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ドラゴン狩り

 最強種、その末端ドラゴンの本気ブレスでビシリ、とうとう結界にヒビがはいった。これで7発目だが、十分に耐えた方か?


「GYa、GYAAAAAaaa!!」


 良い加減疲れたアホドラゴンの次なる攻撃は爪での殴打。ヒビのはいった結界をガツガツ、引っ掻き回される。


 始終「逃げよう!逃げよう!」とアクルナは言ったが、今更逃げる気など毛頭無い。ウルドが″ドラゴンの肉″で釣れた今、倒す以外の選択肢は無い。


「まずは結界から出ろ。ドラゴン狩りはそこからだ」


「……え……ここから、出るの?」


「そうだ。ほら、さっさと行け」


 ウルドが戦うならまずこの結界から追い出す所からだ。グイグイ押して追い立てているが「ひっ⁉」とドラゴンに怯えて、弱虫めが一歩ニ歩と下がって来る。


「何を恐れる。こんな矮小なドラゴンなど高が知れている。ひょっとしたら攻撃すらも効かない手合いだぞ」


「……でも」


「はぁー、お前は欲望に強くとも精神が弱過ぎるな」


「キラ、言っておくけど人間がドラゴンに出会ったら逃げの一択だからね。普通は戦わないからね」


「ふん、そうだとしてももうお前は人間では無いのだ。怖いなら目をつぶっていろ。結界の外に叩き出してやる」


「……わかった……」


 ようやくウルドが腹を決めたようだ。ジリジリと外にまで押してやると、最後は「……〜〜えいっ」と半ばヤケクソ気味に結界の外に出た。


 となると必然的にドラゴンのターゲットは結界からウルドへと変更される。ブンッ、耳障りな風切り音と共に、ドラゴンの腕がウルドへと迫る。


「……わわわわっ!!」


 とろとろとモタモタ、しているウルドにドラゴンの横薙ぎ爪攻撃が直撃し、無惨にも体の至る所をバラバラに引き裂かれ、その圧倒的な腕力をもって遥かなたにまで吹き飛ばされ、呆気なく絶命する ─── 。


 と、脳足りんドラゴンではこの位の未来予想図がせいぜいか?


 俺は横薙ぎに振り降ろされるドラゴンの腕を見ながらそんな事を考えていた。


 †


[三人称視点]


「……あれ?」


 中身の精神は聖女「キラ」であり、現在「ウルド・パトリー」を名乗る【吸血鬼】。


 彼は、ドラゴンの鋭利な爪を利用した攻撃をモロに食らっても出血すらせずにケロッ、としていた。


「GYAAAAAAAA!!」


 2発、3発と続けて容赦無い攻撃が降り注ぐ。


 そんな猛攻の最中、ドラゴンははてと首を傾げる。


 おかしな事に、当てれば当てるほど、ウルドの表情は安心感でどことなく和らいでいくのだ。


「GYA……?」


 こんな獲物初めてだろう。


 本人でさえ、このラッシュで無傷なのには驚いているのだから。


(……【魔王】様、凄すぎ)


 中身の精神は、世界を支配した【吸血鬼】。現在は聖女「キラ」を名乗る少女。そんな元【魔王】が何処までデタラメな存在だったのかを再認識する。


「……GYAAA」


「自分の攻撃が全く効かん。こんな奴初めてだ。ここはいったん退いてから様子を……」そう考え、ドラゴンが一時期的に攻撃の手を緩める。


(えっと、″ハエを追い払うように″……だっけ?)


 そのタイミングで、ウルドはふと【魔王】が天使を組み伏せた時の武勇伝を思い出した。そしてそれを再現すべく、手始めに肩に乗っている爪を跳ね除けてみる。ハエを追い払うように。


(えいっ……)


 少ない動作で何気無くペイッ、と。


「 ─── GYAA!?」


 瞬間、叩かれたドラゴンの腕は、あたかも引っ張られるようにすっ飛び、その影響でぐらっ、と体のバランスを大きく崩した。


 これでは退くに退けない。ドラゴンは冷や汗を垂らしながら焦った。たった一手でこうも追い詰められた。


(……それから、こう?)


 ドラゴンの心情? そんな事は梅雨知らずのウルドは、最近馴染んできた体から、一生懸命″パンチ″の記憶を呼び起こし、それを払いからの一連動作で実践する。


 ヒュッ、と思ったよりもスムーズに体が動き、洗礼されたパンチがぐらり、ぐらつくドラゴンの肩を正確に狙った。



 パン‼ゴバキャアアアァァァ



「GYA……?」


 肩パン炸裂。


 ドラゴンは肩から胸までをまるっとくり抜かれ、ど派手な音と共に吹っ飛んだ。「理解不能」それがドラゴンの断末魔。


「……え」


 理解不能はパンチを放った本人もまた同じだ。口を開けてホケー、と惚けている。


(うそ、倒したの? んな馬鹿な……)


 即死。

 まごうことなく即死した。


 ウルドがそれを認識するより早く、返り血が雨のように辺りに降り注ぐ。


 勝利の余韻。と言うよりは、頭に大量のハテナを抱えながら全身でそれを浴びた。


(私が、ドラゴンを……一発で……?)


