イビルアイキャッツの初陣
「分かりました。ではテストをしてもらいますね」
ギルドカウンターの役員にこう言われたムラサメは、目を丸くして驚いていた。横で話を聞いていたリミスも驚き、役員に近付いた。
「ちょっと、話が簡単ではありませんか?」
「ムラサメさんの情報は私たち役員にも伝わっています。この人、それなりにギルドの仕事に役に立つスキルを持っています。それに、前世では体を張った仕事をしていました。ムラサメさんの情報を得た上司が、ムラサメさんは即戦力になると言ってたんです。リミスさんの時と同じですよ」
話を聞いたリミスはため息を吐いた。その後、ムラサメは役員に連れられ、ギルドセンター内にある大きな体育館に案内された。移動中、ムラサメは後ろにいるリミスの方を見て、笑みを浮かべていた。
「なーにー? あれこれ言ってる割に、俺のことが気になるのかー?」
「多少はね」
リミスはそっけない感じで答えた。しばらくして、ムラサメたちは体育館に到着した。
「では、試験官をお呼びしますので、少々お待ちください。その間、ストレッチをお願いします」
「オッケー」
話後、ムラサメは軽くストレッチを行った。しばらくして役員は電話をしまい、笑みを浮かべた。その笑みが気になったリミスは、役員に近付いた。
「で、今回は誰が試験官ですか?」
「ゴリマーチョさんです」
「ええ⁉ あのマッチョが相手なの⁉」
リミスは驚きのあまり大声を出した。ゴリマーチョ。ウターンの町のギルドセンターの強さランキングでは常に上位にいる存在である。リミスもゴリマーチョの強さを把握しており、どうしてそんな奴がムラサメの相手なのか気になった。
「どうしてゴリマーチョが相手ですか⁉」
「上司からの推薦です。上司曰く、ムラサメさんのイビルアイは使い方によって、最強かもしれないらしいです。勝負に勝てなくても、いい戦いになる可能性があるとも言っていました」
役員の言葉を聞き、リミスは困惑の声を漏らした。
ムラサメはストレッチをしながら、ゴリマーチョの到着を待った。リミスの表情を見て、それなりの強敵が相手なのだと察した。しばらくして、長身で筋肉質の男性が体育館に現れた。
「ふぅー。で、どこのどいつがギルドの戦士になりたいって言ってんだ?」
「俺だ」
ムラサメは笑みを浮かべて手を上げた。リミスは大声を上げながら、慌ててムラサメに近付いた。
「ちょっと、何余裕な顔をしているのよ? ゴリマーチョはかなりの強敵よ!」
「あの筋肉ダルマ、ゴリマーチョって名前なのか。あいつを倒せば、俺はギルドの戦士ってわけか?」
「そうだけど、あいつは強いのよ!」
「俺も喧嘩慣れしってからどうにかなる。大丈夫だよ」
「そうだぞリミス。今から行うのは一対一の戦いだ。下がってくれ」
ゴリマーチョに言われ、リミスはため息を吐きながら下がった。ゴリマーチョは右手を前に出し、挑発をするような仕草をした。それを見たムラサメはきょとんとした表情になった。
「ハンデをやる。最初の一発、お前が決めていいぞ」
「そーかい。それじゃ、遠慮なくやらしてもらうぜー」
ムラサメは素早くゴリマーチョに接近し、右手でアッパーを放った。ムラサメのアッパーはゴリマーチョのあごに命中したのだが、攻撃を受けたゴリマーチョは笑みを浮かべた。
「その程度か?」
「あ、こりゃーまずい」
危機を察したムラサメは素早く後ろに下がり、ゴリマーチョの反撃をかわした。
やべー。そういやー俺、今は女の子……つーか猫女になってたんだっけ。忘れてたなー。
ムラサメは自身が女体化、及び半分猫になっていることを覆いだし、前から迫るゴリマーチョを見た。
「でかいくせに、動きははえーな」
そう言いながら、ムラサメはゴリマーチョから離れた。
「はん! 威勢がいいのは口だけか? 猫女!」
「悪いが、こっちは転生したてでどうやって戦えばいいか分からねーんだよ」
「そうかそうか。かわいそうだから、もう一つハンデをやる。俺はスキルを使わない! お前みたいな雑魚、スキルを使わずとも簡単に倒せるからなぁ!」
「そうかいそうかい。その言葉、忘れんなよ」
ムラサメはそう言うと、その場に立ち止まった。ゴリマーチョはムラサメが観念して立ち止まったと思い、笑みを浮かべた。
「逃げるのを諦めたか。なら、早々にこの戦いを終わらせてやる!」
「これでも見ろ!」
と言って、ムラサメは自分の手で服をめくり上げた。それを見たゴリマーチョ、そしてリミスと役員は驚いて口を開けた。
「ほーら、年頃の美少女の生乳だぞー! 見れて嬉しいだろコノヤロー!」
「で……でかい」
ゴリマーチョは女体化したムラサメの乳を見て、思わず見とれてしまった。その隙にムラサメは魔力を右手に込め、ゴリマーチョに接近した。
「まだ魔力の使い方が分からねーから、加減できねー! だけど、女の子の生乳を見れたんだから、喜べよ!」
ムラサメは叫んだ後、再びゴリマーチョのあごにアッパーを決めた。攻撃を受けたゴリマーチョは悲鳴を上げながら宙を舞い、マットの上に倒れた。
「な……なんて戦い方なの?」
ムラサメのお色気作戦を目の当たりにしたリミスは、呆れて言葉を漏らした。
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