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ヴァンパイアと血

 目が、自然と開く。体はふわふわの布団に包まれていて、自分は寝ていたのだと気が付く。…だけどなぜか、いつも見れるはずの陽の光が差し込んでこなくて、スズメの鳴き声も聞こえない。目覚めたばかりの頭をゆっくり動かして、辺りを見回す。

「ここは…私の部屋じゃない…?」

眠る前の記憶を引っ張り出そうとした。…が、ヴァンパイアの屋敷に連れて行かれてヴァンパイアとヴァンパイアから住民を守ろう委員会の奴らが戦う寸前しか思い出せない。

「…なんで、私はこんなところにいるの…?」

 そのとき、急に視界が明るくなったと思ったら、今度は明るすぎて見えなくなった。

「こんなところで悪かったですね」

「わひゃあ!」

「全く、こんなことで驚くとは…」

急に出て来られちゃ、そりゃ驚くでしょ。

「え~仕方ないでしょ?初めて来た、日本じゃありえない洋風すぎる部屋。おかしいと思うのが普通だと思うよ?ていうか、タイガのおかげでこの部屋に連れてくることになったんだからね?必死に戦っている僕たちをほおっておいて独り占めはないでしょ?」

「…それは悪かった。彼女を逃がすまいととらえたのはよかったが、血の誘惑の匂いがたまらなかった」

 「………あ…」

その一言で思い出した。ヴァンパイアから逃げようとしたら、この人につかまって血を吸われたんだった。その瞬間、私は顔が蒼くなったのがわかった。

「ん?どうしたのです?顔色が悪いですね…」

「い…嫌!」

つい、顔の前にあった私を覗いてくる顔を押しのけた。

「あ…」

私は、ついやってしまったことに戸惑いを隠せなかった。更に最悪な事に、牙を刺されたところが激しい痛みに襲われた。

「うっ…っ…あ、が…」

「あれれ?どうしたのかな?」

「っく、う…」

私はその、少しかゆい激痛に耐えられなくなり、牙を立てられた所をかきむしった。

「かゆいのかな?それにしては顔が痛そ…」

急に声が止んだ。ぬめっとした指先を見ると、真っ赤な血がまとわりついていた。

『じゅるり…』

舌なめずりが聞こえた。

「え…」

2人の顔が怖いくらいに変化する。固まっていると気付いた時には肩に手をかけられていて、そっと顔が近づいてきた。

「いやぁ!!」

私は2人を押しのけると、一目散に部屋のドアを目指した。ここがどこかなんてどうでもいいから、とにかく逃げたかった。そして、もし逃げられたら、お父さんを委員会から外してどこか遠くに移り住もうと思った。

 「はぁ…はぁ…」

家で読書や裁縫をしている私の体力はほとんどない。長年生きていて、しかも若く神出鬼没なのだから、勝ち目がないのはわかっていた。…が、逃げたかったのだ。出来るだけ遠くに、委員会が作ってくれようとした、血を吸われないだけの時間に。

「逃げても無駄ですよ。さあ、大人しくしなさい」

「い…嫌!」

声の主は廊下の端に立っていた。わざわざ避けて、道の端に。私は、そのまま作られた道を走りぬけた。

 しばらく走り、見慣れたドアを見つけた。それは、お風呂場で見るようなドアだった。

「こ…ここなら、見た感じ広そうだし、隠れているなんてわからないよね…?」

私は音をたてないようにそっとドアを開け、足音を忍ばせて中に入った。

「ふう…」

「おやおや?どこに行くのかと思ったら、梨音ちゃん?君はネックレスのおまけでついてきたヴァンパイアの物なんだよ?勝手に動いちゃだめでしょ?」

耳元で、声が聞こえた。

 私は警戒して反対側へ進んだが、湯煙をかき分けて現れたのは1番最初のヴァンパイアだった。

「ひゃっ…」

私は慌てて口をふさいだ。

「え~?もう遅いよ。声出したんだから、見つかってもおかしくないよ?」

私は牙の痕を抑えて下がった。背中でとんっと音がして、前に倒れ、崩れた。後ろには、メガネの(ヴァンパイアがいた。

「っ!っく…」

逃げる気を失って残ったのは、牙の痕の血と激痛。この激痛の中、よく走れたと思う。

 そんな私に2人が牙を見せて近づいてきた。

「い…や…。やめて…」

私は声が聞こえていない2人から逃げた。ドアを開けようとした。

「あ、開かない!なんで…?」

ひた…と音がして、後ろを振り向くと、飢えで我慢できない肉食動物のように私に近づいてきていた。

 そのとき、湯煙の中で影になっている湯船の中から、人影が見えた。

「た、助けてください!!」

私はその人が湯船にのんびりつかっているのにも関わらず、湯船に飛び込んだ。

「…人がゆっくり湯に浸かっているときに何?」

「助けてください!ヴァンパイアの2人が凶暴になって私に襲いかかってきて…」

私は、湯に浸かるのに服を着るバカとは…と思ったが、そのままで見てしまったら嫌だから、風呂に入る時のマナーは言わないようにした。…男はふっと笑った。

「そりゃあ、ヴァンパイアが血を見て凶暴にならないはずがない。そんなのは当たり前だし、子供の頃に親から習ったろ?」

「そ…それは、まあ…」

「それじゃ、仕方ないな。助けることはできない」

「そんな!」

私はすごい勢いでせまってくる2人を見て、男を見た。しばらくたっても動かない私をみて、男はため息をついた。

「じゃ、まずはその血をこの湯に流すことだな」

私は言われたとおりに血を洗い流した。男は薄く笑って立ち上がった。

「どれ、仕方ない。目を覚まさせてやろう」

男は2人ののどを広げた腕にひっかけ、どこかへ行ってしまった。

 1人残された私は、しばらくその場を動かなかった。

 しばらくたって、声が聞こえた。

「おまえはいつまでそうしているんだ?」

「えっ!?」

さっきの3人とは違う声がした。

「俺はさっきのあいつとは違って、風呂はきちんと入るんだ。さっさと出てってくれないと困るのだが?」

「あ…すみません」

どこかへ行くと言っても、ここがどこかもわからず、行く場所がない私にとってはどうしようもできない事だった。

「おまえ、さっきあいつに助けを求めてたな?」

「は…はい」

「いいことを教えてやろう。おまえがタイガに血を吸われていた時、助けたのはあいつだ。少しあいつに感謝しろ」

「えっ!?……はい。ありがとうございます」

私は急いで風呂場を出た。私はあの初対面の人に対して好感度が上がった。

 こんにちは、桜騎です!今回は堂々と2000文字を過ぎてしまいました。飽きてしまった方、すみません。次回はヴァンパイア全員の自己紹介になると思います。遅くなりましたがよろしくお願いします!

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