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冒険のあと  作者: 鈴木祥
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本当に為すべきことは(後編)

魔王の脅威が去った今、

次に起こるであろう事は、争乱。


この豊かなスラルシ地方が、

ここ数年、この世界の共通の敵が魔王だったからだ。


魔王が倒れた今、魔王によって疲弊した国は、

国力を戻す安易な手段として、このスラルシ地方を

狙うだろう。


特に、隣国アラスルラの賢王、テラの父王が亡くなった今、

アラスルラを狙って、各国は動き出すだろう。


アラスルラとトラスタ国は友好国である。

文化と商業のアラスルラと

農業と産業のトレスタ王国。


車の両輪のように、スラルシ地方の豊かさを担ってきた。

お互いになくてはならない、国なのだ。


実際、魔王が降臨する前、トルーとテラに婚約の話が内々にあった。

両国の統合のため。


民族も言葉も、習慣も近い両国は、

統合してもあまり問題はない。


他国からの侵略から自国を守るため、両国の統一というのは

もう何代も前から、話題にのぼっていることであった。


そう、トラスタ王国・アラスルラ、そしてスラルシ地方にとって

長い目で見れば、この時期に、両国の王と女王が婚姻を結び、

生まれた子どもによって、両国を統一することが、

一番良いことなのだ。


だが、そのためには、アヤメは邪魔なのである。


アヤメを差し置いて、トルーとテラが婚姻を結ぶことは難しい。


異世界から来たアヤメには、居場所がない。

冒険が終わり、救世主となったアヤメは、

この世界では、トラスタ王国に居るしかないのだ。


そして、救世主であるアヤメはトラスタ王国で

大事にされなければならない。


その側で、トルーとテラが婚姻を結ぶことは難しいだろう。


だから、この同盟にとって、アヤメは邪魔なのである。


冷静に考えれば、魔王を倒した今、

アヤメには、早く自分の元居た世界にお帰り願うのが一番なのだ。


もしも、冒険の旅の間であれば、

こんな考えは、ワームス自身、笑い飛ばしたであろう。


アヤメもトルーもテラも、大事な仲間なのだと。


だが、冒険を終えた今、

ワームスには、その考えを笑い飛ばすことなどできない。


それにだ。


アヤメの話によると、アヤメの家は、この王国より長い歴史と伝統があり、

アヤメはその伝統を継がなければならないという。


それに花が関係するようだが、それが何なのか、ワームスにはわからない。

ただ、自分やトルー、テラ、ユイヤー、ソバルナと同じように、

アヤメも帰らなければならない場所があり、

やらなければならない役割があるらしい。


ワームスにわかるのはそれだけだ。


だからこそ、教えて、元の世界に帰る道が開かれたことを教えたら、

危険を冒しても、アヤメは帰らざるを得ないだろう。


アヤメが好むと好まざると。


冒険が終わり、皆が元の場所で与えられた役割を担うことを選んだように、

アヤメも元の世界で与えられた役割を担うことを選ぶだろう。


それが、自分たちなのだから。

ソバルナとテラが別れを選んだように。


でも、もし、元の世界に帰る道がなければ、

それは、それで、アヤメもトルーも幸せになるだろう。


2つの国が、婚姻という形で統合の道を選ばなくても、

ゆるやかな同盟関係でも、両国を守ることもできるだろう。


そして、ソバルナとテラというふたりもいつか

結ばれる日がくるかもしれない。


ワームスは、

聖なる泉の門が開かれたことを

アヤメに伝えることが、自分の取るべき道なのか

それが、親友としてどうなのか、盟友としてどうなのか、

臣下としてどうなのか、

将来この国を担うべき者としてどうなのか、

自分が本当はどうしたいのか、

自分自身でも答えが出せずにいたのだった。





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