第一章 1話 【やらかしたかもしれないです】
初投稿です。よろしくお願いします。
「______承知いたしました、お父様。では失礼します。」
そう言って花毬は先ほど十四年ぶりに顔を合わせた、新しい側使えと供に部屋をでた。
そして、、、叫んだ。心の中で。
(ヨッシャァァァアアアア!!!!!!ようやくあの堅物から解放される!!神!!お父さん大好き!!初めて思ったけど!!!!)
先ほどのお上品な口調はどこかへ吹き飛んでしまったようだ。まあ、表に出さなければ好きにさせてもらって良いだろう。
そして、なぜこんなにもこの御令嬢、『 九鬼咲 花毬 』が喜んでいるかと言うと、一時間前に遡る。
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コンコンコンッ
花毬の部屋に素早く規則正しい三回のノックが鳴る。
「おはようございます、花毬お嬢、黒沢でございます。朝食を運んでまいりました。」
「どうぞ。入って頂戴。」
そう言った少女は桃茶色の少し短い髪の毛を高く二つに結い、二段になっている触覚、ぱつんと切りそろえられた重めの前髪。
そしてローズクォーツを溶かして入れたかのような淡いバラ色の瞳。それを縁取るカールしたまつ毛に少し吊り上がった眦は可愛らしさとどこか威圧感を感じさせられる。
対して黒髪黒目の側使えらしき人物がコロコロとワゴンの音を鳴らしながら部屋に入り、部屋のテーブルに朝食を置く。
「花毬お嬢、朝食をお召し上がりになられたら、書斎へ来るように、と信彦様から仰せつかりました。」
そう言った男の名前は『 黒沢 直哉 』、花毬が生まれた頃から世話をしてくれた側使えだ。苗字と容姿がよく合っているいわゆる顔整いだ。
こんなにイケメンに生まれてこれて羨ましい限りである。
(かれこれ十七年見てるけどやっぱり朝から顔面凶器すぎん?視力上がりそう。)
信彦様とは花毬の父だ。以上。
ちなみに花毬は様付けで呼ばれるのが苦手なため、使用人達もお嬢と呼んでいる。
部屋にあるかわいらしい猫足の椅子に座り、メープルシロップがたっぷりとかかったワッフルをナイフで切りながら口を開く。
「お父様から呼び出しねぇ、、、。
何の用かしら。この前お父様のお気に入りの骨董品を割ってし『花毬お嬢、失礼を承知でお話を遮れせて頂きますが、私の胃薬がなくなりそうです。』」
「あら、まだ一つも言い終わってないのに。」
「複数個あることに今更驚きませんよ。それより、今回は些細なことではなさそうですよ。ここ三か月ずっと思い詰めていたご様子でしたし。」
(さらっと些細なことって言ったぞこいつ。)
この通り花毬は外面を(本人は完璧にできていると思っている)お上品に取り繕っており、中身は少々口が悪いお転婆な十七歳である。
お転婆なのが皆に薄々バレていることを知る由もない花毬は、
(どうやら今回はまぢで不味いみたいだな~、)
(二週間部屋で謹慎しろとか?お父さんをそんなにも怒らせた原因はわからんけど。)
そう、花毬が十七年間生きてきて身に着けたものの一つは、
(今日のお父さんの眉間の皺的には今日晩御飯抜きかな~)
(あっ今月はお小遣い抜きになるかも。足音的にそうだ!)
というように自分に降りかかる罰、(いや、身からでた錆)を予想することだ。
(世も末、いやうちも末だなこれ。)
コツンコツンコツ
本日二回目のノックだ。誰だろうと思っていると、
「琴也だよ。入るね。」
有無を言わさず静かに入ってきたのは花毬の兄。『 九鬼咲 琴也 』だった。
(うわぁ~朝からめんどいのが来た。ワッフルの味がしない。今日の星座占い多分十二位じゃん。)
何を隠そう、この兄、重度のシスコンである。
青みがかった茶色の髪の毛を上半分ほど後ろでお団子にしてまとめ、深い海のような、見ているだけで吸い込まれてしまいそうな瞳。
すっと通った鼻筋に、薄く横幅が広い唇はほんのりとコーラル色だ。
こんな涼しい見た目をしておいて誰がシスコンだと思うのだろう。
琴也が食事中の花毬の前の椅子に腰かけ、頬杖をつきながら溶けてしまったようなうっとりとした顔で見てくる。
(シスコン、その顔面の無駄遣いしないで?その顔同級生の女子にみせてあげたら世のためになるよ?)
もうそんな視線に慣れてしまったと言うように花毬は黙々とワッフルを口に運んでいく。
「ご馳走様でした。」
そう言い終わったと同時に琴也が花毬の頬へと手を伸ばす。そして
「貰ってもいいかな?」
(疑問形にせずとも勝手にとるだろうが。)
どうやら頬に食べかすがついていたようだ。
琴也はその食べかすをぱくりとたべた。というのを想像するだろうが、
ポケットから出てきた小さなカラスの容器に、丁寧に、ガラス細工を扱うかのように入れた。
食べかすを。食べかすをだ。
(今日もきっしょい!!平常運転!!夢であって欲しかった!!)
そして何事も無かったかのように
「とってくれてありがとうございます、お兄様。では、私は着替えるのでまた昼食のときに会いましょう。」
と言い、部屋から追い出す。
(さあ~て、はたしてうちは何をやらかしたんだ、、、そこまでお父さんが思い詰めるまでのことをした覚えがない、、、)
そして、この後、二週間謹慎という予想が大きく外れることになるとは、思ってもいなかった。
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