表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

あれから

 この頃、おかしい。

 何がおかしいかって聞かれると、具体的に答えられないけれど何かがおかしい。

 でも間違いなく言えるのは、原因が今わたしの目の前にいる中山隆太だということだ。


 わたしと隆太の出会いは3か月くらい前。その時のわたしは人生で一番辛いときを味わっていて、側に誰かにいて欲しかった。そして側にいてくれたのが、写真に写るわたしに一目ぼれした隆太。

 彼はわたしが人生で一番辛いとき、すなわち高校生の時から思っていた彼への失恋の時、泣き崩れていたわたしを抱きしめて、「1年後には沙良ちゃんと結婚するつもりだから、俺のところへ来て」と、お前はどこぞのチャラ男だよとハリセンで頭を殴りたくなるようなことをわたしの耳元で真剣にささやいた。

 普段のわたしなら、「ふざけんな」と張り倒していたが、わたしも弱っていたのか、好きになったら告白するよと至って真剣に答えてしまった。

 あれはその場の空気に飲まれただけだと信じたい。だってこんなバカな女みたいなセリフを真面目に言ってしまったという事実に今でも壁に頭をぶつけたくなるのだ。

 しかし

「弱っていたとしても、好きでもないはずの男に抱きしめられたのに、ああいう返しをしたんだから、好きでしょ?」

 という人が出てくるかもしれない。

 断じて違う。わたしはヤツに恋愛感情など抱いていない。

 隆太とはあれから、週1ペースでご飯に誘われ食事をしているが、恋人みたいなムードになった事は1度もないことがいい証拠。

「かわいいね」

 とか言われても、どうしてもその隆太が持つ独特の軽さがそれに真剣さを加えない。

 だからわたしは

「かわいいね」

 と、挨拶代わりに言われるそれに顔を赤くする事なんてせず、笑顔で

「ありがとう」

 と返す。

 ある時、わたしたちが食事に行ったとき、隣の席にいた会社の同僚がわたしたちの関係を聞いたことがあった。その時わたしは答えることが出来なかった。

「…なんだろうね」

 こんな言葉にするには難しすぎる関係にしているのもわたしだということは重々承知していた。

 いっその事、彼への恋愛感情を自分自身に植え付けてみようか、なんていうバカげたことも考えたが、それは彼に対してあまりにも失礼だと思った。

 隆太は隆太で何も考えてなさそうな笑顔で毎回、わたしを誘ってくるし。その笑顔を見ると、彼との関係で悩んでいる自分がバカみたいじゃないかと、いつもわたしが思っている事を彼は知っているだろうか。

 バカらしくなって、いつも考える事をやめるのもわたしの気持ちが片付かない原因の1つなのに。

 なんにせよ、この問題を解決しなきゃ、昔の冷静なわたしが戻らない。

 今は早く、わたしの気持ちを整理しなくては。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