悪党の墓標は適当でいい
ムラサメの新たな必殺技、ネコノテグランドアッパーがクチアに命中した。血まみれになって床の上に落ちたクチアは、咳き込むように血を吐いた。
「が……こ……この俺が……」
苦しむようにこう言った後、クチアは再び血を吐いた。
「ざまーねーな。風で切り刻まれて、飛んでもねー威力の拳がお前の腹に命中したんだ。臓器の一つか二つ潰れたに決まってる」
笑いながらムラサメはこう言ったが、ソワンが呆れてため息を吐いた。
「動かないで。傷が開くわよ」
ソワンの言葉を聞き、ムラサメはそうだなと呟いた。リミスはムラサメの元に戻りつつ、倒れているクチアを見て、戦いは終わったと思った。
解放されたバルバは、うつろな目で戦いの様子を見ていた。
「終わった……のね」
クアロは小さく呟き、涙を流した。だが、バルバは何も言わずに立ち上がった。クアロはバルバの名を呟いてバルバを見た。バルバの右手には、ナイフのように鋭利な瓦礫の破片が握られていた。
あの野郎……許さない。絶対に絶対に許せない!
バルバは心の中で叫んだ。同期であり、恋人であったネハを殺された。それと同時に、汚い男たちにその身を好き勝手やりたい放題に弄ばれたのだ。数々の愚行を受け、バルバの怒りの炎は爆発したかのように燃えていた。
怒りを燃やしながらバルバは倒れているクチアに近付き、見下すように睨んだ。
「この野郎! 死にやがれェェェェェェェェェェ‼」
バルバの叫びを聞き、ムラサメはバルバを止めようとした。だが、無理矢理動いたせいで強い痛みを感じ、動くことができなかった。
「や……やべぇ!」
思わずムラサメはこう叫んだ。その時、リミスがバルバを止めた。バルバはリミスを見て驚いたが、その表情はすぐに怒りに変わった。
「何するのよ⁉ 止めないで、こいつを殺させてよ!」
「嫌よ。こんな奴を殺してあなたが外道になったら、仲間が喜ぶ?」
リミスの言葉を聞き、バルバは一瞬戸惑った。同じように言葉を聞いたムラサメは、ロマクを倒した時のことを思い出していた。
「リミス、成長していやがる」
リミスの行動を見たムラサメは、小さく呟いて微笑んだ。だが、バルバの怒りは止まらなかった。
「そんなの関係ないわよ! こいつが……こいつがネハとガイッサを殺したのよ‼ こんな奴を生かしても意味がないわ! たとえ捕まえて豚箱にぶち込んでも、時が経てばこいつらは釈放される! そんなのおかしいじゃないの‼」
「殺されたネハさんとガイッサさんが、あなたが外道になって嬉しいと思わないわ。それに、あなたが手を下さなくても、きっとこいつは自業自得な最期を迎えることになるわ」
「最期⁉ いつこいつが死ぬって言うの? 今日? 明日? 一か月後? 今すぐ殺さないと気が済まないのよ‼」
「そんなの知らないわ。だけどこれだけは言える。外道に落ちた人間のその後の人生は、まともじゃない。まともじゃない死に方をするって」
リミスはバルバの右腕を握っている手を強くした。リミスが本気で自分を止める。クチアを殺すことを本気で止めていることを察したバルバは力を失った。そしてその場に崩れ落ち、大きな声で泣き始めた。その時、クチアの笑い声が聞こえた。
「いいのか? 俺を……生かすのか? 俺は汚い豚箱から脱獄するぞ。スキルや魔力が使えなかろうと、どんな方法を使って脱獄するぞ」
「その時はまた私とムラサメがあんたを捕まえる。もう一度半殺しにして、それ以上に追い打ちを仕掛けて倒して豚箱にぶち込む。ね、ムラサメ?」
リミスの視線を感じたムラサメは、小さく笑って答えた。
「そうだ。俺たちはお前を倒した。つーことは、お前は格下ってことだ」
「格下扱いか……ふざけるなよ……脱獄した後、必ずお前を殺す」
クチアは上半身を少しだけ起こし、ムラサメにこう言った。その直後、上から何かが崩れる音がした。
「何だ?」
ムラサメたちが天井を見上げた瞬間、大きな天井の飾りの一部がクチアに向かって落下した。一瞬のことだった。落下速度も速かった。突然のことで何もできなかったムラサメたちは、押し潰されたクチアを見ることしかできなかった。
「リミスの言う通り、まともじゃない死に方をしたわね」
ソワンは落下した天井の飾りの下から流れる血を見ながら、小さくこう言った。
クチアの死により、デーモンブレスは壊滅した。ムラサメたちは無事にギルドに戻り、保護したバルバとクアロをウターンのギルドの役員に見せた。
「酷いことをされましたね……しばらくは入院ですね。あなたたちのギルドには連絡しておきます。今は傷付いた体と心を、ゆっくりと休ませてください」
ギルドの役員はそう言って、バルバとクアロを病院へ送った。その様子を見ていたリミスとソワンは話を始めた。
「助けたと言えば助けたけど……」
「結果がね……あまりいいとは言えないわ」
ソワンの言葉を聞き、リミスは間を置いてこう言った。
「ムラサメも転生前、いろんなことをしていたの。同じような思いも、何度もしたって言ってた」
「あいつもあいつで、いろいろと経験したのね」
「うん……詳しくはムラサメに聞いて。いろいろと教えてくれるはずだから」
と、リミスはソワンにこう言った。
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