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錬金術と付与魔法

ルールの説明が下手ですみません。 


「は、はじめまして貴族さま。ロンダの子、ハンスと申します。よろしくおねがいします。奥で寝ているのは妹のアンナと申します。」


 年の頃は12才ぐらい、細身で笑えば愛嬌のありそうな可愛い顔の少年が、緊張のためか顔を強ばらせてお辞儀をしてくる。その奥ではハンスによく似た顔の6才ぐらいの女の子が人形を抱きしめて寝ているのが見える。


「私はエイジアと言います。私の方が年下ですし気にせずに普通に話していただいて大丈夫ですよ。」


 にっこりと安心させる為に微笑みながらハンスに言うのだが、逆に緊張させてしまったのか顔を赤らめてうつむいてしまった。


「いえ、父より接待を申し付けられておりますので、失礼な態度は取れません、どうかこのままでお願いします」

「そうですか、ところで、お水を分けていただきたいのですが、かまいませんか?」

「あ、はい、湯浴みはできませんが、体を拭くぐらいは用意できますので、少しだけまっていてください」


 そう言って天幕から出て行こうとするハンスを呼び止める。


「いえ、調合用に水筒分ぐらいの量でお水が欲しいのです。 今日摘んでおいた薬草をポーションにしておきたいのです」

「調合、、、 エイジアさまは、薬師さまなのですか?」


 ハンスは驚いた顔をして戻ってきて私の側に来ると尊敬の眼差しで見てくる。


「薬師とは違うのですが、ポーションは作れますよ。あとはお水があればですが」

「あ、はい。今すぐに」


 慌てて天幕の隅に置いてあった荷物から皮の水袋を持ってくると私に差し出して、期待の篭った眼差しでこちらを窺いながら聞いてくる。


「あ、あの、お邪魔でなければ、調合を横で見ていても宜しいですか? 父は僕を商人にしてあとを継がせたいようなのですが、僕はいつか薬師になって病で苦しんでいる人を助ける仕事に就きたいのです」

「ん、んー…… 私の調合は薬師の調合とは違うのですが…… そうですね、私の調合を見ても誰にも言わず秘密にしていただけるのであれば、かまいませんよ」


 ゲームとしては何度となく行ってきたポーション作成ではあるが、現実として作るのは始めてなのでちゃんと出来るか不安はあるのだが、失敗することも無いだろうと許可してみるが、7才でこんなことができると言うのは異常なことのはずなので口止めだけはしておく。


「は、はい! 絶対に誰にも言いませんのでお願いします」


 ハンスは許可してもらえるとは思っていなかったのか、驚きと喜びの顔で頭を下げる。


「天幕の中だと妹さんを起こしてしまいかねないので、外で行いましょう」


 そう言って私は天幕を出て裏手に回り地面のむき出しになっているところに座り込む。ハンスはまるで忠犬のように私の横に座り込み待機する。


 ハンスの死角になる方のマント(上着)の内側に手を入れてストレージを念じて鞄を取り出し、中からボールペンとルーズリーフを何枚かと、ジュースの空きペットボトルを取り出し鞄をしまいなおす。


「私のやる調合は錬金術と言われるもので、薬師が機材を使って調合するのを魔法で簡略化して行うのです。まず調合の為の魔方陣を用意します」


 ナイフで指先を刺して血をルーズリーフに垂らし、ボールペンと共に地面に置いて準備完了。




 話がちょっとはずれるのだが、このゲームには《生体金属の取得》と言うものがあり一定のSPスキルポイントを支払い知性ある金属を手に入れることが出来る。この金属は1つのジョブとそのスキルを持っており取得者の体を覆う防具の形状をしている。稀に取得者と融合している場合もある。

 私もこの生体金属を持っていてジョブは《錬金術士》だ。 そして、この生体金属の取得に纏わる、GMと相談したこのキャラクターの背景設定を話そう。



 私は魔人種の魔血族と言う種族で、血液は高濃度の魔力を内包しており、その生き血を飲めば魔力が上がると噂され、高レベルの冒険者や王族に乱獲され一族は絶滅したとされている。その種族のわずかに残った生き残りだったのだが、運悪く冒険者に魔人種だと知られてしまいモンスターとして討伐されてしまった。そして討伐証明部位である魔核をえぐり取られ瀕死だったところを師匠に助けられ、研究中だった生体金属を魔核の変わりに移植されたのだった。


 この生体金属は師匠が半生を掛けて研究した錬金術によって作られたもので、自分の血肉を使い持っている知識やスキルを移した、いわば自分の経験の軌跡と言えるもので、これを子か弟子に譲り一子相伝をと考えていたようだ。ただ、研究に没頭して子をなすこともなく、受け継ぐものも居なかったため、瀕死だった私に子の役をさせようと思ったのだろう。


 一命を取り留めた私は師匠に保護されて北の森に隠れ住んでいた。魔法などはこのときに覚えた。そして、師匠が他界する間際に「世界は広い、自分の目で見て感じて、更なる高みに上れ。そしていつか自分の子に生体金属を作って伝承をして行ってくれ」という思いを受けて森をでて世界に出て行った……のだが、世間知らずな私は早速盗賊に捕まって奴隷商人に売らそうになった。その窮地を後日仲間になる冒険者に助けられる。そういう設定だった。




