デートⅡ
「夕飯はどこ行く?」
「今日は…んー、ピザが食べたい」
「了解。おすすめのとこ、あるよ」
わたしと隆太のお出かけは、あっという間に過ぎた。
(楽しかった)
そう自然に思った。
そして思う。
(もしかしたらわたし、もう隆太の事好きだったりしてね)
クスクスと笑うと、隆太がわたしを不思議そうにのぞき込んだ。
「どうした?」
「なんにも」
なんだこいつ?みたいな目をわたしに向けた隆太。
隆太のくせにむかつく。目つぶししたい衝動に駆られるが、我慢我慢。
小さく深呼吸をした時だった。
「沙良?」
ドクン、と心臓がなった。
この声。わたしを揺れ動かす声。いつまでも変わらない声。
「了…」
そこには数か月前と変わらない了の姿。愛しかった姿。彼はやっぱりというかなんというか、川崎さんと一緒だった。ご丁寧に手まで繋いで。川崎さんが了に気付かれないように小さくお辞儀をしてきた。
了は隆太とわたしの再会を純粋に喜んでいるようだった。
「久しぶり!隆太!お前なんで全然連絡くれねーんだよ。沙良も久しぶりじゃん!会社どう?たまには実家帰れよ!」
「了、もう…」
川崎さんがわたしの曇っている表情に気付いたのか小さく了の裾を引っ張った。でも、了は気付かない。
はやく、はやく。
ここから去ってよ。
あなたの事はもう諦めた。
なのに、何であなたは。
「でも、沙良に会えてうれしいわー。久しぶりだもんな」
わたしを惑わせるの。
「てかさ、隆太と沙良って付き合っ「違う!!」
さえぎったのは反射に近かった。
脳みそで判断する前に、考えるより早く否定していた。
隆太が息をのむのが分かった。
4人の間を沈黙が支配する。
「了。行こう」
今度こそ川崎さんが了の裾を強く引っ張った。
「あ、ああ。じゃあな。2人とも」
「ああ。またな」
楽し気に去っていく2人。
残されたわたしたちの間にははっきりとした気まずさが残った。しばらくして隆太が口を開く。
「…ごめんね」
「なんで謝るの?」
「いや、俺ちょっと調子に乗ってたかもって」
「…」
「沙良、まだ了の事好きだよね」
バッ、とわたしは顔を上げた。
違う、と言いたかった。
でも、さっきのわたしの言動からは言っても信じてもらえないと思った。
問いかける口調なのに疑問形じゃないのが証拠だ。
「…今日は帰ろっか」
「…うん」
気遣う口調の隆太。その気遣いが、今のわたしにはつらかった。