 頭の上で小鳥がピヨピヨ回る。完全完璧にこんらん状態。降り注ぐ返り血など気にもならない。


「ドラゴンを吹き飛ばすって【魔王】様の体はどんな構造してんの……」


「俺の体なのだ当然だろう」


 ハッ、とウルドが気がくといつの間にかキラとアクルナがすぐ側まで来ていた。


「ウルド手を出せ」


「……え?」


 突然のキラの催促に少し戸惑う。


「いいから両手を出せ」


「……はい」


 言う通りに両手を出す。「【魔王】様自身であるこの体は一生【魔王】様の為にある。捨てたような人生をもう一度与えてくれた恩人に報いる為に。せめて、私が捨てられるまでは【魔王】様の為に自分は有りたい」そう願い誓ったウルドに拒否の意思など全くもって有る訳が無い。


  ─── ペロリ


 はずだが、まさか差し出した手を舐められるとは知らず、「……いっ⁉」と咄嗟に引っ込めてしまったのは命令違反だろか?


「……え?、え?」


「動くな大人しくしていろ」


「……え、うっ」


 ペロペロ、またもキラに手を舐められる。もはやこれに抗う術はなく、ゾクゾクする感覚をただただ我慢する。


「キラ! な、なにしてんの!?」


「ウルドに付着したドラゴンの血を舐めとっている」


「ダ、ダメ! ダメ! ダメ! そう言うのダメだから! キラがまだ子供だからって男の人を舐め回すなんて……」


「おい、その言い方だと俺がいかがわしい事をしている見たいではないか。男と言ってもこの体は俺なんだぞ。自分の手を舐めてなにが悪い」


「元は自分の手でもボクからすれば十分にいやらしいよ!」


「当事者からしても十分にいやらしいです恥ずかしいですもう舐めないで下さい」とは言えず、ウルドはアクルナを心の中で応援する。


「今更武具にどう思われようと関係あるか。お前は暇ならあのドラゴンの血を採取して来い。こんな柔らかい牙では品良く血を吸う事もできん」


「ぐぬぬ、そんなに品良く血が吸いたいなら、こんな飛び散る倒し方じゃ無くてもっと綺麗に倒す方法があったんじゃないの?」


「当たり前だ。今のウルドに使いこなすのが難しいだけで方法はいくらでもある。下手に使えば結界を突き抜けてこちらまで被害を被るがな」


「あらら、そりゃダメだ」


「……結界をつき破る魔法が……【魔王】様の、最強?」


「それは違うな。エクスプロージョンとブラックホールは最強では無いが俺が好んで使っていた魔法だ。エクスプロージョンは全てを木っ端微塵に爆破する。これを戦争中に使用して敵兵を一度に殲滅するのが最高の愉悦なのだ。ブラックホールは全てを吸い込む魔法だな。魔力の消費は多いが、一度に四方八方を片付けられるのが強味だ。上手く使えば色々と応用も効くしな。特に、敵兵が吸い込まれるまでの悪あがきや、断末魔が最高に心地良いのだ。体の底から至福を感じる」


 もしも2人の精神が元に戻れば、フードエリアでキラがするであろう満足顔でそう語る。


「キ、キミはつくづくドSだよね。いたぶるのが趣味の変態じゃないのかい?」


「む、変態とは随分な言い方だな。俺は変態ではないぞ。と言うかお前はさっさとドラゴンの血を持って来い。ついでに魔石とやらもな」


「はいはい。分かったからその体でそう言う趣味に走るのだけは控えてくれよ」


 そんな言い合っている2人の傍で、教えて貰った魔法を脳内保存するウルド。いずれ使う機会が有るかもしれない。そんな時に【魔王】様の役に立つのだ。そう思いながら頭に入れる。加えて【魔王】様のフェイバリットマジックなら覚えたい覚えなければならい。そんな使命感だか願望だかも数割だ。


「……ブラックホール、と……エクスプロージョン」


 つぶやいた瞬間、魔力の1割が体内から吸われる感覚。


「……あ、まずっ」そう思った時にはもう遅く、ドラゴンとの死闘を繰り広げた戦場跡地に『全てを木っ端微塵に爆破する光』と『全てを吸い込む闇』この二つの魔法が同時に

─── 発動した。

ドラゴン狩りでした。次は魔法の暴発にドラゴンの後処理です

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