 私は、力を抜いて深呼吸をし、生体金属の魔核に意識を集中さる。魔核から心臓のような鼓動を感じる。この鼓動に合わせて魔力を血のように全身に循環させるイメージで魔力を活性化させる。


 そして魔核から錬金術の知識が流れ込んできて、まるで熟練者のようにスムーズに練成が行われていく。


 体から流れ出た魔力が光り輝き、その中にルーズリーフ等が飲み込まれていく。時間にして十秒ほどで光が消えて1メートル四方の紙になり中央には血とインクが混ざった魔方陣が描かれている。


 魔力が一気に抜け軽く目まいがする。結構な量の魔力を持っていかれた。魔方陣なしの練成は魔力の消費多いな、だけど、このままポーションも作ってしまおう。ここまでやって、魔力回復するまで待ってとか、恥ずかしくて言えないし。


「そして、この魔方陣にさっき頂いた水と空の容器ペットボトルと強度アップの為に、適当な石を置いて、あとはお昼に摘んでおいた薬草を並べて……練成!」


 この世界の魔法はイメージが肝心だ、薬草は乾燥し粉末になるまで細かく砕き水と魔力を配合する。ペットボトルと石は融合して5つほどに分割して小さいボトルに形成し薬液を詰め込んで完成とする。このイメージを強く念じる。

 光が収まると小瓶が5本魔方陣の上に現れる。

 「知る者」をアクティブスキルとして魔力を払って起動して、出来上がったポーションと自分のステータスを確認する。

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HP 40/41

MP 74/179

_________________

_________________

ポーション(8級) 5本

HP回復20

品質保持期間1年 以降半減

CPキャパシティーポイント

_________________


 練成中にも目まいがしたけど2回の練成で100ぐらい魔力を持って行かれてるのかな、ポーションはちょっと効力が弱いな、コレじゃたいした金額にならないし魔力もまだ残ってるからもうちょっと性能を引き上げるか、CPは2あるから神聖魔法を付与できそうだ。

 私はルーズリーフを1枚出して魔力を込めていく。


 「カードエンチャント起動、神聖魔法 エード魔力展開、封入」


 神聖魔法特有の白い光がルーズリーフに吸い込まれていき、光が収まると緑の地に白い魔方陣が書かれたトランプサイズのカードが出来上がる。


 物質には大なり小なりCPキャパシティーポイントが設定されている。

これは魔法をどこまで封入できるかを表した容量のことで、SPスキルポイントが設定されている魔法を、容量の許す限り封入することが出来る。ただし、1つの物品には1つの魔法しか入らない。 複合魔法は1つの魔法として入れることができる。 すでに魔法が入っている物品に、別系統の魔法を入れると物品は破壊されるが、同系統であれば上書きされる。



・神聖魔法 エード SPスキルポイント1 消費魔力4 効果はHPを10p回復する。

・付与魔法 カードエンチャント 消費魔力4 効果は紙などに魔法を封入しカード化する、発動を命じるか、カードが破損すると封入された魔法が開放される。

・付与魔法 アイテムエンチャント 消費魔力はカードに封入された魔法の消費魔力分で、カードを消費して魔法をアイテムに焼き付ける。


 

 エードのカードを並べ、その上にポーションを置いて魔力を込める。


 「アイテムエンチャント起動、対象はポーション、焼き付け」


 カードが白く輝き光がポーションに吸い込まれていく、次第に光が弱くなりカードが空気に溶けるように消えていく。

 出来上がったポーションを見る。

_____________

HP 40/41

MP  9/179

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_____________

 HQハイクオリティーポーション(8級) 5本

 HP回復30

 品質保持期間2年 以降半減

 聖属性

 CP1

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「ふぅ、こんなところかな、どうかな? あまり参考にはならないかも知れないけど、ポーションをこういう風にも作ることが出来るわけだけど」


 魔力を大量に消費したせいか体が凄くだるいが心配させない為に何事もないようにそう言って振り返ると、唖然とした顔でフリーズしているハンスが居た。


「ハンス君、大丈夫かい?」


 手を目の前に振って声を掛けると漸く気がついたのか、私の手を掴む。


「エイジアさま、す、すごいです。こんなの始めてみました! 何がどうなってるのか全くわかりませんでしたが、こんなすごいこと王都に居たときにも見たことがありません!」


 掴んだ私の手を振り回しながら、興奮で顔を赤くして早口でまくし立てる。


「あ、あの、ハンス君落ち着いて、手が痛いよ!」

「う、うあぁ、す、すみません。興奮のあまり、つい……」


 ようやく気づいたのか私の手を離して、地面に額がつかんばかりに頭を下げる。


「いや、もう大丈夫だから。それより、魔力を使ったから眠くなってきたんで、そろそろ天幕にもどって寝ようか」


 急激に襲ってくる睡魔と闘いつつ、そう言って立ち上がりハンスの手を取って天幕へ促す。


「あ、はい。そうですよね、明日も早いですし、そろそろ寝ましょうか」



 こうして、異世界第一日目が終わる。


お読みいただきありがとうございます。


不定期更新ですが、週1ぐらいで更新できるようにがんばっていきます。


一部改定しました。

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