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擬人化兵器少女たちの戦場に、貧弱ショタとしてTS転生した私は、それでも仲間を守ってみせる  作者: ねこ太郎


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第3話 おねしょた

――通路の奥、少し雰囲気の変わる区画へと入る。

 人数は減り、代わりに静けさが増していく。


「この先がブリーフィングルームだよ」


 コメットが指さした先には、無機質な鋼板の扉。ゴシック体でBriefing Roomと刻まれている。

 アンジュの足が、自然と止まった。


「大丈夫大丈夫!」


 コメットが背後に回り、ぐいっと背中を押す。


「ちょっと変な人いるけど、いい人だから!」

 

(え…?)


 聞き捨てならないティーアップを受けて聞き返す間もなく扉が開く。

 機械的な駆動音とともに、スライドする鉄扉。

 アンジュは小さく息を吐いた。


(まぁ、なるようにしかならないよね)


 そのまま、コメットに押される形で中へと足を踏み入れた――


 ――おっぱいである。

 でかいおっぱいなのである。


 入った瞬間、視界が柔らかい何かに埋め尽くされた。


「ふぐっ」


 息ができない。

 顔面が、完全に、埋まっている。


(え、なにこれ、え、なにこれ!?)


 理解が追いつくより先に、抱きしめられていることだけは分かった。

 しかも、かなりデカい(・・・)


 別に嫌ではないが

 しかし――


「ふぐぅ……」


(くるしい!!)


 限度がある。


 視界の端で揺れるのは、朱と白を基調とした豪奢な打掛。

 金銀の細工が妖しく光を放ち、見るからに高価な装いだ。


 だが、その着物は肩から大きく崩れ、白磁の肌を惜しげもなく晒している。

 飾るためではなく、見せて魅せるための装い。


 その佇まいは――まさに花魁。


「あぁん!もう、なんて愛らしいショタ(・・・)なのかしら! お姉さん、(あふ)れちゃう!」


 一体何が溢れるのか。


「ねぇ、さらっていい? さらっちゃっていい?」


(ダメな人だこれ!!)


 しかも口の端からよだれが垂れている。

 完全にアウトである。


「駄目ですわ信濃お姉さま、駄目ですから」


 後ろからその人物を羽交い絞めにして止めているのは、絵に描いたような縦ロールのブロンド髪。エメラルドの瞳に端正な顔立ちの淑女。

 肩章の入った濃紺のショートジャケット、フリルの覗く白いシャツとパンツスタイルの軍服。なぜか和装痴女をお姉さまと呼んでいる。


「こーら、しなのん、手離しぃや、あかんて」


 横から関西弁の女の子も参戦して、なんとかアンジュから痴女を引きはがした。


「あーん、意地悪ぅ…」


 無駄に艶っぽい声を出す。


 落ち着きを取り戻した3人から、自己紹介を受けた。


 アンジュに抱きついたお痴女は、信濃というらしい。

 艶めいた黒髪と血の色を落とし込んだようなガーネットの瞳。自らを不沈空母と名乗った。

 背が高く凹凸のある魅惑的な曲線が、厚い着物の上からでもよく分かる。


 信濃を羽交い絞めにしていたグローウォームは、現実で見たことのない金髪の縦ロール――イギリス出身らしい。

 横からこの子は駆逐艦だよ、とコメットが優しく教えてくれた。


 最後に、


「よろしゅうな!」


 と、日焼けしたスタイルのいい、関西弁の女の子が、ニカっと笑って握手をしてくれて挨拶を締めくくった。


 そして、コメット――

 彼女も自分が戦闘機なのだ――と言った。


 ――それから、信濃さんや、グローウォームさんがこの世界のルールについて教えてくれた。


 前触れもなく、空から落ちてくる少女達――世界はそれを兵器少女(ジゼル)呼ぶ。

 兵器少女――過去の人類兵器の名を冠した人ならざる存在。

 少女達は、その名に冠した兵器の能力を受け継ぎ、その逸話にまつわる特別な能力を保有している――それは現代の人類兵器では全く歯が立たないほどの超常の力。


 そして、アンジュもその一人である――と。


 兵器少女たちは、それぞれの国や企業、それぞれの組織に属し戦っている。 

 この世界は、戦争が高度に代理化した世界なのだという。

 勝てば、国家が保有する資源の価値が上がり、負ければ下がる。

 レートをかけて闘う。たった一度の敗北で、国の経済が傾くこともあるらしい。


(……なにそれ)


 荒廃した地上では資源が尽き、

 代わりに求められているのは――海の底。


 海溝炉(オルゴンコア)


 石油に代わる、新しい時代のエネルギー資源。

 それを求めて、巨大な空母が海を渡る。

 遠く、遠くへ。


(……つまり)


 ここは、ただの船じゃない。


(国の代表で殺し合いをさせられる船…っていうこと?)


