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シカミ

 私は御風呂の外で一人突っ立っていた。この何もできない状況で何かを成す術も無く、私はただ、

「え…と、どうすれば…?」

などと呟いたりうろたえたりするだけ。さっき、誰か知らないこの屋敷のヴァンパイアに風呂場を追い出されてから、私は何も知らないこの屋敷で何をしろというのか?

 「ゔ~!」

と訳の分からないことをしゃべってみると、

「うるさい」

と、さっきのヴァンパイアが出てきた。

「え、あ、ごめんなさい…」

私はここに来る前の強気はどこへやら、思いっきりか細い声で呟くように言った。

「ついてこい」

「は、え?」

どこに行くというのだろう?この屋敷に、私がいる場所なんて、あるのだろうか?私は緊張しながらもついて行った。

 心臓の音がうるさい。まだつかないから、余計に心臓の音が大きくなる。

 と、急にヴァンパイアは止まった。

「うるさい」

「…は?」

「だから、心臓の音!…うるさい」

「え!?」

そこまで大きく聞こえるほどひどいの、私?

「ヴァンパイアは…特に俺たちのような純血種のヴァンパイアはそういう血に関係することには鋭いんだよ。…たとえば、おまえが何型か、とかな…」

まさか、そこまでわかるヴァンパイアなどいないだろう。私はすべての血液型の特徴を併せ持っているから…わかった人はそういない。

「じゃあ、私は何型ですか?」

 しばらくの沈黙の後に、ヴァンパイアは振り向いた。

「何型…て言うと思う?」

そ、そんなゆっくり言われても…。

「さ、さあ…」

「今おまえはこう思った。そんなゆっくり言われても」

「!?」

何でわかって…?

「血がそういっているからな。…いや、違うか。おまえが心の中で思った事が心臓に伝わって、そこから出てくる血がその味をさせている、と言えばいいか」

味、何て…。

「まだ、飲んでないじゃないですか…」

 瞬間、私はヴァンパイアにはあ?みたいな顔された。

「おまえ、知らないのか?匂いが味を作っていることもあるだろう。例えば、歯磨き粉、とか…」

はあ・・・?だから、匂いと同じ味だと…?

 …で、何型だと?

「AB型、だろ?」

「!?」

「今回の問題は考えるまでもなかった。AB型はA型とB型、両方の面を併せ持つ。O型は…話しやすい、だろ?だったら全ての面を併せ持つ、と言ってもおかしくはない。そんなのはただの性格の話だろ?」

くっ…仕方ない、私の負けだ!…は、おふざけとして…。

 「まだ、着かないんですか?」

「は?」

「え?」

いや、だから…と、私が言う前に返事は返ってきた。

「もう着いてる」

え…。いや、周りを見渡してもドアとか何にも…。

 「ここだ」

あった!…え、は?うそでしょ?さっきまで何にもなかったのに…。

「まあ…ここはヴァンパイアの館だからな。魔女の館ではないが…いろいろあるだろう。そのヴァンパイア、ネックレスも最初からあった、正体がわからないネックレスだ」

ヴァンパイア、ネックレス…?ああ、このネックレスのことか。それよりも、最初からって、この館が立てられた時の事?

「ヴァンパイアが作ったことは確かなんだが、誰が作ったのか不明でな。それは持ち主に幸運をもたらすんだ」

幸運?確か、『ヴァンパイアから住民を守ろう委員会』の人たちは禍の元だとかいろいろよくない事言っていたけど…。

「ああ、まあそれは、人間は不幸…」

ここで、ヴァンパイアの人の話は終わった。いつの間にかすぐそばに別のヴァンパイアがいたからだ。

「そこから先はまだ言ってはいけませんよ。こんなところで無駄話よりも、中に入ってからの大事な話の方がいいのではないんですか?」

「…」

私たちは無言で中に入った。中には、いつの間に来たのか、数人のヴァンパイアと思われる人たちが椅子に腰かけていた。

 「さあ、まあ全員集まったことですし、自己紹介を始めましょうか」

え?自己紹介?大事な話ってのが、これ?

「私はタイガです。これから、生血として仲良くしてくださいね?」

え、生血…?私がネックレスのおまけというのは、やっぱり飲み物としてきただけなの?生贄なの!?犠牲なの!?

「んーとね、僕はキユウだよ。君、よろしくね♪」

あ…なんかノリよさそう…?

「俺はルキトだ。…まあ、一応血の提供は拒まない」

あ、拒まないんだあ…。なんか悲しい。

「俺はシルズだ。…べつに俺はお前とはよろしくしねえ!」

何か荒いな…。

 私が次の人と思われるその人を見たら視線が返ってきて、タイガが促したためため息が返ってきた。

「ラカミ」

短っ!!

 で、最後の一人は…。私はその人を見つめるけど、全く声が聞こえない。

「…」

な、何か言っているの?君は。それとも言ってないの?

「ああ、すみませんね。彼女は過去にわけありで無口なので。まあ、あまり気にしないでください」

「彼女…?」

女の子には見えない。

「まあ、今は彼、と言ってもおかしくはありませんが」

何か、すっごい睨まれている気がしてならない。

「え…と」

「シカミ」

「え?」

今、しゃべった!?

「シカミ、ですよ。彼女は。…まあ、こちら側の自己紹介は済みましたし、後はあなただけですね」

 「あ…」

私は姿勢を正した。

「私…!?」

何か今、シカミにすっごい睨まれた気が…。

「ああ、特に気にしないでください。…あなたはこれからは自分の事を梨音、とでも呼んだ方がよさそうですね。とにかく、シカミの前では自分の事を私と呼ばないように」

「はあ…」

それはわかったけれど…。何で私の名前を知って…?

「「「「「「……」」」」」」

何故かみんな無言を貫きとおした。

「…?」

中には、憐れむような目の人も…。

 と…とにかく、自己紹介した方がいいのかな?

「わ、わた…。最上梨音です。よろしくお願いします」

そして、沈黙は去った。

「まあ、全員自己紹介を終えたので、解散としましょう。梨音の部屋は…まあ、私はやることがあるので」

タイガはえーと…と悩んでいる。今思ったのだが、なぜタイガは私呼びが許されるの!?

 と、そこに、キユウが飛び出してきた。

「はいは~い!僕が案内する!」

「ああ、そうですか。私はルキト辺りに頼もうと思っていたのですがね。ま、キユウでいいでしょう。よろしくお願いしますね、キユウ」

「は~い!」

私は、その大人と子供のやり取りみたいなほほえましい光景を見て笑っていたが、すぐ隣にシカミが来て、「邪魔」と言われた。

「え、あ、ごめんね…」

私は道を譲った。と、そこにキユウが来た。

「じゃ、行こうか」

「うん…」

私はシカミの事が気になっていて、その後も後ろ姿を眺めていたが、キユウはそれに気を使ってか、

「シカミの事、ごめんね?僕達が男だったからいけないんだ。兄弟全員が男だったから…」

「え?」

「ごめんね、いこっか」

私はキユウに手をひかれて廊下へ出た。

 私の新しい部屋へ。

 こんにちは、桜騎です!ヴァンパイア、ネックレス更新遅くなってすみません!次回もがんばります。ここまで読んでくださったかた、ありがとうございました!

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