三人での生活
数日後、無事にムラサメは退院することができた。だが、ムラサメの顔はあまりうれしそうな表情ではなかった。理由は一つ。部屋に戻ったらソワンに何か言われるだろうと予想しているからだ。
「あいつ、絶対に私とリミスの愛の巣に入らないでーとか言いそうだな」
そう呟きながら、ムラサメは病院の出入り口に向かって歩いていた。出入り口ではリミスとソワンがムラサメの出迎えで待っていた。
「うーす。無事に退院できたよーっと」
「無事に……ねぇ」
ソワンはそう言いながら、ため息を吐いた。予想が的中したと思いつつ、ムラサメはこう言った。
「無事に退院できてわるーござんしたね」
「しばらくリミスと二人っきりの生活を楽しんでいたのに」
「へーへーそう言うと思ってたよ」
ムラサメは呆れた表情でこう言ったが、リミスがムラサメに近付いて小声で話した。
「あんな態度してるけど、少しはあんたのことを心配してたのよ」
「本気で心配してないんだな。でもま、心配してくれたんだしありがたいな」
ムラサメはソワンの方を見て、小さく微笑んだ。
部屋に戻ったムラサメは、荷物を置いて軽くストレッチをしていた。その様子を見たソワンはコーヒーを飲んでこう言った。
「ストレッチをするなら外でしなさいよ」
「ちょいと寒いんだよ。猫娘とか猫女とか言われてるけど、体感温度は人と変わらねー」
「ま、猫みたいに体毛がないからね」
そう言って、リミスは近くにある軽い素材の木刀を手にした。
「軽く運動するなら、私が摸擬戦の相手になるわよ」
「ああ頼む。しばらく横になってたから、体が鈍ってるかもしれんし」
「それじゃあ私も手伝うわ」
と言って、ソワンはクルアを鞘から抜いた。冷や汗をかきながら、ムラサメはこう聞いた。
「治療のためなんだよな? もう一度聞くけど、治療のためにクルアを使うんだよな?」
「摸擬戦でしょ? 摸擬戦と言っても、実践に近い状態でやらないと意味ないから……」
ソワンはクルアを口元に近付けてこう言った。その絵面があまりにも恐ろしいため、ムラサメは慌てた。
「そのポーズを止めろ! それじゃあまるで誰かを斬る前の恐ろしいヒロインみたいだ!」
「あっそう。でもあんたが望むなら、切り刻んでもう一度病院に送ってもいいわよ。そうすれば、私はリミスと再び……」
「止めなさい」
リミスは手にした木刀で、軽くソワンの頭を叩いた。
その日の夜、ムラサメたちは狭い浴槽の中にいた。
「やっぱり三人入ると、狭いな」
「二人だけでも狭かったしね」
ムラサメとリミスはそう言っているが、ソワンは体を震わせていた。
「そんなに私のリミスに密着しないでよ、怒りでお湯が沸騰しそう」
「しょうがねーだろ。狭いんだからさ」
「だからと言って……ひゃん!」
突如、ソワンはかわいらしい声を出した。その理由を察したリミスは、ムラサメの頬をつねった。
「今、ソワンの変なとこ触ったでしょ」
「ああ。そうでもしないと、ソワンの暴走を止められないだろ?」
すました顔でムラサメはそう言ったが、その直後にムラサメは驚いた声を出した。ソワンは両手でムラサメの胸を強く握りしめたからだ。
「お返しよ、エロ猫」
「お返しっておま! ちょ、そんなに強く握るなよ! あぁん! やべ、エロい声出しちまった!」
「女だからそういう声を出すに決まってるでしょうが! リミス、あなたもこの猫にお風呂でいろいろされたんでしょ?」
「ええ」
リミスは左側からムラサメを強く抱きしめ、動きを封じた。それに気付いたムラサメは驚いたが、リミスはムラサメが何か行動を起こす前にムラサメにちょっとエッチな攻撃を始めた。
「うひゃぁ! らめぇ! そんなとこ触るなよ! やべぇ、力が抜ける!」
「今よソワン。やり返す準備はできたわ」
「よーし。観念しなさいエロ猫ォォォォォ‼」
「え? ちょっと待って、マジでやるつもり? 待ってよ。話せばわかるって! 待って。止まって待って! 止めて止めて止めて!」
その後、風呂場からムラサメの悲鳴が轟いた。
ムラサメたちが風呂場でニャンニャンイチャイチャしているころ、机の上に置いてあるリミスの携帯が鳴り響いた。そこには、こんなメッセージが書かれていた。
やっほーリミス。久しぶりぶりー。
リミスの活躍新聞で見てるよー。デーモンブレス討伐の話も聞いた、ソワンもそっちにいるんだね。まぁ、いつかソワンがあんたを追っかけて同じギルドに所属するってことは予想してたけど。
で、この天才の私もそっちのギルドに移籍することになったから。理由は一つ。あんたと一緒に行動しているムラサメって猫女が気になったから。ロマクってギルドの戦士……いや、元ギルドの戦士の裏切りの事件にもムラサメって猫女が解決に関わったと天才の私は考えているわ。で、今回のデーモンブレスの件もムラサメがいた。難しい性格のリミス、そしてヤンデレのソワンに気に入られるってことは、何か特別ってことよね? それが気になったから、無理矢理そっちのギルドに入ることにしたの。
そっちに到着するのは早くて明日の昼ぐらい。ギルドには連絡したから、天才の私を出迎えるためにお菓子とか用意しておいてねー。
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