が混ざってる書類は正当な請求金額に見積もりをやり直して次々と神父様の前に並べていく。


 ………あれ、なんだろう?神父様の顔がプルプルと震えてるわね。どうしたのかしらね?


 目の前に並べられた手直し済みの請求書の束を血走った瞳で見つめ額に青筋を浮かべる神父様。


 明らかに聖職者の顔じゃないわね。


「き、き、貴様ぁ~、謀ったなぁ!」


 血走った瞳が間近に迫ってきて怒声を響かせながら神父様の聖職者の顔が見るも無惨な悪鬼顔、この顔は敬虔な信者には見せられないわよ?


 まぁ、とりあえずーー。


「なにが?」


 しれっと小首を傾げてみ不思議そうな顔で顔を真っ赤にしている神父様に聞き返してみる。


 あっ、わざとよ?


 怒ってる原因は明らかだもの。


「何をぬけぬけとぉ!先程のソファの一件で今回の請求は話がついたはずだぁ~!!」


 顔を真っ赤にしながらさっきの贈り物(ソファの賄賂)の件を持ち出して声を荒げる神父様。


「あれは貴方が善意で私にくれたものでしょ?」


 すっとぼけながらジト目で神父様を見つめると額に浮き出た血管がピクピク波打って今にも弾けそうよ?


「な、な、な、なにをぉ~!?」


 口許をワナワナと震わせながら血走った瞳で私を見つめてくる神父様…でもね神父様、よぉ~く思い出してみて?


 私は一言も「ほしい」なんて口には出してないし、見返りも掲示していないわよね?


 ソファの件は神父様の善意だよね?


 ってことは---。


「神父様の勘違い。それともギルド専属の保険員に賄賂なんて通じるとでも本気で思ってたりしてた?そんなの有り得ない……マジで殺されるから」


 ジト目を細めて微かに殺気を込めて見つめる。


 今の私はギルド権限で冒険者資格を得ているから、ただの聖職者の神父様にはかなりキツいと思うわよ?


 内心でザマァって思っているけど顔には出さないわよ。とりあえず目の前の強欲神父様にはちょっ~とだけ、痛い目をみてもらいましょうかね…楽しみ。


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