天才の策
ムラサメたちはいつカマンズベリーがウターンに接近しても備えられるように、常に町の中にいた。リミスとソワンは不安な気持ちがあったが、ムラサメはいつもの様子であり、プレイも態度から見てあまり緊張感を持ってなさそうに見えた。そんな二人を見て、リミスは口を開いた。
「あんたらねぇ、少しは緊張感を持ちなさいよ」
「そんなの持ってたらいざって時に体が動かなくなるぞ」
「ムラサメの言う通り。リラックスした状態が一番強いの。あんたもヒアラ使って力抜きなさいよ」
「魔力を使うのが嫌なら、俺がマッサージしてやろうか?」
そう言いながら、いやらしそうにムラサメは両手の指を動かした。それを見たソワンがクルアを手にし、ムラサメの両手に近付けた。下手なことをしたら両手が斬り落とされると察したムラサメはすぐに謝った。そんな中、ギルドの役員が走ってムラサメたちに近付いた。
「報告です! ウターンの砦、二号がカマンズベリーに襲撃され、崩壊しました!」
「なっ⁉」
報告を受けたムラサメたちは驚き、すぐにウターンのギルドに向かった。
砦が崩壊したせいで、ウターンのギルドセンター内の役員たちは、慌てながら作業をしていた。
「あいつら、砦がある方の道を選んだのね。厄介ごとを避けるために、砦がない方の道を行くって考えてたんだけど……しくじったわ」
と、プレイは真面目な表情でこう呟いた。その後、プレイは机を強く叩き、大きな音を出した。その音を聞いた役員や戦士たちは驚いてその場に止まり、ムラサメも驚いてリミスに抱き着いた。
「今回のことは私が全部悪いわ! 砦にいた戦士や役員を殺したのも私みたいなもんよ!」
この言葉を聞き、ムラサメはリミスとソワンの顔と、真面目なプレイの顔を何度も見合わせた。
「あの子、いつもはふざけているように見えるけど、自分のせいで何かが起きたら全部背負い込むタイプなの」
「あーそう」
ソワンの話を聞き、ムラサメはプレイを見直した。
「あなたたちは動かなくていいわ。私が動く。私がカマンズベリーをぶっ潰す! あいつらの狙いは私。だから、私だけが動けばいいのよ」
プレイの言葉を聞き、戦士の一人がプレイに近付いた。
「だからと言って、君みたいな少女一人に、全責任を負わせるわけにはいかない。理由はどうであれ、俺たちは仲間を殺された。その仇討ちをしたいんだ」
「きれいごとを言わないで。仇討ち? 裏ギルドのクソを殺しても死んだ人は戻ってこないわ。私は天才。こうなった時に責任を負うため、手段は考えてあるわ」
「だが……」
「大丈夫って言っているのよ」
プレイの言葉を聞き、プレイの真剣な目を見た戦士は動揺し、何も言わなくなった。ギルドセンター内が静かになった後、プレイは役員に近付いた。
「あいつらは今どこにいるのか分かる?」
「砦二号があったのはここから北北東です。距離としては、車で一時間ほどです」
「襲撃があったのはいつ?」
「十分前です」
「あいつらがここに近付くまで……早くて四十分ほど。まだ間に合うわね」
と言って、プレイは急いで外に飛び出した。ムラサメたちは互いの顔を見合わせ、プレイの後を追いかけた。
ウターンの外。プレイは<イノセントワールド>で大きなバッタを召喚し、その背に乗ってカマンズベリーの元へ向かっていた。プレイがどうやって戦おうか考えていると、後ろからムラサメたちが走って追いかけていた。
「おーい! 待てよプレイ!」
「あんた一人だけで戦わせないわ!」
「私たちも力になるって!」
ムラサメたちの言葉を聞き、プレイは周囲を見回し、大きなバッタの背から降りた。
「カマンズベリーはそれなりに強いわ。覚悟はできてる?」
プレイの問いを聞き、ムラサメは自身の右胸を軽く叩いた。
「たりめーだ! これまで何人の裏ギルドの連中と戦ったと思ってんだ?」
「そう」
ムラサメの返事を聞き、プレイは笑みを浮かべた。その後、プレイは周囲を見回しながら説明を始めた。
「あいつらが砦を襲撃した理由。それは、近道となる道に砦が偶然あったから可能性があるわ」
「そんな理由で……」
リミスは半分呆れ、半分悲しそうにこう言った。
「とにかく、あいつらが時間をかけずにウターンに向かうなら、この道を通るはず」
「この道って……こんな場所を?」
ムラサメは周囲を見てこう言った。今、ムラサメたちは木々が茂った場所にいる。車で通るのは難しく、バイクで何とか通れるレベルの道である。
「そう。あいつらはバイクを使って移動するわ。だから、こんな木まみれの場所を簡単に通ることができる」
「そうね。で、これからどうするの?」
「もう手は考えてあるのよねー」
ソワンの問いに対し、プレイは笑みを浮かべながらこう答えた。
それから数分後、カマンズベリーは近道のために木々が茂った場所を通過した。
「うわー、木がすごい!」
「気にするな! シャレのつもりじゃないぞ! このバイクなら、木の間を通り抜けることができるだろ!」
「でも、枝とか刺さったらどうするんですか?」
「そんなのが刺さるか!」
そんな話をしていると、その団員のバイクが急に止まった。
「な」
バイクに乗っていた団員は悲鳴を出すことができず、そのまま宙を舞った。
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