天蓋付きのベッド
白い部屋に差し込む朝日がまぶしくて、目を覚ました。
目を開けると、ベッドの天蓋が目に入った。
天蓋の支柱に施された彫刻は、とても緻密で。
・・・さすが、王子様のベッドだな。
アヤメは、心から感心した。
そして、その彫刻を見て思い出したのは、
アヤメの自分の世界の自分の部屋の欄間だった。
代々、続く華道の家元の家系。
その跡継ぎ娘がアヤメだった。
他人の出入りの多い、家。
大事な跡取り娘の部屋は、
両親の趣味もあり、鍵のかかる、
女の子らしい洋間へとリフォームされていた。
けれど、2間続きをひとつの部屋にリフォームした際、
間の欄間だけは、取り除かなかった。
そのあまりにも見事な細工ゆえに。
アヤメは幼いころ、その欄間が嫌いだった。
自分の部屋にそぐわないように思った。
思春期になるにつれ、
その欄間は、逃げたくても逃げられない己の宿命を
表しているようで、
できるだけ、目をそらして、見ないようにしていた。
だが、こうして、異世界へ迷いこみ、
この世界での混乱に巻き込まれ、
世界を安寧に導くという冒険を終え、
その困難な冒険を一緒に過ごすうちに
愛情を育てていった男と、
こうして、初めて、生まれたままの姿で
抱き合い、目を覚ましてみると、
あの欄間が懐かしく思い出されるのだった。