獲物を狩る怪鳥のごとく
男の爪が伸びたのを、ソワンは目にしていた。すぐに魔力を開放して衝撃波を発し、勢いを付けて男との距離を開けた。
「あぐぅ!」
「おっと、無茶をするねぇ」
着地に失敗して転倒したソワンに対し、男は空中で一回転して着地に成功した。ソワンはすぐに立ち上がったが、直後に背中に何かが刺さったような痛みを感じた。
こんな時に……無茶をしすぎたわね。
そう思いながら、ソワンは後ろを振り返った。そこには、血が付着した少し太めの木の枝があった。ソワンは着地に失敗して転倒した時、その枝によって背中を傷付けてしまったのだ。
「隙ありィ!」
男はソワンに向かって、右手の全ての指の爪を伸ばした。ソワンはすぐにヒアラを手にし、向かってくる男の爪を叩き折った。
「おいおい、酷いことするねぇ。俺は男だけど、爪の手入れはちゃーんとする方なんだぜ?」
「おしゃれのつもり? 私の血で真っ赤に染まるわよ」
「俺は血の色に近い赤色が好みなんだよ」
男はそう言って、笑みを浮かべた。
この男、名をサリクと言う。体中の爪を自由に伸ばせるスキル、<クローコントロール>と固いブーメラン、そして火の魔力を武器にして戦う男である。サリクは<クローコントロール>で右手の爪をもう一度伸ばし、ソワンに攻撃を仕掛けた。
クッ! さっき叩き折ったのに、伸ばした時に再生するのね!
元に戻ったサリクの爪を見て、ソワンはこう思った。サリクはソワンが動いて攻撃をかわすことを予測しており、その動きに合わせてブーメランを投げた。
「くっ!」
カーブしながら飛んでくるブーメランを見て、ソワンは足を止めてジャンプし、ブーメランをかわした。だが、ジャンプして攻撃をかわすことも、サリクは予測していた。
「まだまだケツが青いね嬢ちゃん。戦いと言うのは、二手三手先のことを考えながらするもんだよ!」
サリクは<クローコントロール>でジャンプしたソワンに向かって爪を伸ばし、攻撃を仕掛けた。
「ああっ!」
攻撃を受けたソワンは悲鳴を上げながら、宙に舞った。攻撃によって、服が少しだけボロボロになってしまった。地面に倒れたソワンを見て、サリクは下種な笑みを浮かべながらこう言った。
「悪いねぇ、少しだけ服をボロボロにしちまった。これならスッポンポンにした方がいいよなぁ? 俺、嬢ちゃんみたいなボインを見るのは好きなんだよ」
「変態野郎ね」
ソワンは立ち上がり、強気に言葉を返した。だがその時、後ろからサリクが投げたブーメランが命中し、左腰を切り裂いた。
「がっ……」
「ブーメランのことを忘れないでほしいなぁ。それと、俺の攻撃は終わってない」
「くっ!」
ソワンはサリクの次の攻撃を予測した。今、サリクは不自然にしゃがんでいる。右手はブーメランを手にしているが、左手は地面の上に置いてある。それを見て、ソワンはムラサメがクチアとの戦いに使った必殺技、ネコノテグランドアッパーを思い出した。
「終わりにしようぜ」
サリクがこう言った直後、ソワンは前に走った。
「何⁉」
突如走り出したソワンを見て、サリクは驚いた。その直後、ソワンがいた地面の下から、サリクの爪が伸びた。
「知ってんのよ、ああやって攻撃する戦士を」
そう言いながら、ソワンはサリクの顔に向かって右足の飛び膝蹴りを放った。
「ぶっぼぉ……」
攻撃を受けたサリクは、情けない声を出しながら後ろに吹き飛び、倒れた。ソワンは右足の膝に付着したサリクの鼻血を拭きながら、倒れたサリクを睨んだ。
「あんたみたいな野郎は徹底的にぶちのめしてあげるわ。覚悟しなさい」
「はっ。ケツの青いクソガキが何言ってやがる! 決めたぜ、テメーは捕まえて徹底的に、毎日休む暇もなく凌辱してやるぜ!」
「脳みそが腐った救いようのない下種野郎ね。あんたみたいな野郎、凍っていればいいのに」
「はっ! 人がそう簡単に凍るわけが……」
突如、サリクは足元が氷の上に立っているかのように冷たいと感じた。すぐに足元を見て、凍っていることを把握した。
「んなっ!」
驚いたサリクは魔力を開放し、ソワンにブーメランを投げた。
「くっ!」
ソワンはブーメランを回避したが、その時にこっそりと使っていた<ホワイトバース>が切れてしまった。
「今のはテメェの仕業だな! スキルか魔力か知らねーが、俺を凍らせるなんてよぉ!」
「今度こそあんたを汚い氷の彫像にしてやるわ」
と言って、ソワンはすぐに<ホワイトバース>を使った。再び急激に凍る自身の足を見て、サリクは悲鳴を発した。
「クソッたれがァァァァァァァァァァ‼」
とにかくソワンから離れた方がいいと考えたサリクは、右手を横に広げ、爪を伸ばした。そして伸ばした爪を木に深く突き刺し、爪の長さを戻した。戻す際の反動を使い、サリクはソワンから離れようとした。
「クソッ! 何だあいつは! プレイ以外にもバケモンがいるなんて俺は知らねーぞ!」
遠ざかるソワンの姿を見て、サリクは叫んだ。離れていくと同時に、足に付着した氷は急激に解けた。
さて、どうやってあいつを倒そうか。凌辱してやろうか。
そう思いながら、サリクは草むらに隠れた。
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