 理解した瞬間、胸の奥がざわついた。

 知ってしまった、という感覚だけが、やけに重く残った。




―― 一時間後


 ショックを受けたであろうアンジュを船内の一室に案内し、少し休ませることにした。した、というより、コメットが強硬にそう主張したのだ。


 ――今は、アンジュちゃんも、きっと混乱してるから、休む時間を、考える時間をあげてください。


 信濃とグローウォームには、まだ説明しなければならない事や、確認したい事がいくつかあったのだが、しかし、それは今すぐ絶対に確認しなければならない、という程のものでもなかった――特に、子供であるアンジュに対しては。


 それに実をいうと、この船の中では、一番年下で、常に気遣われる側だったコメットが、今日はまるで姉か保護者のように小さな子供を守護している。

 信濃にはその成長がとても好ましく思えたのだ――ふと優し気に目を細める。


「そういえば、あの()のユニットタイプは何だったんですの?」

 ユニットタイプ――兵器少女(ジゼル)それぞれに生まれつき備わった系統のことだ。

 艦艇、航空機、戦車、要塞。兵器少女はいずれかの特性をもって|この世に産み落とされる。


「分っからへん。さっぱりや」


 アンジュという名前を元に、手元の端末で情報を検索する千早が首を振る。

 記憶を失っている兵器少女には、自身の能力やモチーフとなった兵器がなんなのかを理解していない者も多い。


「見た目からして、そんなに巨大な兵器ではなさそうだけれど…」


 もちろん、見た目だけで決めつけられる話ではない。

 けれど、まるで手がかりがないわけでもなかった。

 

「確か…以前、そのような名前の航空機を――…」


 グロ―ウォームが、その名を思い出そうとしていた、丁度その時、


――ただいま…


 アンジュを部屋まで送っていったコメットがに戻ってきた。

 なぜだか少し元気がない。


「あら、おかえりなさい。どうだった?」


 それは単純にアンジュの様子を伺う言葉だった。

 

「…いや…そんな、大して取り乱しては無かった」


 なぜか罰が悪そうに答えるコメット。

 そして、ごめん――と、消え入りそうな声で信濃に謝った。


「どうして?」


 きょとんとした顔で信濃は聞き返す。


「だって…信濃やグロさんは、色々聞きたいことがあったでしょう?アンジュに」

 

 私が余計なことを言って、邪魔しちゃった――と、コメットは落ち込んでいたのだ。

 きっと船室からこの部屋までの帰り道でいろいろくだらない事を考えすぎてしまったのだろう。

 なんだ、そんなこと――と信濃は優しく笑う。


「そんなことは、後からいくらでも聞けば良いのよ。

 それに、あんなに幼く尊いショタ(・・・)は、愛でて、慈しむのが世の慣わしよ」


 それは、犬だとしたら、耳を垂らしてしゅんとしょげている、いつもは元気なボーダーコリー。そんなコメットを気遣った言葉だったが、


「信濃はん、台無しや…」


 千早が残念そうに首を振り、


「お姉さま…」


 と、グローウォームが悲しげに失望の眼差しを向ける。

 しかし、そんな信濃の意図も、他の二人の言葉の意味もあまり理解していない、ちょっと間の抜けたコメットの一言が、この場の空気を一変させた。


「ショタ…?ねぇ、信濃さん――


――アンジュちゃんって男の子なの?」



「…え?」

「…は?」

「…へ?」


綺麗にハモって、疑問だけが取り残された。

皆、よく聞くのだ。

おねしょた、には、もう一つの言葉の意味が隠されている。

これは、私のみがたどり着いた、研究の秘儀。

皆に伝授しよう。


それは、おねしょ、である。

二つの意味を内包する言葉。

ああ、なんと甘美な響きであろう。


おねしょをしてしまい、泣いているショタを、お姉さんが

「あらあら、まぁまぁ」

とか言いながら、お世話しているのであろうか。

創作意欲が捗る。


…なんでもない。


2026.3.31作者

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