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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

真面目なお話

尊い命を頂く業にまつわる二重の”誤解”

作者: 数々

 自分は違うと”誤解”してる方は、ぜひ聞いてください。


 そして気づいてください。二重の”誤解”に……。



「”誤解”されて困っています」


 街外れにひっそりと、たたずむ館。そこは”幽霊屋敷”だと噂されています。噂どおり、いかにも何かが出そうな雰囲気です。


 かなりの築年数が過ぎたであろう、古い洋館。激しく痛んだ外装に、手入れが行き届かずに生えてしまったツタ、思い込めば全てが不気味に見えるでしょう。


 噂は本当では? そう思われるかもしれません。


 それは”誤解”です。私が一番よく知っています。幽霊なんていませんし、ちゃんと生きた人間が住んでいますよ。生まれ育った我が家ですからね。


 汚く見えますけど中は清潔にしています。毎日、掃除してますが広過ぎて持て余していますね。なんと、地下室までありますよ。


 地下は、主に貯蔵庫として使っています。年中ひんやりとしているので、生物でも腐ることがありません。”監禁”するにも適しています。


 周辺に他の住居はなく、とても静かで自然に囲まれた環境です。何をしていても見られないし、”悲鳴”が近所迷惑になったりもしません。


 とても綺麗な庭が自慢です。”頭”を埋めて、花もたくさん植えました。家庭菜園の畑や、鶏小屋もあります。


 そう、ニワトリを飼っています。もう我が子のように可愛がっていますよ。卵がすごく美味しく、毎日の糧に、いつも感謝しています。


 ところが、この子たちが”化け物”呼ばわりされています……。


 珍しい品種です。不吉なカラスのように黒い羽、赤い赤いトサカ、漆黒の体に真っ赤なトサカ……。私には可愛いくても、見る人によっては不気味でしょうね。


 鳴き声も変わっていて、くぐもった人の悲鳴のように聞こえます。


 これが”誤解”を生んでいるのでしょうか……。



 もう一つ困っているのが、私に関する”誤解”です。


 荒唐無稽な話なんですが……。その……私が……子供を食べるらしいです……。生きたまま皮を剥いで、そのまま食べてしまうそうです……。


 もちろん、そんなことは絶対にありえません……。普通に考えて、するわけがないでしょう……。なぜ、そんな”誤解”が広まったのでしょう?


 外見のせいでしょうか? 見た目で判断してはいけないと言いますが、されてしまうのが現実ですね。


 髪は、たまに思いついた時に切るぐらいです。お気に入りの黒い服も不吉ですか? 表情の見えない長髪に、全身真っ黒な服……恐ろしいかもしれませんね。


 これには理由があります。昔は白い服が好きでしたが、うっかり浴びてしまった”血”が落ちなくて、服が駄目になったのです。それから、目立たない黒に変えたんですよ。そんな、ちゃんとした理由があるのです。


 そもそも、外見で人を判断するのは愚かな事です。一見、普通に見える人こそ、罪を犯していたりします。私だけが、なぜ”誤解”を受けるのでしょう?


 もしかしたら……見られたのが、きっかけかもしれません。


 その日は、首をうまく切断できませんでした。激しく抵抗されて、血が吹き出し、黒に近い赤に染まりました。あ、血の色は、思っているほど赤くないんですよ。


 あとで気がついたのですが、子供に見られていたようです。もがく鳴き声、切断する音、飛び散る血、落ちた頭……。たいそう怖かったのでしょうね。すごい勢いで逃げて行きましたよ。あの子が”誤解”の発端でしょうね。



 え? ニワトリの話ですよ? ……何か”誤解”されましたか?


 あの子も”誤解”したのでしょう。それで、噂を流したのでしょうか? 恐ろしかったといえ、やはり子供は好きになれませんね。


 ベジタリアンでもなければ、”肉”食べてますよね? 手を下していないだけで、間接的にしている業なんです。自分は違うと”誤解”してる方は、ぜひ聞いてください。命を頂く話です。



 十分に成長した個体を選びます。もっと若いのが好きな方も多いですが、私は、成熟している方が好みですね。硬さが程よいですから。


 まずは餌を抜かなければいけません。これを餌切りと言います。この間は地下室に移します。おなかを空かせている姿が、とても可哀想で見てられませんから。これから絞めてしまうのに、変でしょうか?


 次に、逆さ吊りにして、しばらく放置します。くぐもった声で鳴いていますが虐待ではありません。頭に血を登らせ大人しくさせるのです。


 ぐったりしたら……殺します。


 首の切断に気をつけてくださいね。ただ、切りつけるだけだと失敗しますよ。半分ぐらい千切れても動き続けたりしますからね。それはもう見てられない様になります。必ず、首を落とすつもりでやってください。


 出刃庖丁を首に当てて、一気に……落とします。決して躊躇しないで! 苦しませることになりますよ。


 うまく切断できたら、そのまま血抜きをします。吊るしたまま血が落ちなくなるのを待ってください。思ったよりは出ないはずです。


 終わったら毛を抜きます。黒い毛をむしるのは何か罪悪感を感じます。皮を剥いでしまう人もいますが、美味しいのに勿体ないですよね。


 最後に内臓処理です。餌切りをしていないと、この時に困りますよ。


 内臓を取り出すときに……鳴き声が聞こえます。これには、びっくりしました。


 もちろん死んでますよ? 気管に空気が入って、首から鳴き声のような音が出るんです。わかってしまえば平気ですが、最初は怖かったですね。


 内臓を全て取り出せば、ようやく作業は終わりです。


 もちろん調理もしないといけません。生は駄目ですよ? 危ない菌が潜んでいますから。オススメはシンプルに丸焼きですね。パリパリとした皮が大好きです。


 ここまでして、ようやく食事にありつけるのです。


 ”そのまま”では食べれません。こんなに作業が必要なんです。


 人間だけは、特別なんて思わないでくださいね。全ての人が”誤解”しています。


 私が、”子供”の”皮を剥いで”、”そのまま”食べてしまう。……絶対にしませんから……。そんな”誤解”を受けるのは理不尽です。


「……あなたは”誤解”していませんか?」

叙述トリックです。わかりにくいでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 何度読んでも食育的ないい話には見えない私はきっと作者様の思う通りの誤解をしているのでしょうf(^^; 同じ小説の感想を見てここまで解釈が異なったのは初めてで衝撃でした(;゜∇゜) 面白い…
[良い点] 怖かったですが、最後まできて安心しました。 うちのお義父さんが、小さい頃にこの作業を見て鶏が食べられなくなっていたんですよ。その事を思い出しました。 私も小さい頃は形のある肉がダメで、ハ…
[良い点] もしかしたらそう言う意味なのかも……というのが頭の中にあるのですが、誤解というのは恐ろしいものですね。叙述トリック挑戦してみたいです。次回作、チャレンジしてみようかな、なんて……。ホラーが…
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