さざなみ１
DEAD PEOPLEのメンバーたちが
引越しのアルバイトをはじめて
2週間が過ぎていた。
その間洋子は空いてる日に
もらったエレキギターを抱えて
大介の家を足げく通い、
説子は説子で、謙二から打楽器が
どれほど種類があるのかレクチャー
を受けて、その多さに戸惑っていた。
謙二が持っているだけでもアゴゴ、
カウベル、カスタネット、カホン、
ギロ、コンガ、シェイカー
など30種類に及んだ。
彼女はそれらを全部覚える
のは不可能であると感じていた。
また、他のメンバーたちも
引越しは初めての経験だったが、
短い期間だったのに、正社員たちに
別れを惜しまれるまでになっていた。
そして8月も中旬を過ぎた頃、
2週間ぶりにメンバー全員が揃った。
みんなが集まったところ
でユキチが口火を切る。
「みんなお疲れさん、
元気そうで何よりだ。
まず、洋子さんと説子さん
から合宿の話がどこまで
進んでいるのか、説明してくれるか」
すると洋子が状況
を説明しはじめた。
「まず、場所ですが
軽井沢に決めました。
ロッジもいいと思ったのですが、
貸別荘のコテージの方が物件も
多く、条件面でもまずまずなので
コテージに的を絞って探してみました。
マイクとかアンプやドラムの
バンド楽器セットを利用すると
運搬を含めて1日30000円かかります。
これに食費は1日みんなで5000円。
平日の2泊3日のパックで、
チェックインを13時にして、
チェックアウトを12時にするば、
コテージの費用は
80000円で済みます。
それに楽器レンタル2日で60000円、
食費が15000円。新幹線の交通費往復
が約12000円で合計が239000円。
1人約35000円で今回の合宿が可能です」
それを聞いてユキチが
「それじゃ手ぶらでマイク
とかアンプまで借りられて、
交通費も含めて1人35000円でいいのか？」
「はい、大丈夫！」
と自信たっぷりの洋子。
さらにユキチが、
「それだったら十分バイト代で
まかなえるぜ。それにアンプや
楽器までコテージに運んでもらえるんだ」
「はい」と洋子。
「それりゃ助かる」
と大介も思わず声を上げる。
ユカが
「場所は押さえてあるの」
と質問すると、
「はい、新幹線も17日なら
7人分まだ予約できます」
「洋子でかした」
と大介がいうと実も、
「よし、みんな
それで決まりでいいか？」
全員で、
「ウオー」と叫ぶ。
説子がiPhoneで
「このコテージです」
と写真をみんなに見せて回る。
そして実が、
「大介、洋子さんにちゃんと
ギターを教えているのか」
と確かめると、
「ああ、大丈夫だ。
コツをつかむのが早いし、
リズム感も悪くない」
「謙二はどうだ！」
「今基本的なパーカッション
を教えているところ。
彼女は電子パーカッションに
すごく興味を持っていて、
そこを伸ばしていく
とバンドカラーとしても結構
面白いんじゃないか、と感じてる」
「なるほど、エレクトロニクスを
取り入れるなんていいところに
目をつけているじゃないか。
サウンドのイメージを膨らませる
のにもいいアプローチだと思う。
合宿までに簡単に取り組める曲を
3つぐらい用意するから、みんなも
そのつもりで臨んでくれ」
と実が期待を込めていった。
