幻想3
昼ごはんをたらふく
食べて2人は中華そば家を出た。
そして商店街を並んで歩いていた。
「先輩、ごちそうさま」
「今回だけだぞ、今度一緒に
組んだら割り勘だからな」
「わかってますよ先輩、
ところで斎藤さんは
どこの大学なんですか?」
「國學院大學文学部の
二回生だっていってたな」
「あれ、大学生はなんで2年生
といわずに2回生というんでしょう」
「お前、俺に聞くなよ、
わかるはずねえじゃねえか。
大学に行ってないんだから」
「たぶん意味があるのでしょうね。
先輩、斎藤さんに聞いてくださいよ」
「そんなこと聞いても普通の
女子大生がわかるはずねえだろ」
「大学生活のことは聞いたんですか?」
「もちろん聞いたよ」
「じゃあ、サークルとか入ってるんだ」
「ああ、テニスサークルだっていってた」
「えっ、テニスなんてサークルとは
名ばかりで、ナンパ目的だって
よくいわれてますよね」
「ああ、確かに飲み会
が多いっていってた」
「じゃあ、イケメンの
ライバルが多いはずですね。
だって彼女目立ちますもん」
「おまえ、俺に
プレッシャーかけてるのか」
「だって普通そう考えるでしょう。
だから美人を彼女にすると心配なんですよ。
いつ誰に取られるかわからない、と」
「うん、確かにそうだな。
俺みたいな男に夢中に
なってくれるはずもねえ」
「先輩、聞いていいですか」
「なんだよ改まって」
「今までに先輩に夢中に
なった女の子っていますか」
「いるはずねえだろ。
顔も勉強も運動も取り柄のない俺が…」
「でも、高校は出てるんですよね」
「ああ、だけど、頭が悪かったから
工業高校だ。俺たちのクラスに
女なんか1人もいなかった」
「ヘェ〜、
でも中学にはいたでしょ」
「ああ、確かにいた。
でも性欲がギラギラで、
同級生より先輩に憧れていた」
「なんで先輩なんですか?
隣にいる女の子の方がハードル
が低いじゃないですか」
「胸のでかいぽっちゃり
とした美人がいたんだ」
「先輩、ぽっちゃり派ですか?」
「ああ、できれば
胸が大きいほうがいい」
「でも、斎藤さんは普通ですよ」
「彼女はそれ以上に魅力的さ」
「ふーん、顔だけで決めるんだ」
「お前、そんなわけねえだろ」
「でも、そうじゃないですか」
「性格とか人間性も大切だ」
「先輩は一体女性に
何を求めているんですか?」
「やすらぎかな」
「えっ、いつ他の男に
取られるかもしれないのに、
やすらぎなんかあるんですか?」
「お前も揚げ足をとるな」
「だって先輩、誰が見ても
いい女というのは、それだけ
男を引き寄せるわけですよね。
そんな女性の場合、心から
虜にするくらいの魅力がなければ、
結局幸せになる確率が
低いとは思いませんか?」
「お前も俺に
諦めさせたいのか?」
「違いますよ、斎藤さんに
心から愛されればいいんです」
「高校生にそんなこと
をいわれたら、いくら俺でも
少しショックを受けるぜ」
「とても無理だと?」
「ああ、当たり前だ」
「じゃあ、今から頑張れば
いいじゃないですか」
「お前も高校生だな、
物事の本質が全然わかってない」
「先輩こそわかってない
じゃないですか。いつも彼女が
喜ぶようなことを
考えて行動すればいいんです。
最初は小さくても、
できることを一つ一つ
積み上げていけば、やがて先輩の
存在が大きくなっていくんです。
それができないなら、
初めから手を出さないことです。
中途半端な気持ちは、
お互いが傷つくだけですから」
「いうのは簡単さ、
でも、そう簡単には割り切れない」
「さあ、彼女の家に着きましたよ。
営業のスマイル、スマイルでいきましょう」




