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怒りの斬撃


 ポバッツンは見た目もそうだが、性格も性癖も異常であった。そんな奴の言動が、リミスの怒りの逆鱗に触れた。


「ほう。それだけの魔力を持っているとは、小娘にしては珍しい」


 近付いてくるリミスを見ながら、ポバッツンは股間を強調するポーズをとった。


「キモ。挑発のつもり?」


「何を思うかは君が勝手にしてくれたまえ。私は己の趣味で、このポーズを取っているのだ」


「あっそ」


 と言って、リミスは目で追えない速度でヒアラを構え、振り下ろした。ポバッツンは一瞬だけ感じ取った強い殺意を感じ取り、すぐに後ろに下がった。


「ほ……ほぉ……」


 後ろに下がったポバッツンは、自身にダメージがないことを察して安堵の息を吐いた。だが、それと同時に体中に冷や汗が流れていることを察した。


「私が恐ろしいと思ったのは、初めてです」


「あっそ」


 リミスは再びそっけない返事を返し、ヒアラを横に振るった。二度目の斬撃を見て、ポバッツンは笑みを浮かべた。


「力を込めて剣を振るだけでは、私を斬ることはできませんよ!」


「あっそ」


 リミスがこう答えた直後、ヒアラの刃の周りに炎が発した。


「なっ!」


 驚いたポバッツンは急いでジャンプしようとしたのだが、火の勢いはかなり激しく、飛び上がったポバッツンに火がかかった。そしてその直後、火は速い速度でポバッツンの全身を取り囲んだ。


「ぐわァァァァァァァァァァ‼」


 火だるまになったポバッツンは床の上に倒れ、激しく転がった。それを見ながら、リミスはヒアラを構えた。


「そんなことをしても無駄よ。そんなんで私の火は消えない。このまま生焼けになりなさい」


「生焼けですか……それは美しくないですねぇ‼」


 ポバッツンは魔力を開放し、体に付着した火をかき消した。


「どうです? 私の魔力の方が上だったみたいですねぇ! 今の攻撃のおかげで、大事な一張羅が一部燃えてしまいましたよ。これ、どうしてくれるんですか?」


 と言って、ポバッツンは高くジャンプし、リミスにボディプレスを仕掛けた。リミスはポバッツンを睨み、小さく呟いた。


「汚いもんを見せるなっての」


 そう呟くと、リミスは魔力と力を込めてヒアラを振り下ろした。ヒアラの刃はポバッツンの腹に命中しそうになったが、その直後にポバッツンは<スペシャルボディ>を発動し、腹全体を固くした。


「はっはっは! <スペシャルボディ>があれば、どんなに強力な一撃でも、防ぐことができるんですよ!」


「一瞬だけね」


 高笑いするポバッツンに向けて、リミスは小さくこう言った。リミスはヒアラの刃を<スペシャルボディ>で固くしたポバッツンの腹に押し当て続けた。


「おい……止めろ。このままだと……」


 下がらないリミスを見て、ポバッツンは冷や汗をかいた。その直後、<スペシャルボディ>の効果は消え、ポバッツンの腹は元の柔らかさに戻った。


「それがあんたのスキルの弱点よ」


 <スペシャルボディ>の効果が消えたことを確信したリミスは、素早くヒアラを振り下ろした。ヒアラの刃は、ポバッツンの腹に深い傷を作った。


「がァァァァァァァァァァ‼」


 血を流しながら宙を舞うポバッツンを見て、リミスはヒアラの刃に付着した血を火の魔力で蒸発させた。しばらくして、宙に舞っていたポバッツンの体は大きな音を立てながら床の上に落ちた。


「体を固くさせるのはせいぜい一秒か二秒。その時間待てば、体は元の柔らかさになる。それまで、武器を体に押し当てればいいだけ。今思えば、簡単な攻略法だわ」


 リミスはそう言って倒れたポバッツンに近付き、見下すように睨んだ。その時、ロマクを殴っていた時、リミスを止めてくれたムラサメの言葉を思い出した。


「ふ……私を……殺すつもりか?」


 リミスの視線に気付いたポバッツンはこう言ったが、リミスはため息を吐いて言葉を返した。


「あんたみたいな変態を殺して、外道の道に行きたくないもの。悲しむ人がいるからね」


 そう答え、リミスは倒れたポバッツンを無視して歩き始めた。




 ムラサメとソワンは歩き続けている中、強い魔力を感じ、女性の笑い声を耳にした。


「誰かいるな」


「ええ。でも、この笑い声って?」


「分からん。とりあえず、油断しないことに変わりはない。行くぞ」


 ムラサメはすぐに動けるように心構え、ソワンはクルアを手にして走った。ムラサメはモニターの前に座るクチアを見て、左指を刺した。


「おい、お前は誰だ?」


「君たちが探していた男だよ。デーモンブレスボス、クチアだ」


 クチアはそう言って立ち上がり、奥の部屋で吊るしてある全裸のバルバとクアロをムラサメとソワンに見せた。その姿を見たムラサメは驚き、ソワンはあまりの残酷さに耐えられず、視線をずらした。


「どうだ? これが俺には向かった愚かな奴のなれの果てだ。どうだ? 美しいだろう?」


「悪いが、俺はおめーみたいな趣味は持ってねーんでな」


「ちゃんと見ることをおススメする。数分後、君たちがそうなる運命だからな!」


 と言って、クチアは魔力を開放した。戦いが始まると予感したムラサメは両頬を軽く叩き、気合を入れた。


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